日本からの拉致問題の当事者、関係者の代表たちが11月11日、ワシントンを訪れました。

北朝鮮による日本人拉致問題解決のための「拉致議連」、「家族会」、「救う会」の合同訪米団です。ワシントンには17日まで滞在して、アメリカの政府や議会に北朝鮮を「テロ支援国家」指定から解除しないことの要請を中心に協力を訴える予定です。

 拉致の被害者家族らや支援の国会議員たちはこれまでも何度も訪米し、そのたびに成果をあげてきたといえますが、今回の訪問はこれまでとちょっと異なります。アメリカ側の北朝鮮に対する姿勢がぐっと軟らかくなって、日本人拉致問題がひょっとすると脇に押しのけられる危険性があるのです。

 この訪米団の団長には拉致議連会長の平沼赳夫元経済産業相がなっています。ただし11日に第一陣としてワシントン入りしたのは拉致議連の幹事長の西村真悟衆院議員、家族会の副代表の飯塚繁雄氏、同事務局長の増元照明氏、救う会副会長の島田洋一、西岡力両氏の5人でした。平沼氏をはじめ松原仁、鷲尾英一郎らという他の超党派の国会議員計6人は14日にワシントンに着いて、一行に合流することになっています。

 同訪米団はアメリカ政府の国家安全保障会議、国務省、国防総省らの北朝鮮問題担当高官のほかアメリカ議会の議員たちに面会して、とくにブッシュ政権が北朝鮮を核問題の進展とのからみで「テロ支援国家」から外すことは拉致問題の解決への阻害になることを訴える方針です。


 アメリカ政府は国務省主導で北朝鮮の核兵器開発問題での前進を急ぎ、北の核施設の「無能力化」と引き換えに、北朝鮮を米側の「テロ支援国家」リストから外すことを約束したという報道が流れています。北がもし本当に「テロ支援国家」の指定解除を受けると、世界銀行やアジア開発銀行からの経済援助を受けられるようになり、日本による経済制裁の効果が骨抜きとなります。圧力の苦痛から拉致問題の解決に向かってふたたび動くことへのインセンティブがなくなってしまうわけです。だから日本側は政府も拉致被害者関連諸組織も、こぞってこの指定解除に反対しているのです。
 
アメリカ議会ではこの「テロ支援国家」の指定解除には日本人拉致事件の解決が前提条件になるという趣旨の新法案が下院に提出されました。共同提案議員が20数人となっているそうです。だから議会にはこのブッシュ政権のこの指定解除の動きに対する反対は多々あるのです。
日本側の訪米団はこれら議員たちとも面会する予定です。しかしこの訪米団の要請にブッシュ政権がどう対応するかは、このところ微妙な冷却を増している日米関係の新たなテストケースともなりそうです。

ブッシュ政権が同盟国である日本のこれほど激しく反対する措置をあえて、とるのか。たとえ北朝鮮の核兵器開発の停止という大義の下であっても、同盟国の日本がこれほどまでにやめてくれと懇願する措置を実行してしまうのか。
もしそうなった場合、日本側の反発が当然、予想されます。その反発がこんご日米同盟にどう影響していくのか。

訪米団の動きとそれに対するアメリカ側の政府や議会の態度が改めて注視されるゆえんです。