米国大統領選挙の共和党ジョン・マケイン候補を支援するペンシルベニア州での9日の集会で地元の代表がこんな発言をした。
「バラク・フセイン・オバマが米国大統領になったときのことを考えてみよう!」
当のマケイン陣営は即座に「われわれはこうした不適切な言辞は認めない」という声明を出した。
フセインというのは民主党オバマ候補の正式なミドルネームである。
だがそのフセインという名を口にすることは「不適切」だというのだ。
フセインという名がいまの米国では好イメージではないイスラムを連想させるため、その指摘はオバマ候補への不当な個人攻撃とされる、という配慮からだろう。
実際に民主党側や民主党支持の大手メディアは「フセイン」の名を口にした側を「人種差別」「汚いののしり」として袋叩きにする。
オバマ氏のミドルネームは触れてはならない聖域、あるいは禁忌となっているのだ。
だが客観的にみて、大統領候補の実名の一部を口にしてはならないというのは奇妙な話である。
オバマ候補に関してはこうしたタブーの領域が少なくない。
とくに大手メディアの自主規制的な聖域が多いようにみえる。
オバマ氏のケニア人の祖父は敬虔(けいけん)なイスラム教徒でフセインという名前だった。
父親もケニアではイスラム教徒とみなされていた。
オバマ氏の母が再婚したインドネシア人の継父もイスラム信者だった。
オバマ氏が6歳からの4年間を過ごしたジャカルタでもうちの2年は公立学校に通い、イスラム色のついた教育を受けたという記録もある。
イスラム教自体は誇るに値する宗教だろう。
だがオバマ氏自身は自らキリスト教徒だと強調し、オバマ陣営はイスラムとの間接のきずなさえも否定する。
そしてなによりもニューヨーク・タイムズに代表される民主党傾斜の大手メディアが、イスラムの影がにじむオバマ氏の出自については不思議なほど報じないのだ。
同じニューヨーク・タイムズがマケイン氏の米国外パナマの米軍基地での出生を長文記事で批判的に報じたのとは対照的だった。
オバマ氏の生まれや育ちについては「オバマの国」という新刊書が詳しい。
著者はハーバード大学で博士号を得た政治学者ジェローム・コーシ氏、保守派だが共和党員ではない。
同書はオバマ氏のケニア、インドネシア、イスラム、そして左翼や黒人の過激派とのかかわりの記録を詳細に報告する。
衝撃的な軌跡も多いのだが、大手メディアからはいずれも事実の検証の前に「個人攻撃」として排されてきたたぐいの情報である。
オバマ氏と極左テロ組織「ウェザーマン」の指導者だったウィリアム・エアーズ、バーナディン・ドーン夫妻との長年のつながりも、大手メディアでは聖域にみえる。
一応の報道はしても、ごく表面的なのだ。
反体制の同組織は1970年代に国防総省や議会、銀行などを爆破し、死者まで出した。
エアーズ夫妻は80年代まで地下に潜伏した。
その間、捜査側の証拠取得に不備があり、夫妻は自由の身となった。
だが一連の犯行は認め、2001年にはエアーズ氏は「まったく後悔しておらず、もっと爆破すればよかった」と述べた。
同氏は社会復帰後にイリノイ大学の教授となり、95年からオバマ氏と共同で教育財団の運営にあたる一方、オバマ氏を州議員選で支援する。
今回の大統領選でオバマ氏はエアーズ氏との関係を問われ、当初は「近所の住民だった」とだけ答えていた。
だが大手メディアはこのへんの言動の是非や疑惑を追及することはない。
その寛容な姿勢は共和党のサラ・ペイリン副大統領候補個人に対する攻撃的な大規模調査報道とはコントラストを描く。
だから共和党側は「もしマケイン候補が妊娠中絶をする診療所を爆破した犯人と長年の親交があれば、大手メディアは大々的な調査報道を展開し、糾弾するだろうに」と憤るのである。
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コメント
コメント一覧 (22)
オバマ氏は仮に大統領となったとしても、この手のスキャンダルにまみれて早々にカリスマ性を剥ぎ取られ、対外強行政策やバラマキ内政など、確実にアメリカの体力を殺ぐ政治にシフトしていく可能性がありますね。
アメリカの大きな戦争というのは民主党が起こし共和党が収める。
そして今度の大恐慌。
大統領はフセインオバマになりそう。
そして強烈な内需のカンフル注射が必要。
北朝鮮には副大統領候補のバイデンが後ろ盾のヒルが、
このドサクサにテロリスト指定国解除をこそこそと密約してきた。
そしてフセインオバマの登場。
早急にどでかい内需喚起が必要。
ドデカイ内需ってナァに。
そりゃ戦争と古今東西決まってるだろう。
金ちゃんとはお手手ニギニギしてきて
さあ ペルシャと対戦だぁ!!
