アメリカではこのところダルフール虐殺で中国政府を非難する声が高くなりました。連邦議会の共和、民主両党の議員たちがいっせいに、ダルフール虐殺を事実上、あおるスーダン政府と、そのスーダン政府に軍事、経済、政治の各面で強力な支援を与える中国政府を糾弾し始めたのです。

民間でも有名な映画女優のミア・ファローさんらが声を大にして中国を非難しています。

これら中国を非難する人権派陣営は2008年の北京オリンピクのボイコットまでを提唱しています。「中国政府がこのままダルフールの虐殺を止める措置をとらないならば、世界各国は北京オリンピックをもボイコットすべきだ!」というのです。

ブッシュ大統領もこうした声に押された形で5月29日、スーダンに対する一連の禁輸措置を抗議の意味をこめて、発表しました。

さて次は中国にどう対応するか。

関連の記事を以下に載せます。


「中国はダルフール虐殺を支援」 米下院108人、五輪ボイコット警告

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米ホワイトハウスの前で先月29日、ダルフール虐殺に抗議し演説する女優のミア・ファローさん(AP)

米ホワイトハウスの前で先月29日、ダルフール虐殺に抗議し演説する女優のミア・ファローさん(AP)

 【ワシントン=古森義久】米国議会下院の議員108人が9日、中国の胡錦濤主席あてに書簡を送り、スーダンのダルフールでの虐殺を続ける勢力への支援の停止を求め、中国側が十分な対応をしない場合には2008年の北京五輪のボイコットにもつながると警告した。同下院では有力議員が8日にも本会議で同じ理由により北京五輪ボイコットに同調する演説をしており、米議会での対中非難が高まってきた。

 胡主席あての書簡は下院外交委員長のトム・ラントス議員らによって署名され、「ダルフールではスーダン政府と同政府に支援された民兵組織により民間人数十万が虐殺されているが、中国はスーダン政府に巨額の援助を与え、武器を売却し、虐殺を阻止するための措置をとっていない」と述べ、中国政府が事態を放置する場合は北京五輪に重大な支障が起きて、その催しが「ジェノサイド(大量虐殺)五輪」になってしまうとして、北京五輪のボイコット呼びかけの可能性をも示唆した。

 ダルフール虐殺に関しては下院の8日の本会議でも共和党の有力議員アラン・ウルフ氏が中国政府の「共犯」を非難して、北京五輪ボイコット運動への同調を表明する演説をした。ウルフ議員は有名女優のミア・ファローさんの北京五輪阻止論を紹介し、「中国は『一つの世界、一つの夢』というスローガンの下に北京五輪開催の準備を進めているが、ダルフール大量虐殺という『一つの悪夢』が存在するのだ」と述べた。

 同議員が紹介したのはファローさんが現地の視察を下に3月28日付ウォールストリート・ジャーナルに「ジェノサイド五輪」と題して発表した論文。同論文は「ダルフールではすでに40万人が殺され、250万が居住区から駆逐されたが、中国政府はその実行者であるスーダン政府を全面支持してきた」と中国を非難し、その詳細として(1)中国政府は国有の中国石油を通じてスーダンの石油の大部分を買い、スーダンの石油生産企業集団2つの最大株主となっている(2)スーダン政府は中国との石油取引からの収入の80%以上を虐殺を実行するアラブ人の民兵組織「ジャンジャウィード」用の兵器購入にあてている(3)同民兵組織やスーダン政府軍が使う爆撃機、攻撃用ヘリ、装甲車、小火器などの兵器はほとんどが中国製(4)中国は米英両国が推進する国連平和維持軍のダルフール派遣に一貫して反対してきた-と報告した。

 ファローさんは同論文の中でとくに「中国政府は人権弾圧で国際的非難を浴びることには平然としているかもしれないが、北京五輪の開催だけは最重視するので、そのボイコットの動きには最も敏感となるだろう」と論じた。ウルフ議員もこうした趣旨を紹介し、自分自身の北京五輪開催への反対論を明確に打ち出した。

(2007/05/11 07:18)

米大統領、スーダンへの制裁強化 .

 【ワシントン=有元隆志】ブッシュ米大統領は29日、スーダン西部ダルフール地方の紛争について、「大虐殺」と非難し、スーダンへの新たな制裁措置を発表した。ダルフール地方でのスーダン政府の軍事活動を阻止するため、同政府への武器禁輸やスーダン国営企業など31社に対する金融制裁、暴力行為に責任があるスーダン政府高官らへの制裁、国連での新制裁決議案提起を盛り込んだ。

 大統領はホワイトハウスでの声明発表のなかで、「ダルフールの人々はスーダン政府が加担した爆撃、殺人などのせいで、あまりに長い期間苦しめられている」と指摘。「国際社会はこれを終わらせる責務がある」と強調した。

 米政府はこれまでもスーダンの企業に制裁を加えてきたが、スーダン経済を支える石油関連の投資などを行っている企業の多くを制裁対象に含めることでスーダン側に打撃を与える狙いがある。

 国連安全保障理事会での新決議案では、英国など同盟国と協力し、スーダン政府への武器禁輸の強化などを求めていく。

 中国はスーダンの石油輸出の約4分の3を輸入するなど最大の貿易相手国。米下院外交委員会は中国政府に影響力を行使するよう求める決議を採択。ラントス下院外交委員長らは中国の胡錦濤国家主席に書簡を送り、中国が十分な対応をしない場合、2008年の北京五輪のボイコットにもつながると警告している。

(2007/05/29 21:34)