VOICE掲載の古森論文の紹介を続けます。

今回はとくにチベット問題に関する部分です。

チベット問題で中国政府を非難し、北京オリンピックでもなんらかの行動を起こそうと言明している諸団体のうちの筆頭は国際的に著名な映画スターのリチャード・ギアが理事長を務める組織です。

この団体はなにを計画しているのか。

 

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中国政府の異質性、より具体的にいうならばその弾圧体質を北京オリンピックと結びつけて世界的に期せずしてもっとも強烈に印象づけてしまったのは、チベットでの今年三月の出来事だった。

 チベット民族の独自の宗教や文化、言語などに対する中国政府の苛酷な抑圧に反発した僧侶や住民が抗議行動を起こし、それに対して中国当局は武装警察を動員して、武力鎮圧を断行した。

 その結果、チベット人側には僧侶も含め百数十人ともみられる犠牲者が出た。文字どおりの血なまぐさい大量殺戮だった。

このチベットの弾圧への反発を北京オリンピックに関連づけて中国当局への非難とするという方法はすでに世界各地での聖火リレーへの抗議として実行された。

 長野市で起きた騒ぎもその一部だった。

 このチベット弾圧を原因とする北京オリンピックへの反発はこんごも当然、続くとみるべきだろう。

 その反発の活動の中核になるとみられる組織がいくつかある。

第一は「チベット国際キャンペーン」(ICT)である。

 この国際組織は著名な映画スターのリチャード・ギア氏が理事長となり、熱心に運動を進めていることでも知られている。


 1988年にアメリカで創設されたICTは本部をワシントンにおき、ベルリン、アムステルダム、ブリュッセルなどにオフィスを開いている。

 活動の目的はチベット民族の人権と自由を守ることである。

 そのためにはチベット内部の社会や宗教、人権などの状況を把握し、中国当局から弾圧されて拘留されているチベット人たちの解放を求め、アメリカや欧州の諸国の政府や議会にアピールし、国際社会にも訴えることなどの行動を続けている。

ICTの運営スタッフにはチベット人も多数、加わっており、インドにあるチベット亡命政権やダライ・ラマとの連携も密だとされる。

 ICTは今年3月の中国当局によるチベット民族弾圧の後はとくに激しい中国への抗議の行動を起こした。

 そしてチベットの僧侶たちを殺すような残虐な行動をとる国家が「平和の祭典」であるオリンピックを開催することは不当だと、非難してきた。

 ただしICTはこの春の中国当局による弾圧の前から、北京オリンピックに焦点をしぼり、「北京2008年 チベット競走」と題するキャンペーンを国際的に展開していた。

 このキャンペーンではまず人権弾圧の独裁国家が「平和の祭典」の主催者になるのは不当だとして、各国の指導者に北京オリンピックの開会式をボイコットすることを訴えている。

 その一方、世界各国の幅広い層に、北京のオリンピック会場を訪れ、「チベット競走」を実行せよ、と呼びかける。その呼びかけは次のようである。

 「中国政府にとって北京オリンピックが変化への触媒となるよう叫び続けよう! オリンピックに集まるスポットライトが中国の人権とチベット占領を照らし出すよう活動しよう!」

 「北京に出かけ、オリンピックを契機に北京政府がチベット弾圧をやめるよう訴えよう! 抗議の行進でもよいし、集会でもよいし、自転車競走でもよいし、なにかイベントを催して、中国当局の人権抑圧に抗議しよう!」

 オリンピック開催時に北京にいって、抗議の活動を展開することを具体的に呼びかけているのだ。国際社会に向けて中国政府への大衆抗議行動の「檄」を飛ばしているわけだ。

 しかも北京オリンピックという特別な行事を利用して、ということである。ICTの声明文はただし、開会式へのVIPの出席には反対しても、もはや北京オリンピック自体をボイコットはせず、逆に利用して、中国の人権弾圧を大々的に非難する好機とする、と述べていた。

(つづく)

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