アメリカ議会で「慰安婦」決議案を推進して、日本叩きを続けるマイク・ホンダ議員が中国系反日団体の「世界抗日戦争史実維護連合会」の幹部連から集中的に政治献金を受けとり、しかも同決議案の作成や提出でも共闘していたことを伝えてきました。
この「世界抗日戦争史実維護連合会」はいろいろなところに顔を出し、手を伸ばします。「南京大虐殺」での日本糾弾、「米軍捕虜虐待」での日本糾弾など、次々に矛先を繰り出してきます。
同連合会は最近のアメリカでの「南京」映画でも陰の主役でした。そのへんの実情を以下のレポートで紹介しましょう。文藝春秋最新の4月号に私が書いた「『ザ・レイプ・オブ・南京』映画の罠」という論文からの抜粋です。
慰安婦から南京へと「日本叩き」の糸をたぐっていったら、またまた抗日連合会にたどりついた、という報告です。



南京事件についての映画がアメリカ側で作られる、という話を昨年秋に聞いたとき、「あっ、またか」と感じた。同時に、まさか、再度のデマでもないだろうとも思った。

 なぜなら、そのつい数ヶ月前に「南京事件を描いたハリウッド映画がクリント・イーストウッド監督、メリル・ストリープ主演で制作される」というデマが広範囲に流されたばかりだったからだ。二〇〇六年一月、このデマは読売新聞が上海発で転電したためて、日本国内に最初に伝わり、ざわめきを起した。

中国側が「南京大虐殺」をテーマとするプロパガンダ映画を作ることはとくに驚きにはあたいしないものの、主体がハリウッドとなり、しかも全世界で人気を博すアメリカ映画界の巨匠と名女優の登場となれば、話は別だからだ。

 しかし私自身がイーストウッド監督のマネージャーに電話して直接、問いただしてみると、「まったくのウソですよ」という答えが返ってきた。そしてその虚報の流れをさかのぼっていくと、デマのそもそもの出所はアメリカに組織をはりめぐらせる中国系の政治活動組織「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下、抗日連合会と略)だったことが判明した。この組織は後述するように、中国政府とも密接なきずなを保つ反日団体である。

 ところが今回は映画を制作するアメリカ人の当事者が公開の場に出て、その意図を明確に語っていた。大手インターネット企業のAOLの副会長テッド・レオンシス氏である。彼が制作に私財二百万ドルを投入したという。アメリカがからんで南京映画が作られることはまちがいなかった。ところがこの映画にからむその後の展開をみていくと、まるでブーメランのように、また前述の抗日連合会など中国系の反日団体に結びついていくのだった。この点は日本側の感覚としては、なんとも薄気味悪い実態なのである。

 そもそも南京映画がいまの時点でこれほど話題になる最大の理由は、二〇〇七年が日本軍による南京攻略からちょうど七十年になることだといえる。

 

さてレオンシス氏は今回の映画について以下のようなことを語っていた。

 「二年ほど前、自分のヨットでカリブ海を航海中、『レイプ・オブ・南京』の著者アイリス・チャン女史の死亡記事をやや古い新聞で読み、その本に興味を抱いて読了した。その書の内容に引き込まれ、映画を作ることを思いついた。同書によると、一九三七年末の南京では日本軍により非武装の中国人三十万以上が殺された。だがその物語はまだ一般には伝えられていないと思った」

 この映画の監督にはアカデミー賞短編ドキュメンタリー作品賞を得たビル・グッテンターグ氏、撮影にはバディ・スクアイア氏、音楽にはグラミー賞受賞のルー・リード氏の起用がすでに決まっているとのことだった。

 いま五十歳のレオンシス氏自身はAOLを発展させた実績のほかにも、娯楽やスポーツの経営で知られる。リベラル志向のビジネスマンとしてこの種の政治メッセージのにじむ芸能、芸術の活動にも何度もかかわってきた軌跡がある。

 しかし彼が『レイプ・オブ・南京』という書に触発され、その書を土台に映画制作にとりかかったという点は気になった。

 日本でも悪名の高いこの書は「南京大虐殺」を昭和天皇あるいはその側近から事前に出た命令による計画的な行動だと示唆し、その結果として中国の民間人合計三十万以上、あるいは三十五万が日本軍によって殺されたとし、その後も日本側はそのことに対しなんの処罰も受けず、反省も謝罪も、歴史教育もしていない――と断じていた。南京での日本軍による殺戮を「太平洋のホロコースト」と呼び、もっぱらナチスのユダヤ民族絶滅の行為と同等に扱っていた。

この『レイプ・オブ・南京』は全米で話題となり、すぐに十万部、二十万部という売れ行きを記録し、ベストセラーの一角に食い込んだ。このときにこの書の宣伝や販売に全面的に協力したのが前述の中国系の抗日連合会だったのである。

