慰安婦問題で日本を糾弾するアメリカ議会の決議案は下院外交委員会で可決され、日本の参院選の直後にも下院本会議で採決される見通しとなりました。このままでは採択の展望が確実です。

しかしこの決議案に一貫して、強硬に反対を表明し続けているアメリカ上院の民主党長老議員の存在には日本側としては注視しておくべきでしょう。ダニエル・イノウエ上院議員です。
イノウエ議員は周知のようにハワイ州選出の日系人の政治家です。民主党では全国委員長を務め、連邦議会でも数々の枢要ポストを歴任した長老です。第二次大戦では日系人部隊の将校として、欧州戦線で武勲をあげ、ドイツ軍の銃撃で片腕を失ったことでも有名です。

そのイノウエ議員が慰安婦決議案に対して、まず3月にトム・ラントス下院外交委員長に書簡を送り、反対を伝えました。上院議員が下院あてにこの種の意思表示をすることはきわめて異例です。イノウエ議員はそれほどこの決議案の悪影響を懸念する、というのです。
さらにイノウエ議員は7月9日に上院本会議あてに声明を出し、改めて明確な反対論を述べました。

その声明の主要部分を以下に紹介します。
また原文の英語の全文も次のエントリーで紹介します。

以下はダニエル・イノウエ上院議員の声明からの抜粋です。


「これらの出来事(慰安婦の存在など)は一九三〇年代と四〇年代に起きた。そしてそこでの悪習に対する認知と謝罪は一九九四年以来の日本の歴代首相によりなされてきた。

私は米国が認知し、謝罪すべき過去の出来事を多数、想起できる。だが米国政府はそうした行為を認知せず、他の諸国も米国を公式に叱責することはない」

 

 「もし他の諸国の立法府が米国の第二次大戦中の歴史上の行動を糾弾したとすれば、米国政府はどう反応するだろうか。友好国や同盟国同士の外交上の儀礼では、こうした案件の処理には深慮と慎重さが求められるのだ」

 

 「なぜわれわれはこれほど良好な日本との関係を特定の立法行動によって危険にさらさねばならないのか。これがわれわれ米国人が友人であり、同盟相手である日本人を遇する方法なのか」

 

 「第二次大戦後、日本の戦争犯罪への賠償の諸問題は各国個別にサンフランシスコ平和条約と、その関連の一連の平和条約によって、解決された。厳密な法的観点からすれば、慰安婦問題もこれらの条約によってすでに解決されているのだ」


 以上はイノウエ議員の声明のごく一部です。同議員が現在の日本が国際社会で信頼され、好かれいる事実も世論調査を引用して強調しています。日本の民主主義や人道主義も指摘しています。そしてなによりも日本がアメリカに安保面などでこれほど貴重な貢献をしているではないか、と力説するのです。
 私はこのイノウエ議員の主張について日経BPのインターネットのコラムでも詳述しました。以下はそのリンクです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/53/