Response to Clemons' Slander

The Sankei Shimbun September 16th Edition 



事実無根の中傷こそ威嚇行為
【ワシントン=古森義久】産経新聞と記者(古森)が日本の公的人物を威嚇し、その言論を弾圧していると非難する投稿が米紙ワシントン・ポスト8月27日付に掲載された。米国民主党系活動家が書いた同投稿文は記者がテロを意識的に扇動しているとも断じた。この事実無根の中傷こそ自由な言論への威嚇として反論したい。

民主党系の政治活動にかかわり、日米関係についても時折、論評するワシントン在の米国人スティーブ・クレモンス氏は「日本の思想警察の台頭」と題した同文で記者が8月12日付本紙国際面に書いたコラム「緯度経度」をまず「自由な言論を抑圧し、市民社会に後退を迫る右翼による公的人物に対する威嚇キャンペーンの最新の襲撃」だと非難した。

記者のコラムは外務省管轄下の公的機関の日本国際問題研究所(JIIA)が外国向けに日本の外交や安保の政策の根本を否定するような極端な内容の英語論文を連続して発信していることを伝え、その理由を問うだけだった。

だがクレモンス氏は「古森はJIIAの佐藤行雄理事長に謝罪を要求した」と書き、佐藤氏が8月18日付の産経新聞で同英文論文は「所内の審査が行き届かないままに発信が行われた」「公益法人としての当研究所の立場にふさわしくない表現や誤解を招く用語があった」と認め、そのサイト掲載を停止したことをとらえて、「(産経による)言論弾圧」と糾弾した。

しかし現実には記者は同コラムでは穏健な表現に終始し、佐藤氏への謝罪も掲載停止も一切、求めておらず、クレモンス氏が原文をきちんと読んでもいないことが明白となった。またJIIAが内部の手続き不備を主理由に自組織の一定発信を自主的に停止したことが言論弾圧ではないことも明白である。

しかし同投稿文はそこから一気に「超保守の」産経新聞や記者が「1930年代ふうの軍国主義、天皇崇拝、そして『思想統制』の復活を切望する極右活動家の暴力的なグループ」の一部だとして、「そのグループが最近は主流となり、自分たちに同意しない人たちを攻撃し始めた」と述べている。このクレモンス氏の記述は捏造(ねつぞう)としか評しえない。

産経も記者も「1930年代ふうの軍国主義などの復活を切望した」ことは皆無であり、民主主義や言論の自由への一貫した支持表明により、軍国主義には強く反対してきた。

しかしクレモンス氏は「この種の極右の一員が先週、自民党元幹事長の加藤紘一氏の実家を焼いた」と記し、あたかも本紙や記者がその放火容疑者とつながっているかのように中傷した。ちなみに本紙はこの放火を事件直後の社説で厳しく糾弾している。クレモンス氏はさらに富士ゼロックスの小林陽太郎氏や元外務省の田中均氏に対するテロまがいの威嚇行為を列記して本紙などとの関連をにおわせ、さらにこうした流れは戦前の犬飼毅首相暗殺と同様の傾向だと断じている。

そのうえでクレモンス氏は記者について「産経の古森は彼の言論が最近のテロ実行犯らを頻繁にあおることにも、彼らの(テロ)行動が彼の言論に恐怖を高めるパワーを与えていることにも無意識ではない」と書いた。 つまり記者がテロ行為を意識してあおっているという不当な断定である。同氏は記者へのこの威圧的な中傷になんの根拠も示していない。

ワシントン・ポストは日本の主要全国紙である産経新聞とそのワシントン駐在記者に対しこれほど重大かつ不当な誹謗(ひぼう)の文章を掲載するにあたって、事前に当事者に対して事実関係を調べる作業をしていない。掲載後すぐに記者は反論を書き、ポストあてに送ったが、2週間以上が過ぎた14日現在、掲載されないため、本紙でまず反論することとした。


