アメリカ議会の下院外交委員会が90年以上前のアルメニア人の虐殺を取り上げ、当時のオスマン・トルコ帝国を非難する決議案を採択しました。賛成27、反対21の僅差ではありましたが、可決は可決です。

この決議案にはトルコが国をあげて反対しています。
事実関係も曖昧だし、いまアメリカがこの歴史的事件を単にトルコ側による「ジェノサイド」(大量虐殺)と断じれば、せっかくのトルコとアルメニアとの和解も吹き飛んでしまう、というのです。
そしてトルコはアメリカ議会が本会議でこの決議案を無理にでも通すのならば、、いまイラクでの米軍の活動に不可欠となっているトルコ領内の軍事基地の使用までも拒む、と示唆するのです。

トルコはかつてフランスの議会が「アルメニア虐殺を否定することを禁じる」という法的措置をとったことに反発して、フランスとの一切の軍事関係を断絶しました。それほど強い反発をみせたのです。今回ももしアメリカ議会が強硬に出れば、トルコ当局はフランスに対して以上に強く抗議行動を取ることを示唆しています。

外国で起きた遠い過去の案件を持ち出してきて、いまの外国の政府を責めるというのは、アメリカ側が日本の慰安婦に関してとった行動と同じです。しかし日本側は強く反発することはしませんでした。

ところがトルコの反応は違うのです。
強硬な反発なのです。
日本とはずいぶんと異なります。
さあ、どうなるか、注視せざるをえません。

ではこの「アルメニア虐殺」非難決議の可決からお知らせしましょう。
産経新聞10月12日朝刊の記事です。 


米下院外交委 僅差で「トルコ非難決議」を可決 (1/2ページ)

2007.10.11 19:53 

このニュースのトピックス:慰安婦問題

 【ワシントン=古森義久】米国下院外交委員会は10日、90年以上前のアルメニア人虐殺に関して当時のオスマン・トルコ帝国を非難する決議案を27対21の僅差で可決した。米国、トルコ両政府とも同決議案は両国関係を傷つけ、米国のイラクでの軍事活動にまで支障を及ぼすとして強く反対しており、米国が中東戦略で頼りにするトルコとの同盟関係を緊迫させる見通しとなった。

 決議案を審議する下院外交委員会(トム・ラントス委員長)が10日午後、開いた公聴会はアルメニア系、トルコ系の関係者らで満席となり、テレビ傍聴の別室まで満員となって熱気を高めた。

 決議案は1915年から数年間に起きたアルメニア人大量虐殺を公式に「ジェノサイド」(事前に計画された集団的虐殺)と呼び、その悲劇への理解などを米国の外交政策に反映させるという内容だが、虐殺をオスマン・トルコ帝国の全責任とし、犠牲者150万として「ジェノサイド」と断じる点などに対しトルコ政府が激しく反対している。 

 トルコ政府が「事実の一方的解釈」と非難する点で同決議案は日本糾弾の慰安婦決議にも類似する。 

米国議会側ではアルメニア系米人の意向を受けたカリフォルニア州選出のアダム・シフ下院議員(民主党)らが決議案を提出し、下院で226人、上院で31人の共同提案者を得るにいたった。

 トルコ政府は「いわゆるアルメニア虐殺の実態は不明確な部分も多く、ジェノサイドとは呼べず、決議採択はトルコ国民を激怒させて、トルコ・米国関係に重大な打撃を与える」として反対し、エルドアン首相が5日、ブッシュ大統領に電話して議会に抑制を求めることを要請した。同大統領も10日朝の会見で「決議案採択はNATO(北大西洋条約機構)、そして対テロ国際闘争での枢要同盟国との関係を傷つける」として改めて反対を述べたばかりだった。

 米国はイラクでの軍事活動に必要な機材や物資の7割以上をトルコ領内のインジルリク基地などを経由して運んでいる。トルコ側では同決議案への反発が激しく、外相や議員団をワシントンに送って、採択された場合は同基地を使用禁止にする意図までを示唆してきた。こうしたトルコの官民の激烈な反応は慰安婦決議案への日本側の対応とは対照を描いてきた。

 同外交委員会の審議では委員長のラントス議員(民主党)が「大虐殺は非難されねばならない。トルコとの関係は確かに重要だ。だが日本の慰安婦決議案の審議でも、『これを通せば日米関係に重大な結果が起きる』と警告があったが、なにも起きなかった」と賛成論を述べた。これに対しダン・バートン議員(共和党)らは「現在のトルコの政府も国民もこの虐殺への責任はなく、トルコはいまイラクだけでなく中東全域への米国の対応で最も頼りになる同盟国だ」と述べ、同決議案に反対を表明した。

 外交委員会で可決された不拘束の同決議案は次に下院本会議にかけられる。だが委員会レベルでの採択でもトルコ側は官民で激しく反発することが必至となった。

             
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