雑誌VOICE最新号の古森論文の紹介を続けます。

 今回の分は新彊ウイグル自治区に住むウイグル人たちがかねての中国政府への不満を北京五輪という好機を得て、どのように表明し、訴えていくのか、です。

 ウイグル人たちによる北京政府への抗議活動は筋金入りとされています。

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中国政府に対しチベット人と似た立場にあるのは、ウイグル人たちだといえる。
 
 中国領内の新彊ウイグル自治区では従来から自治の拡大から独立への要求まで中国政府への反発の動きが強かった。

 ウイグル人たちはチベット人とは異なり、イスラム教徒であり、戦闘的な傾向が強い。

 中国の外にいるウイグル人たちとの連帯も堅固である。

この在外の全世界のウイグル人たちをまとめる組織として「世界ウイグル会議」(WUC)というのがある。

 その活動の主目的は中国政府に統治されたウイグル人たちに対する強制的同化政策に反対し、その人権を擁護することだとされる。

 だが実際にはウイグル民族の独立志向はきわめて強い。

 WUCは本部をドイツにおくが、アメリカでも活動は盛んで、いま会長を務めるラビア・カディール女史はワシントン地区に在住する。

 WUCも北京オリンピックに対し強い関心を向けている。

 昨年12月にはカディール会長の名で「2008年北京オリンピックに関する公開状」を発表し、中国の人権問題と北京オリンピック開催とを関連づけて、非難や警告に近い言明を出した。


「中国政府が人権の改善などを条件に北京オリンピックの開催を引き受けてからもう7年近くが過ぎたが、中国の人権状況は少しも改善されていない。ウイグル人への弾圧は逆に強まり、『反テロ闘争』の口実の下につい最近もウイグル人6人を逮捕して、死刑や終身刑の極刑に処した。この行為自体がオリンピックの原則や国際法の違反となる。全世界の各国に中国政府糾弾を訴えたい」

「世界ウイグル議会」はカディール会長のこうした声明と同時に、中国政府のオリンピック主催自体を非難し、各国指導者が開会式に出ないよう広範に訴えている。

なにしろウイグル民族と中国政府との対立の根は深い。

 ウイグル側では最近は中国政府が若いウイグル女性合計40万人を海岸部の大都市に強制移住させ、工場労働や漢族男性との結婚をさせていると非難する。

 ちなみにカディール女史も中国では6年以上も投獄された経歴がある。

 だからウイグル側が北京オリンピックを年来の抗議に最大限、利用しようと意図するのは、いわば自然なのだ。

(つづく)
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