Wポスト紙への抗議の投書 デマ主張で個人攻撃

【ワシントン=古森義久】産経新聞と記者(古森)を不当にテロリストと関連づけて中傷する投稿文をワシントン・ポストが8月27日の日曜版に載せたことに対し記者は同紙に抗議の投書(英文)を送った。だがきわめて不明朗な形のまま不掲載となっている。

記者は800語以上の長さの同投稿文に対し約450語の反論と抗議の投書を8月30日に送った。すぐにポスト側から「あなたの書簡(の掲載)に関心があるが、スペースの制約のために250語ほどまで短縮してほしい」という要請があった。翌日、短縮した書簡を送ると、その翌9月1日、ポスト側から「このままだとたぶん掲載となる」という電話での通知があった。

しかし、なお掲載されず、8日には掲載の意図があるのかどうかを問うメールを送ったが、回答はない。このためポストに送った抗議の投書の内容を本紙で発表することとした。


ワシントン・ポスト編集長殿
スティーブ・クレモンス氏の8月27日付貴紙への「日本の思想警察の台頭」と題する投稿文は単なる悪質なたくらみからの一線を越え、私の職業的誠実性へのきわめて不公正な個人攻撃のデマゴギーとなっています。同氏は完全に誤りの記述により産経新聞と私が「1930年代の軍国主義への復活を切望する極右活動家の暴力的なグループ」の一部だと言明しています。

クレモンス氏はさらに「古森義久は自分の言論が最近のテロ実行犯を頻繁にあおることや、彼らの(テロ)行動が恐怖を高めるパワーを彼の言論に与え、テロ実行犯らが議論を沈黙させることを支援していることにも、無意識ではない」と述べています。

同氏はこの記述で新聞記者であり、評論者である私が日本国内でのテロ行為を意図的に鼓舞していると非難するわけです。同氏は小泉首相の政敵の加藤紘一氏の実家への放火など、私も私の新聞もまったく関係のない事件を列記しています。ぜひ記録として強調したいのは、本紙はこの加藤氏にかかわる放火事件の直後、この行動を厳しく糾弾する社説を載せました。加藤氏自身がその社説への感謝を産経側に伝えてきました。

過去においても産経新聞は政治問題に対応する手段としての暴力はいかなるものも非難してきました。もし日本に1930年代ふうの軍国主義への復活を切望する活動家たちが実在するならば、産経も私もすぐにそれを糾弾し、反対します。

クレモンス氏は産経8月12日付に掲載された私のコラム記事(緯度経度 日本発「公的な反日論文」)の内容を間違って特徴づけています。この記事は日本国民の税金を使う政府資金運営の研究所が海外へ日本の国民、政府、政策、指導者の実態をゆがめた、客観的ではない批判を英語で発信していることを報じました。私のその記事は冷静で客観的な基調を保ち、誰からの謝罪をも要求していません。

現代の日本は民主主義かつ平和主義的であり、法の統治を守っています。米国の有力な同盟相手でもあります。産経新聞は全国規模の部数約220万部の日本の主流の新聞の一つです。クレモンス氏の主張とは対照的に、「超保守」という点は私の言論でも新聞自体でも皆無です。

たとえば、本紙は米国のグローバルなテロとの戦いへの日本の協力を各紙の間でも先頭に立って、社説などで支持しました。私自身は過去30年以上もの記者活動で政府の政策は頻繁に批判してきましたが、日本の軍国主義復活などただの一度も唱えたことはありません。

クレモンス氏が私の意見が嫌いならば、批判は自由です。しかし同氏は私にも自分の意見を表明する権利があることを忘れるべきではありません。その意見表明は自由な言論への攻撃ではないのです。

私はこれまで開かれた政府、自由な言論、複数政党制の民主主義などをいかなる形にせよ侵食する動きは一貫して批判してきました。私はまたクレモンス氏と意見を共有する人たちをも含めて、いかなる人たちに対してもその政治的見解を理由に暴力をふるうことをも激しく糾弾します。クレモンス氏にはそのことを否定する根拠はありません。
産経新聞ワシントン駐在編集特別委員 古森義久

 

(9月16日付産経新聞朝刊)