ホンダ議員がアメリカ議会下院に出している慰安婦問題での日本糾弾決議案の背景について、月刊雑誌「文藝春秋」五月号にかなり長い論文を書きました。
「『慰安婦決議』ホンダ議員の策謀」というタイトルです。
副題は「米高級紙までが非難、安倍包囲網の背後にうごめく勢力」となっています。

ではその文藝春秋の論文の冒頭を以下に紹介します。



日本とアメリカとの間でいわゆる「従軍慰安婦」の問題がすっかり波紋を広げてしまった。安倍晋三首相の訪米にも微妙な影を投げかねない状況ともなった。

しかし六十年以上も前の出来事のためにアメリカの議会やマスコミの一部がとげとげしい非難をいまの日本に浴びせ、日本の政府はその非難を「事実に反する」として反撃するというのも、考えてみれば、なんとも奇妙な話である。

アメリカ側は「慰安婦」という戦争中の遠い過去の出来事を理由に、あたかも現在の日本が国をあげて理不尽な人身売買でもしているかのように、政府や国民を攻撃する。現実にはいまの日本とアメリカの間には重大な対立案件などなにもないのに、である。日本が最近になって「慰安婦」問題に関してみずから進んで、なにか新たな言動をとったという事実も、とくにない。であるのに突然、まさに晴天の霹靂のごとく、アメリカ議会から斬りつけられるような攻撃を受けたようにみえる。これはいったいなぜなのか。

日本軍のための慰安婦が存在したことは事実である。売春が当時、合法だったとか、日本の軍や政府が女性たちを強制徴用はしていないと主張する前に、そうしたセックスの供与が痛ましく遺憾な事態だと認めるべきなのは現代の価値基準からすれば自然であろう。その点では現在の日本国民の大多数もその女性たちへの同情は当然、感じるはずだ。

しかしアメリカという存在は歴史的にはどの角度からもこの日本軍の慰安婦問題には直接からんでこない。いまのアメリカの国家でも社会でも、別にこの問題での被害者や当事者が現存するわけではなく、外交、内政どこを眺めても、アメリカ自体にこの案件をいま提起せねばならない必要性も事情もまるでみあたらない。

にもかかわらず、いまアメリカの立法府が「慰安婦問題」で正面から日本を糾弾してくるのだ。しかも日米両国間では経済摩擦は消えて、同盟そのものなど安全保障関係はこれまでで最高とされるこの時期に、である。この奇異な現象はなぜなのか。