VOICE誌掲載の北京オリンピックに関する古森論文の紹介を続けます。
今回分は国際的な人権擁護団体の北京オリンピックに対する動きについてです。


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一方、欧米などの国際社会の側にはっきり基盤をおく組織の動向も注視される。

国際人権擁護組織として知名度の高い「アムネスティ・インターナショナル」(AI)も北京オリンピックの焦点をしぼっての活動を強化している。

 なにしろグローバルの規模で長年、活動してきた組織である。

 前記のウイグル人の指導者のカディール女史を日本に招待し、全国十都市で講演会を開き、中国当局のウイグル弾圧の実態を語らせたのも、このAIの日本支部だった。

ただしAIは北京オリンピックのボイコットは訴えず、むしろ中国当局がその開催のために約束した人権の改善策などをどの程度、とるかを厳密に監視するという姿勢をとっている。

 今年四月、AIは中国当局のチベット弾圧に抗議するとともに、北京地域では中国側がオリンピックの開催のために逆に人権侵害を悪化させているという趣旨の報告書を公表した。

同報告書によれば、中国当局はオリンピック施設の建設のために強制収容した土地の使用者や、強制移住させた住民の抗議に対し厳しい措置を取り、オリンピック開催の際に抗議行動を起こしそうな民主主義活動家たちを事前に拘束するなどしているという。

 オリンピック前の「クリーンアップ作戦」であり、そのために住民らの人権がまた踏みにじられる、というのである。

「人権ウォッチ」(HRW)という組織も国際的な人権擁護団体として北京オリンピックを活動目標にすえている。

 HRWの公式声明は同オリンピックのボイコット自体は訴えないものの、フランスのサルコジ大統領が示唆した開会式の欠席を各国首脳に促していくと宣言している。

 そして全世界の視線がいやでも中国に集中することをうまく利用して、中国当局による従来の人権弾圧への国際的非難を高め、さらに中国当局にその種の弾圧を緩和させる圧力を高めるとも言明している。

 HRWはとくにオリンピックを機に「中国国内での国際人権団体による人権状況の視察」を中国当局に認めさせるというキャンペーンの開始をも宣言した。

 そのためには国際オリンピック委員会のロゲ会長や中国の温家宝首相にメッセージを送ることを呼びかけている。


(つづく)
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