民主党の小沢一郎氏の安全保障政策や自民党の福田康夫首相の外交政策について、論じてきましたが、つい最近まで日本外交を主導した麻生太郎氏はどうでしょうか。

周知のように、麻生太郎氏はさきの自民党総裁選では福田氏の330票に対し197
票と、予想外の善戦をしました。自民党の主要派閥がこぞって福田支持を打ち出したことを考えれば、びっくりさせらるほどの多数の得票でした。

その麻生氏は福田内閣への参加を辞退し、全国各地の遊説その他に出かけました。これからの日本の政治では無視も軽視もできない主要リーダーの一人であることはまちがいありません。

さてその麻生氏は日本の外交政策をどうみているのか。さらには世界をどうみているのか。同じ自民党でも、どうもそのへんがはっきりしない「和」だけの福田氏にくらべれば、麻生氏はこれまで自分の思考や見解を明確にしてきました。
その一端として麻生氏の近著『自由と繁栄の弧』から紹介し、議論の土台としてみましょう。

麻生氏が最近の日本国民が外交に対する関心を急速に高めてきたとして、その理由をいくつかあげています。

「第一に、いま日本は、何か大きな歴史の曲がり角にあるという時代認識を、多くの国民がもつに至っているのではないかということです」

以上のように述べた麻生氏は疑問符を抱かせる中国などの隣国とこの先、どう付き合っていくべきか、という課題などが日本国民にも迫ってきた、としています。

「第二に、いまや日本人は新たな自画像を持ちたいと切望しているのだと思います」

麻生氏は戦後の日本国民が「武器を持たされたらまた何をしでかすかわからないのが自分だ」という自己認識を抱いてきた、と述べます。抜き難い自己不信というわけです。また武力にまつわることはすべて否定するか、蔑みの対象ともみてきた、というのです。
しかしこの自己不信もいまやほぼ消滅しようとしている、と麻生氏は述べます。

「第三には、理不尽な現実に対する憤りがあるでしょう」

北朝鮮による横田めぐみさんらの不当な拉致への怒りが国民の間に広まりました。日本国民は隣国の横暴には毅然と怒りを表明するようになってきた、というのです。

そして周知のように、麻生太郎氏は日本外交のキーワードとして、この書のタイトルでもある「自由と繁栄の弧」という用語を打ち出したのです。この言葉は「価値の外交」という語にも置き換えられています。
その外交の新機軸として麻生氏は以下のことを言明しています。

「第一に、民主主義、自由、人権、法の支配、そして市場経済、そういう「普遍的価値」を、外交を進めるうえで大いに重視してまいりますというのが「価値の外交」であります」
「第二に、ユーラシア大陸の外周に成長してまいりました新興の民主主義国。これらを帯のようにつなぎまして「自由と繁栄の弧」を創りたい、創らねばならぬと思っています」

日本の外交で民主主義と自由と人権が重要だと宣言すれば、おのずから中国や北朝鮮という自由弾圧国家との距離は離れていきます。
麻生氏はこれほど明確な概念を自分の外交政策に打ち出したのです。

以上のような麻生氏の主張は念頭にいれておく必要があるでしょう。
また政治の変転で麻生氏が正面舞台に飛び出してくる可能性も否定できないからです。