慰安婦問題で明らかにアメリカ議会の日本糾弾決議を支援する朝日新聞がその政治目的に沿ったプロパガンダ的報道をして、その内容をワシントンの日本糾弾派がアメリカの議会やマスコミに向けて喧伝するーーそんな日米連携の安倍叩きメカニズムをおみせしましょう。

朝日新聞6月6日朝刊の第4面に小さな囲み記事が載りました。
見出しは
「『慰安婦なんか問題にならない』 首相ブレーン・岡崎氏」
「20世紀は人権侵害の時代」
となっています。

本文は次のとおりでした。

「安倍首相の外交ブレーンの岡崎久彦・元駐タイ大使は5日、東京都内で講演し、『20世紀は中国では何千万殺している。(旧ソ連の)スターリンの粛清も何百万、米国も原爆やドレスデン(空爆)をやっている。日本の慰安婦なんか問題にならない』と語った。首相が4月の訪米時に『20世紀は人権があらゆる地域で侵害された時代』として慰安婦問題での日本の責任に言及した背景を解説したものだ。
 岡崎氏は、首相が訪米前に米メディアのインタビューを受けた後、『この文言(=『20世紀は人権侵害の時代』)を全部使いなさい』と助言したことを明らかにした。さらに『供給が十分な場合に強制は必要ない。どのくらいの報酬で募集して供給が十分だったという資料がそろっているといいが、おカネをためて自分のキーセンハウス(韓国の売春施設)を開いたやつが報告するはずもない』と、慰安婦の強制性の調査にも疑問を示した」

以上が朝日の記事です。
まあ、この時期に岡崎氏がおそらく頻繁に述べているようなことをあえて、講演会での言葉まで引き出して報道することの意図のせんさくは後回しにしましょう。

おもしろいことは、このニュース性などほとんどない朝日の記事が即座にワシントンの民主党系活動家のニュースレターに英語で転載され、いかにも大きな出来事のように、流された事実です。
このニュースレターは日米関係を主体とする出来事、情報をクリス・ネルソンという人物が書き、有料で配布している「ネルソン・レポート」(The Nelson Report)です。
このレポートの6月6日版は「日本 慰安婦」という項目で岡崎発言を揶揄する感じで紹介しています。

朝日新聞の記事が出たのは6日の朝、ネルソン・レポートがその英訳を流したのは日本時間の7日の未明、なかなかのスピードです。

このネルソン氏は私ももう30年近く知っている元ジャーナリスト、元議会スタッフです。ワシントンでの活動は長く、とくに日米関係やアジア情勢に対する米側の事情に詳しい敏腕オブザーバーでもあります。個人的にはいつも早口で、ユーモア混じりの楽しい会話の魅力的な人物です。
しかし政治的にははっきりと民主党リベラル派を宣言しており、反ブッシュ、そのブッシュ政権と親密な日本の安倍政権など「普通の国」派にはきわめて批判的です。とくに歴史関連の慰安婦、元米人捕虜、さらには靖国参拝などの課題では、朝日新聞と同じような左傾スタンスを鮮明にし、安倍政権叩きでは一貫したスタンスをとっています。

そのネルソン・レポートが具体的に岡崎発言をどう紹介しているのか、同レポートの著作権の問題もあるようですから、
具体的には書きませんが、きわめて批判的、揶揄的、けしからん調なのです。
たとえばーー
「岡崎氏が無視しているようにみえるのは、温家宝・中国首相の『日本は歴史に正直に直面し、戦時の悪事についてなお謝罪する必要がある』という教示である」

なんていう調子なのです。
そしてこのレポートの主眼は明らかに、この岡崎発言を安倍首相の思考として、アメリカ議会に広範に流すという意図です。
だから結びは以下のようになっています。
「ホンダ議員の決議案はいま約130人の共同提案者を得るにいたった。そして岡崎氏のささやかな応援発言はアメリカ議会にいまや広範に広められているのだ」

実際にはこのレポートによって岡崎発言をアメリカ議員たちに知らせるという意図でしょうね。「安倍は慰安婦問題でまったく謝罪も反省もしていないのだ!」というメッセージを広めたいという姿勢が露骨です。そしてその背後にあるのは、もちろんホンダ決議案をなんとか通したいという願望です。
この点はそもそもの朝日新聞の記事の意図と共通しているように思えます。

日米左傾パートナーの連携とでもいいましょうか。
朝日新聞のエージェントふうの機関紙がワシントンでこのように機能するという一つのケーススタディーでもあります。

しかし日米双方でホンダ慰安婦決議案を採択させたい勢力がこうしていま活発にプロパガンダ的行動にエンジンをかけているのは、かんじんの決議案が少なくとも彼らの予測よりは採択に向けて前進していない、ということを意味するのかもしれません。