アメリカ上院に日本側で拉致問題の解決に動く側が切望していた決議案が出されました。12月10日のことです。産経新聞の朝刊ですでに報じられていますが、ここでも日本側の最近の訪米団の活動とからめて、紹介しましょう。

まず決議案の内容です。
骨子はアメリカ政府が北朝鮮をテロ支援国家の指定リストから外すには、日本人の拉致問題の解決や進展をも含む多数の前提条件を北朝鮮が満たしてからでなければならない、と求めています。

決議案はその前半ではその条件の一部として、「人権状況の改善、拉致被害者の状況説明と解放、家族再会、強制労働収容所の改善」などを明記しています。
さらに後半ではもっと具体的に日本人拉致に触れています。
「北朝鮮政府が米国政府、韓国政府が満足する形で日本の警察庁よって北朝鮮に拉致された日本国民として認定されている15人を解放する、あるいは消息の発表をする」ことがない限り、北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除してはならない、という記述があります。

以上は日本からの拉致問題での「家族会」「救う会」そして「拉致議連」の各代表による合同訪米団がブラウンバック上院議員に面会した際に要請した主眼なわけです。

同上院議員はこの決議案で、北朝鮮のイランやシリア、そしてテロ組織のヒズボラへの大量破壊兵器拡散を指摘し、その種の活動が最近、あった限り、あるいはその活動が停止したことの証拠がない限り、北朝鮮をテロ支援国家リストから外してはならない、ともうたっています。しかし「日本人の拉致問題解決」もはっきりと、前提条件として明記されました。

この点こそ平沼赳夫議員や中井洽議員、古屋圭司議員、松原仁議員らがブラウンバック議員に直接、求めたところでした。その意味では平沼議員らの訪米は大きな成果をあげたといえるでしょう。

中井洽議員
中井洽の訴え 

古屋圭司議員


なおこの決議案には上院の大物議員たちが共同提案者として名を連ねました。
民主党の元副大統領候補だったジョー・リーバーマン上院議員、そして共和党側では
いずれも影響力の大きなカイル上院議員、グラスリー上院議員です。

さあ、この上院での動きはブッシュ政権の国務省への新たな抑制のカードです。
クリス・ヒル次官補を先頭に、とにかく北朝鮮との和解を急ぎ、テロ支援国家指定のリストから北朝鮮を外そうとする動きにアメリカ連邦議会の上院が反対を正面から表明したわけです。なお下院にはすでに同趣旨の決議案が出ています。

いまや12月12日、2007年も残り少なくなりました。
「ブッシュ政権は12月中に北朝鮮をテロ支援国家リストから外すことを決めており、日本側がなにを主張してもムダだ」という「観測」が日本側ではありましたね。
さてこの「観測」がどうなるのか、現実の事態の展開を見守りたいところです。

同時に日本側の切望をアメリカ側に伝え、ブラウンバック上院議員自身にも明確に要望した合同訪米団の平沼赳夫団長や飯塚繁雄氏、増元照明氏、島田洋一氏、そして、馬渡龍治議員、鷲尾英一郎議員らの活動の成果を改めて強調したい次第です。

鷲尾英一郎議員
鷲尾英一郎

馬渡龍治議員


西村眞悟議員
西村真悟

重要な付記ですが、この合同訪米団の拉致議連の一員として先遣隊の役割を果たしたのは西村眞悟議員でした。西村議員は金正日が日本人拉致を認める以前から被害者家族らを全面的に支援してきました。また今回の合同訪米団のワシントン訪問でも、
議員団の本隊より早く現地に入って、米側の当局者、関係者との会合などにあたりました。

こんご日本の国会議員たちの訪米はこの種の目的や使命をもって、実施することを期待したいとも思います。 

上記の議員たちの写真をあえて掲げるのは、この人たちが党派を越えて、拉致問題の解決という大義のために、実際の行動をとっていることへの認知からです。

政党が政党としての一貫した政策を持たない日本のいまの政治では個々の議員の言動を点検して、支持や不支持を決めることが有権者の賢明な態度とも思えます。