このところアメリカの左派の学者や記者の間では「安倍バッシング」が盛んです。
ブッシュ政権やその周辺の多数派が安倍新政権の登場には大歓迎の姿勢をみせているのとは対照的です。
そんな安倍政権叩きの記事の一つにロスアンジェルス・タイムズの9月25日付けに載った寄稿論文があります。筆者はいまカリフォルニア大学バークレー校で研究員をしているマイケル・ジーレンジガー氏です。同氏は最近まで米紙サンノゼ・マーキュリーの特派員として東京に駐在していました。
そのジーレンジガー氏の主張に以下のような記述があるのです。
「日本はその将来をアメリカから切り離し、アジアの経済パートナー、とくに中国とのより統合された関係を築くべきだ」
ただし上記の部分は結論です。
主体は安倍叩き、あるいは安倍氏を支持する日本国民への悪口雑言としか表現しようのない一方的な断罪です。
いま日本で起きていて、安倍氏を支えているのは「virulent
nationalism」だというのです。このvirulentというのは「悪性の」「猛毒を持つ」「憎悪に満ちた」というような意味です。
つまり安倍首相は「憎悪に満ちた民族主義を広げる危険な人物」だというのです。
ジーレンジガー氏はその安倍政権を歓迎し、支持するブッシュ政権をも激しく非難します。アメリカの典型的な過激派リベラルの立場だといえましょう。こういう考えの人たちは日本の民主主義をも信じないのです。安倍首相が憲法改正の必要を説くと、もうすぐに「日本はまた戦前の軍国主義に復帰しようとしている」と断じるのです。なんだか1960年代の日本社会党みたいですね。
でもジーレンジガー氏は正直だと思います。数々の非難に対し、「では日本はどうすればよいのですか」と問うと、明快な答えが返ってこないのがアメリカ左派(とくに日本専門家)の特徴の一つですが、同氏ははっきり答えています。その答えが
冒頭で紹介した「日本は米国と縁を切る」という提言なのです。
これからこの種の日本叩きがアメリカの一部から次々に発射されるでしょう。
コメント
コメント一覧 (23)
私が不思議でならないのはアメリカの対中政策です。今回も元切り上げの制裁を見送ったとか。中国は連日対ドル最高値更新と、悲鳴のような慈悲を訴えています。台湾問題然り。
アメリカでの華僑のロビー活動は、かくも強力なのでしょうか?
そして、その政策を困難にもかかわらず遂行した我が国に対米戦を挑発し、原爆投下や国際法を無視させてまでスターリンのソ連の¥に参戦を促し、勝利をもぎ取ったのか。
あまつさえ、トルーマンの民主党は東京裁判という無法な軍事裁判で東条他をリンチに掛けた。
アメリカ民主党の政策の重大な錯誤により、アメリカの盟友蒋介石を台湾へ島流しにした。
私はもちろん、上記を正しいと考えていってるのではない。しかし、マイケル何とかの主張を読めばそういう結論になるではないか。
中国の方が、人口が多くて、貿易に期待がもてると言うことなのか。日本は工業製品のライバルということなのか。
アメリカという国をどこまで信用できるのか。
岡崎久彦流にとことんアングロサクソンにくっついていくべきか。私は結局は、やはりそうせざるを得ないとは思いますが。民主党政権になったときのつきあい方をよく研究しておいてほしいですね。
日本の防衛予算がGDP1%以下であり、装備の更新もままならず、パイロットの年間飛行時間も下がりぎみ。戦闘機は爆撃機能をはずしてあり、兵力だけなら、韓国はおろか台湾にすら見劣りする。戦後ただの一発の銃弾すら海外で撃っていない。
過激な「ネット右翼」も実生活では「萌え~」、せいぜい「月にかわってお仕置きよ」。
食料もエネルギーも自給できず、何千と島があって海岸線延長は膨大、そこに「撃って下さい」とばかり原発が並ぶ。
「国内の不満を逸らす?」「90年代の不況時ですら、欧州水準なら大変な好景気でしたよ。米国に比べれば貧富の差なんて無きに等しい。上場企業の社長が30坪のコンドに住む国だし、もともと貧を楽しむ伝統が腐るほどあって月10万円で暮らせるのが理想だったり」、、、戦争なんてできっこないしする理由もない。
そもそも毎週のように国旗を燃やしたり首相の藁人形にナイフを突き立てたりしてる連中を公然と指示する政府やマスコミがあるような国々は批難されず、デモ一つ起こさない国が批難されるってバランスがとれているのか?
例えばマイケル・グリーン氏の公聴会発言などは、さすがにこういった基本を押さえた的確なものでしたが、批判者達はこれらの起訴事実を分かり切っていっているのでしょうか。それとも無知なんでしょうか。
中韓の論調の背後には、日本に対する恐怖が脈々と感じられます。労使ですら団結できない彼の国々にとって、いざ「切れる」と国をあげて団結して、香港でもシンガポールでも数日で陥落させる日本人が怖いのでしょう。ひょっとして米国も?と思うのですが、まさか。
それとも、ロスは韓国移民がやたらと多いので、その論調に迎合した?考えづらいけれども。
とりとめなくなってすみません。
しかし、彼らの動機なり真の目的なりがわからないと、批判に批判で応酬しても、ただの騒音合戦にしかならないと思うので。理解のきっかけでもあればと思い、疑問を書き並べました。妄言多謝。
然し、シナという未知との遭遇に対して、日本を実験台として、
日本を危険な方向へ突き落とそうとしているのはアメリカのリベラル左派
ではないだろうか?
