アメリカ大統領選の民主党側予備選ではなおバラク・オバマ候補とヒラリー・クリントン候補の死闘が続きます。今日5月13日はウェストバージニア州での予備選です。
白人の労働者層が圧倒的に多いこの州ではクリントン候補の勝利が確実視されています。しかしそれでもなお、全体としてのオバマ候補の優位は揺るがず、このままだと特別代議員を争う戦いももうオバマ勝利の確定となりそうです。

さてこの大統領選挙のプロセスで意外と大きな役割を果たしているのは、ラジオのトークショーです。アメリカの大手マスコミは全体が民主党、リベラルに傾斜するなかで、ラジオのトークショーは圧倒的に保守支持です。トークショーというのは、その番組を主宰するホストがいて、そのホストが政治的なコメントを自由に述べて、一般聴取者が電話で参加するという構成です。

このトークショーの全米第一の人気者はラッシュ・リムボウ氏です。この人は政治評論家と呼んだほうがよいほど政治を一貫して語り、しかも膨大な聴取者と影響力を誇っています。その放送はなんと月曜から金曜まで連日、3時間、全米に流されます。この3時間、リムボウ氏がほとんど話し続け、リベラル批判、保守擁護の内容をアピールし続けるのです。首都のワシントン地区でも正午すぎから午後3時まで、最も人気のあるAM放送局から流されています。

リムボウ氏はユーモア混じりの保守派ポピュリストともいうべき話し方で、リベラル派の矛盾や失敗をおもしろおかしく語ります。なにしろ保守本流を宣言していますから、つい最近までは共和党のジョン・マケイン候補にも反対を表明していました。しかしいまはマケイン支持、しかも同時に自分の番組を聞く共和党系の人たちに「民主党に一時的に登録して、予備選でヒラリーに投票せよ!」と訴えています。狙いは民主党側のオバマ候補の勝利確定を遅らせ、民主党内の対立を激化させ、延長させることだというのです。

なにしろリムボウ氏の番組を聞く人の数は全米で一日2000万とも3000万とも言われています。ラジオ放送の専門調査では毎週1400万という数字も出ていますが、いずれにしてもリムボウ氏がアメリカで最も聴取者の多いトーク番組の持ち主であることは事実です。

これがラッシュ・リムボウ氏、彼のホームページからのコピーです。
          



以下はこのリムボウ氏の最近の活動について書いた私の記事です。

米国大統領選挙の民主党側予備選でオバマ、クリントン両候補の対決が過熱するなかで、全米一の聴取率を誇る保守派のラジオトーク番組を持つ政治評論家ラッシュ・リムボウ氏が各州の共和党支持者に民主党へ一時的に登録し、予備選でクリントン候補に投票することを呼びかける作戦を展開していることが大きな話題となってきた。この作戦の狙いは民主党側の対決を長引かせて分裂を深め、共和党側を有利にすることにあるという。

   
 リムボウ氏は全米で毎日2000万とも毎週1400万とも推定される圧倒的最多数の聴取者を持つラジオトーク・ショーのホストで、その評論は保守に一貫し、リベラル派の政策や言動をユーモア交じりに徹底して批判することで定評がある。

 リムボウ氏はバラク・オバマ候補の優位が顕著になった3月はじめのテキサス州やオハイオ州での予備選直前から共和党層や保守層に民主党側に一時登録して、ヒラリー・クリントン候補に投票することを繰り返し訴えるようになった。リムボウ氏はこのアピールを「混乱作戦」と呼び、オバマ候補の指名確定を先延ばしにすることが目的だと公言した。

 テキサスの政治評論家のデーブ・マン氏は「共和党や中立層から転進した民主党有権者はそれまでの各州ではオバマ候補により多く投票するパターンが確立されていたが、テキサス州やオハイオ州では逆転し、クリントン候補への票が多くなった」と述べ、「混乱作戦」の効果を認めた。この両州での勝利が結果的にクリントン候補の寿命を延ばし、勢いを増した。

 同作戦の効用がさらに語られたのは5月7日のインディアナ州予備選。ワシントン・ポストは8日付第一面で「リムボウ氏がインディアナ州の結果を変えたか」という記事を掲載し、共和党側の登録有権者も民主党の投票に自由に参加できる同州ではとくに「混乱作戦」の効果が大きかったようだと報じた。

 同報道によると、クリントン候補が僅差で勝ったインディアナ州では民主党予備選投票者の10%が共和党員だと判明し、しかもその10%のうちの多数派がクリントン候補に投票しながらも、その6割は本番選挙では共和党候補に投票すると答えたという。

前回の民主党大統領候補で今回はオバマ氏を支持するジョン・ケリー上院議員も「リムボウ氏が民主党予備選に不当に介入し、クリントン候補の票を増やしている」と述べる一方、オバマ選挙陣営のデービッド・プラウフ代表も「リムボウ氏は民主党側予備選での得票結果の明白な変動要因だ」と語った。

 報道と選挙の相関関係を研究する「エディソン・メディア研究所」のジョー・レンスキ次長はペンシルベニア、ミシシッピー両州の民主党予備選でもリムボウ氏の呼びかけがクリントン票を大幅に増やしたと言明している。