昨年11月に北朝鮮による日本人拉致問題で日本の国会議員の平沼赳夫、古屋圭司、松原仁各氏らが「家族会」「救う会」の代表とともに、ワシントンを訪れ、アメリカ側の政府や議会に北朝鮮を「テロ支援国家」の指定リストから外さないことを強く要請した経緯は、すでにこのブログでも詳しく、報告しました。いわゆる拉致問題での合同訪米団(平沼団長)です。

その当時、日本側の官民のアメリカ通とされる向きの間では「ブッシュ政権は北朝鮮のテロ支援国家の指定解除をすでに決めており、平沼訪米団の要求は無駄だ」というような悲観的な見解が頻繁に述べられていました。平沼訪米団が日本の国会議員団のワシントン訪問では初めて、米側の政府や議会に対し、一つの案件に絞って、明確で強固な抗議や要求をぶつけたのにもかかわらず、日本側ではこの訪米をことさら過少評価する向きが多かったのです。

ところが、現実にはこのワシントン訪問での平沼赳夫議員らの言動はアメリカ側にも大きなインパクトを与えたようです。とにかく行政府、立法府の両方の代表たちとの一連の会談で、平沼議員は「アメリカ政府が北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除すれば、日本の国民や国会議員が激しく反発し、日米同盟の基盤に悪影響を及ぼす」と警告し続けたのです。
平沼議員らのこの言明は米側でブッシュ政権の最近の北朝鮮への軟化過剰に反対するジョン・ボルトン元国連大使らにより、引用されて、「日本も激しく反対しているのだから、なおのこと北朝鮮をテロ支援国家リストから外してはならない」と強調されたのです。そして結果として現在にいたるまで、平沼議員らの要望が容れられた形となっています。

 (靖国神社に参拝する平沼議員)東京での活動
最近の米朝関係では、この平沼訪米団の要求が結果として容れられたような展開が起きているのです。ブッシュ政権は多くの観測筋が予測した2007年末までの北朝鮮のテロ支援国家指定解除をしていないのです。ブッシュ政権のクリス・ヒル国務次官補ら実務担当者はその遅れの理由として、北朝鮮がアメリカに対し誓約した「すべての核兵器開発計画の申告の宣言」を果たしていないことをあげています。
しかし北朝鮮はその「すべての申告」を実行していないのに、1月4日には「北朝鮮側はもう申告を果たしたが、米国側は公約を実行していない」と非難しました。米側はその非難にまた反発しています。

その一方、アメリカが北朝鮮をテロ支援国家のリストから外していないのは、北朝鮮自身の行動だけでなく、アメリカ側にそのリスト外しに対し、強い反対があるからだといえます。上下両院に「北朝鮮が日本人拉致事件の解決に応じない限り、テロ支援国家指定から解除されてはならない」という趣旨の法案や決議案が上下両院に出されています。その背後には「日本の強い反対」もあるのです。

アメリカ議会調査局は北朝鮮が国際テロ組織の「ヒズボラ」や「タミル・イーラム解放のトラ」に最近も武器類を供与していたことを指摘し、「北朝鮮はまさにいまテロ支援国家である」と断定する報告書を発表しました。そして前述のボルトン氏はこの1月上旬に、大手新聞への寄稿で、北朝鮮の核開発を阻止するための六カ国協議をもう破棄することを提言しました。「北朝鮮はそもそも核兵器を放棄する意図はなく、アメリカ側をだましているのだ」というのです。

そしていままたショッキングな意見の発表がありました。
ブッシュ政権の現在の北朝鮮問題特使ジェイ・レフコウィッツ氏が1月17日のワシントンでのセミナーで次のようなことを語ったのです。

「北朝鮮は適切な期限内に核兵器を放棄することに真剣になってはいない。おそらく時期のアメリカ大統領が登場するまで、核兵器保有といういまの状況を変えないだろう」

「北朝鮮に対しては六カ国協議とは異なるアプローチを考えるべきだ。北朝鮮の人権と核問題のような安全保障案件とを連結させねばならない」

「核問題の解決を急ぐあまり、北朝鮮の人権問題への対処を怠ってはならない」

ごく当然にも思える発言ではあるが、レフコウィッツ氏がブッシュ政権の現職の高官であることを考えると、重視せざるをえない。「北朝鮮の人権問題」といえば、日本人の拉致にも当然、触れてくることになる。しかも現職のブッシュ政権高官がそんなことを述べるのだ。だからここでも平沼訪米団が目指した目標が別な形で、別な比重と表現とで、
形を現したような感じさえするのである。