それで、アメリカは高みの見物か?
金は日本が出せ、危険は日本で、全て負えはないでしょうが、リベラルさんよ。
この種の日本軽視、中国重視とも響く奇矯な意見を述べるのはごく少数の研究者だけです。背後に大きな組織とか支援勢力がいるというわけではないと思います。
とくにこの人物は単に過激な心情左翼なだけ、という感じです。
このアメリカ人は民主党の基準でも、あまりに極端な主張をしています。
そもそも日本の将来のあり方をアメリカ人のわけのわからない人間から講釈される筋合いはないですよね。いくら同盟国の人間だからといって。
?????
そうなって一番困るのはアメリカでは?
何を考えているのでしょうか。
この論者も、それを掲載した新聞も。
いざ民主党政権となっても、いまの東アジアの状況やアメリカ側一般の中国観、さらには米韓同盟の空洞化(まだではありますが)などを考えると、日本との同盟に頼らざるを得ないという部分の方が大きいとも思われます。
しかしいまの政権の日本重視、日本依存とは違い、波乱はあるでしょうね。
いつも米国事情の発信をありがとうございます。
米国もいろいろあるのだなと思います。お恥ずかしいことがなら、古いタイプの人間としては、米国に左翼がいるということすら認識していませんでした。
最近は、日本のマスコミが米国のこの手のニュースソースを引き合いに出して政権攻撃をしますが、ネットで裏事情がいろいろと分かるので割と冷静に見れます。
ネットもつくづく有意義なもんだと認識できています。
これからもいろいろと米国の表裏の事情の発信をお願いします。
ニューヨークタイムズのOp-edをウェブで読みました。
http://www.nytimes.com/2006/09/30/opinion/30komori.html
これからも理不尽な日本叩きに対抗して是非がんばってください!!
楽しみに読んでおります。
結局のところ、彼等は「深層は『欧米』で組みたい」という願望から日本を切り離したいのだと考えています。
日本のリベラルにしても反米の心理は結局大東亜共栄圏願望の裏返しですから。
リベラルというのは、それが全てではありませんが、
そう言う傾向を持つものです。
日本とアメリカが同盟を組んでいる限り、アメリカは亜細亜に対しては欧州を左程必要とはしません。(日本も同じ)
日本が嫌い、中国が好きというより、其処が両国のリベラルには耐えがたいのです。
さしずめ「偏狭なる大キリスト主義」といったところでしょうか?
彼等は現状の繁栄の維持よりも、地域内の団結の方が大事なんでしょう。
日米同盟解約で両国が困れば、否応なしにそちらに走らざるを得ませんから。
ただ、もし民主党が政権をとり、日本叩きが再燃しても、
私は日本が中国や半島と手を組むのはお断りです。
絶対に不可能ですから。
その場合、ほとぼりが冷めるまで疎外覚悟で行くほうが良いと考えています。
まぁよくぞこぞってたたいてくれますね~という
感じです。
30日付産経「緯度経度」では山口さんが、フランス
の安倍政権についてのメディアの切り口を紹介されてました。判で押したように「ナショナリスト」「タカ派」「超保守派」「戦犯の孫」(なんだ、これはと思わずふきだしました)・・だそうです。
例によって事実誤認の記事もあり山口氏が「訂正」を求めた件もあったとのこと。
すごく気になるのは、こうしたとんでも記事やTV番組が報道されたときに、在日大使館等が抗議するのは当然として、現地で日本を擁護する日本研究者などの声があまりみられないということ。その意味で、中国研究者が日本研究者よりはるかに多いというのは中国バッシングが起きたとき、その効力を多方面で発揮するのではと思うのです。
若年層からもっと日本を知ってもらい、知日派、親日派を育てる政策が必要ではと強く感じます。
それにしても、「美しい国」が「軍国主義の復活」を
目指しているというフランスの報道って???
日本では常日頃、あんなにフランスを「美しい国」と紹介してるのに・・ここも日本の片思いですか。
(TBお願いします)
議論がなされないというのが一番の問題なのではないでしょうか?
議論の封殺を狙うかのように「そんなことしたら世界から孤立して北朝鮮や戦前の日本と同じになってしまう」という人もいるようですが、核議論が起きたら世界から孤立するとはとても思えません。
念仏のように核廃絶を言っても何の役にも立たないのは判りきったことです。
日本で核議論が起きたら世界はいっせいに議論の動向や日本を取り巻く国際環境に注視することになるでしょう。
その時、ジーレンジガー氏は今回と同じ発言をするでしょうか?