 しかし、まもなく『レイプ・オブ・南京』には事実のまちがいやゆがめが多数あることがアメリカ側の学者やジャーナリストによっても指摘されるようになった。チャン氏は実際に日本を訪れることもないまま、日本全体を有罪だとして告発する形で、この書を書き上げていたのだった。

ちなみに日本国内でも『レイプ・オブ・南京』の事実のまちがいや偏向、写真の誤用などが指摘されたが、アメリカという舞台でそのことをきちんと表明する日本側の声はなかった。

 

さてこのドキュメンタリー映画は『南京』というタイトルで二〇〇六年十一月末ごろまでには完成し、独立系の中小プロダクション制作の映画作品を審査する「サンダンス映画祭」のドキュメンタリー部門に出品された。そしてこの一月中旬の最終審査でドキュメンタリー部門応募の八百点以上のなかから、最優秀賞や監督賞などこそ取らなかったが、編集賞という賞に選ばれたのだった。

長さ九十一分だというこの映画『南京』はサンダンス映画祭での紹介では以下のように描写されていた。

「この映画は歴史上でももっとも悲惨な出来事の一つ、南京虐殺の物語を伝えている。一九三七年、侵略を続ける日本軍は南京で二十万人以上の罪のない中国人を殺し、数万人を強姦した。この恐怖のなかで少人数の欧米人たちが団結して異例のヒロイズムを発揮し、二十五万人以上の命を救った。これまでほとんど知られていないこの物語を全世界の観衆に示すのがこの映画だといえる(以下略)」

犠牲者の数が二十万人とされてはいるが、これだけでも基本的には『レイプ・オブ・南京』の記述や中国側の主張が映画の土台であることがわかる。

この映画はさらに完成前からアメリカ国内で活動する中国系団体の抗日連合会などによって、日本糾弾の手段としてさんざんに宣伝されてきた。同連合会のウェブサイトをみると、同じ映画『南京』の紹介もサンダンス映画祭での前述の描写よりもずっとどきつい記述でなされていた。しかもことあるごとにその種の記述がサイトに載るのである。

「この映画では日本軍の残虐行為の被害者のうちの生き残りが紹介され、とても信じられないような恐怖の体験を語る。中国人の男の体にガソリンが浴びせられ、火をつけられる。他の中国人男性は日本軍将兵が見物するなかですでに死んだ女性とのセックスをすることを強いられた」

「この映画では中国人の年老いた男性が自分の母が目の前で日本軍兵士の銃剣で刺殺された様子を語るうち、泣き伏してしまう光景が出る。彼の母親は彼の弟に乳を与えようとしたところをいきなり刺し殺されたというのだ。別の中国人女性は自分の幼い娘が日本軍に連行され、強姦されて殺されたことを泣きながら語った」

こんな調子なのである。

抗日連合会という団体はその活動目的について以下のように記している。

「わが組織は第二次大戦中に日本軍が働いた非人道的で過酷な残虐行為について一般アメリカ国民を教育することに献身する。日本政府は七十五年前に始めた戦争犯罪に対し、被害者への賠償をなにもせず、公式の謝罪もしないままでいる」

この宣言は戦後の日本が果たした賠償や謝罪や軍事裁判での幾多の死をもってしての償いをも一切、無視して、いつまでも日本軍の残虐行為を糾弾していく、というのである。この態度は反日と評する以外にないだろう。

現に抗日連合会の最近の「ニュース」ではアメリカ連邦議会下院に提出された日本軍の「慰安婦」非難決議案や同案を審議する二月十五日の公聴会の模様などを「日本の非」を露骨に非難しながら報じている。同連合会のウェブサイトでは同決議案の提案者のマイク・ホンダ議員をヒーロー扱いする書きこみの数々が踊っていた。

 抗日連合会の各組織はみなアイリス・チャン著の『レイプ・オブ・南京』を積極的に宣伝してきた。そして今回も南京関連映画の宣伝に努めているのである。

 

このように南京事件のドキュメンタリー映画一つを追ってみても、すぐにこうした中国系の反日団体にぶつかるのである。この種の団体が日本非難のキャンペーンをアメリカで展開する理由はそれが国際的にも、また日本にとってももっとも効果が高いから、ということだろう。ハリウッド映画ひとつを例にとっても、アメリカのソフトパワーは全世界にアピールする力がある。アメリカ議会での採択決議も国際的な重みを持つ。

とくにアメリカへの安全保障面などでの依存度の高い日本にとっては、アメリカからの反日や侮日のメッセージは苦痛や打撃の度合いが高いことになる。日本をいつまでも弱く、道義的に国際劣等国の立場に抑えつけておこうとする勢力にとっては、アメリカからのその趣旨に沿った対日発信がもっとも強い効果を発揮するということである。