いろんな反応が出るとは思いますが、特にアメリカの反応の出方は日本を真の同盟国と見ているか単に東アジアの前線基地と思っているかのリトマス試験紙になると思います。
また、核議論は外交を行う上での武器になるのではと思います。
小森様。
私は変なんでしょうね。
アメリカも保守、リベラルなど多様ですが、欧州が単に宗教や人種が同じの相手だから、日本より優先して緊密なきずなを築く、というふうな考えをする人は国政レベルでは、超少数派だといえます。
アメリカの保守派のフランス嫌いは広範です。中国への警戒感も強いです。中国に対抗するためにも日本との同盟を強化するという考えはブッシュ政権の内部にも強くあります。
日本との同盟がアメリカの国益にプラスになるという状態はまだまだ続くでしょう。その状態を日本の利益に合わせて、うまく活用していくことが肝心のように思われます。
日本に軍国主義の兆しなどあるはずがない、という点、まったくの同感です。
いまの日本叩きの原因がなんなのか、それがわかったうえで、反論をすべきだという点も同意です。
ただし「真の原因」の認定は難しいですね。
中国の影がちらつくことも事実です。
ここで紹介した日米同盟破棄論は実際にはいまのアメリカでは超極端な少数論です。
まじめに物事を考える人たちの間からは、こんな極論は出てきません。
こうした主張の極端さ、乱暴さをわかっていただくために、その内容をあえてお知らせしただけです。
日本に対して中国と統合を、なんて、たとえ経済面だけの話をしているにせよ、現実から遊離してますよね。
アメリカは日本にとっての同盟相手、それを切り捨てるなんて、では、その後の日本の安全保障をどうするのか。
アメリカの市場としての日本への価値も中国より大きいでしょう。
要するに、こんなひどい主張がアメリカの左派にはあるのだということを知っていただけばよい、と考えての記述でした。
日本の核武装論議は民間の一部ではすでに起きていますね。
しかし、ご存知のように日米安保ではアメリカが日本の防衛のために、核抑止力までも提供する、ということになっています。その代わりに日本は独自の核武装などは目指さないといわけです。
この「アメリカによる日本のための核抑止」の信頼性についてはいろいろな議論があります。
中国が核を持ち、北朝鮮が核を持ち、という現状で、日本も少なくとも核の論議を、という主張は論理としてはそれほど不自然ではないでしょう。
ただし、いまの日米同盟体制の中で日本の核武装を公式の政策として推すことは、日米同盟の枠組みの否定につながります。アメリカは核拡散防止を対外戦略の基本にすえています。インドのような例外もありますが、日本の核武装をこれまでの日米同盟を維持する形で許容することは、まず考えられません。
日本核武装という志向はアメリカとぶつかるだけでなく、核拡散防止条約(NPT)とも衝突し、日本はまずその条約から脱退せねばならず、国際社会を敵にするという状況も生まれるでしょう。また国内の非核、反核の国民感情も重大な要因です。
しかしこうした現況はもちろん変わりうるわけです。究極の目的は日本の安全保障なのですから、日本の平和と安全を守るには「核しかない」、「核の方がよい」という状況も生まれうる(たとえばアメリカの方から日米同盟の破棄を持ち出してくれば)わけで、そうした事態が絶対に起きないという保証もありません。ただ現状で核武装を目指すことには、あまりに多くの障害と、マイナスが予測される、ということです。
アメリカの左翼は確かに存在します。もっともその中にも多様な勢力がいます。
日本に対しては、日本が普通の国家となり、とくに安全保障面でごく普通の主権国家と同じようになることを「日本の再軍備」とか「軍事強国化」と断じて、非難する傾向があります。
また彼らは中国の軍拡や人権弾圧に奇妙なほど寛容でもあります。
フランスには日本文化館(?)とかいって、政府予算で運営される日本の発信拠点があるのですが、こういうインチキ報道に対して、なぜ反論しないのでしょうか。
アメリカの方がこの点、日本政府の対応はましのようです。
ニューヨーク・タイムズへのリンク、ありがとうございました。
この寄稿を書きながら、なぜ私が個人として、これを書いているのか、ともいぶかりました。
私は安倍首相を擁護せねばならないような理由はとくにありません。ただし自分の国の新首相が任地の外国のメディアで間違った事実関係に基づき、不当に批判されているのをみれば、一国民として、あるいは一言論人として、ゆがみやミスを正したいという気持ちが自然発生的に生じるわけです。
ttp://blog.rkb.ne.jp/la_blog/2006/09/
きょうのスピーカーはマイケル・ジーレンジガーさん。
東京に新聞の特派員として滞在したことがあるジャーナリストでつい先日、日本の様々な社会問題を捉えた
「Shutting out the Sun(太陽を遮って)」という本を出版しました。
(来年「ひきこもりの国・ニッポン」というタイトルで邦訳が出る予定だそうです)
※いつも思うのですがこういう外国人ジャーナリストは、日本の出版社と特別なコネでもあるのでしょうか?そもそもなぜ日本人が自国の社会問題について外国人からあれこれ説教されなければいけなのでしょうか。