今朝、本紙で拝見しました。
日本でも状況は似てますね。小沢の不動産スキャンダル報じているのはごく一部だけですから。
しかしアメリカ国民はマスコミ報道を自分なりに判断する賢さがあるだけ、まだましだと思います。
自民党や共和党の候補だったら、揚げ足取りとも取れる失言を大きく報じるくせに、隠しようのない事実を報じることが個人攻撃、人種差別になるというのはどう考えてもおかしな話です。
そんなこと報じたとして何が問題なのでしょう?
後ろめたいことが無ければ、オバマ候補が明確に否定すればよいだけのことで、マスコミが自主規制すべき事ではないでしょう。
それは日本においてはもっと顕著なのが問題なのですけどね。
だから、マスゴミと言われるのですけど。
オバマのスピーチを聞いていると、大企業やその経営者を嫌悪したりする意見は日本の民主党や共産党が思い浮かびます。NPOは日本では玉石混淆ですし、教育関係者の思想偏向もよく知られています。
清廉潔白なイメージで売ってるように見えるのですが、叩けばいくらでもホコリが出てきそうですね。
選挙キャンペーン中の「中傷合戦」には大統領に就任したあとのスキャンダル・ヘッジの意義があるというのは、きわめて適切かる鋭い指摘だと思いました。
オバマ氏のいわゆる「カリスマ性」というのは、すでにほとんど剥がれてしまったようにみえます。卓越した弁舌は相変わらずですが。
「ルート66」というのは確かに優れたレポートでしたね。
いまロサンゼルスに駐在する松尾記者の報道でした。
マケインが当選すれば、日本には「同盟国としての応分の安全保障の負担」を求めてくるだろうし、オバマ当選ならば、ねじれた日本軽視の展望でしょうか。
いずれの場合も日本は自主的な安保政策、安保努力を迫られるわけで、悪くないかも知れませんね。
それでもなお「国連に任せばよい」とか「憲法第9条があるから」なんていう声が指導層から出てきたら、タイヘンです。
そういえば、アフガニスタンでボランティアを殺された「井戸を掘る」政治集団の代表は「われわれは憲法9条に守られているから安全だ」と公言していたことで有名です。
私はアメリカの中傷合戦を品がないなと思っています。日本のような奥ゆかしさがないですね。しかし世界最高の権力を4年の長きにわたって担うわけですから、あらゆる情報が公開され議論されるのは悪いことではないように思います。
ひるがえって日本の政府自民党はここ2年間に渡り、スキャンダルに次ぐスキャンダルでもう袋叩き状態です。逆に民主党は、小沢不動産もほとんど話題にならず、永田ガセメールを最後に事実上スキャンダルから完全解放状態です。
たとえば自民党は、民主党の長妻某のスキャンダルを徹底的に暴き出し、メディアにリークするくらいが、良くも悪くも(悪くも悪くも?)政治における権力闘争だろうと個人的には感じています。
今の自民党には国家権力を掌握しているものの迫力・希薄・執念があまりに希薄ですね。
実際に民主党側や民主党支持の大手メディアは「フセイン」の名を口にした側を「人種差別」「汚いののしり」として袋叩きにする。
アメリカ大統領選戦の裏に何か潜んでいるかを解りませんが、それだけで個人攻撃されてしまうオバマ氏に同情を覚えざる得ません。
やはり一部分の人は、白人以外の人種に大統領になってほしくないのでしょうか?
>オバマ氏自身は自らキリスト教徒だと強調し、オバマ陣営はイスラムとの間接のきずなさえも否定する。
Why Is Obama's Middle Name Taboo?(2008.02.28 Time)
http://www.time.com/time/politics/article/0,8599,1718255,00.html
オバマ候補のChange(改革)を訴えるよりもミドルネームのHusseinの由来を正面から説明した方がオバマ氏にとっては有利ではないかと。
Taboo Topics of Barack “Middle Name” Obama
http://xomba.com/taboo_topics_of_barack_middle_name_obama
個人ブログの、オバマ氏の政治的意見のようです。詳しい内容から個人ブログでも‘ミドルネーム’関心度の高さがうかがえます。
隠しようのない事実を述べることが個人攻撃、人種差別とされてしまう。
本当にそんな現実なのです。
アメリカのジャーナリズムの調査報道なんて、もうちゃんちゃらおかしいと思います。
共和党側はJournalism died! と宣言し、ニューヨーク・タイムズは「150%のオバマ支援偏向報道だ」と断じています。
ニューヨーク・オバマ・タイムズという言葉も聞きました。
おもしろいサイトの紹介をありがとうございました。
いまの自民党のよくも悪くも、国家に関する意識の希薄さ、ご指摘のとおりだと思います。
あなたの日米両国の現状分析はおもしろいですね。
日本の場合は確かに、やけっぱちになっている人たちが多いように思えます。
昨今の情勢を見る限り、11月の選挙ではオバマ氏勝利の公算が極めて大きくなっている中、同氏への攻撃を記事にしたいとのご心中はわかりますが、オバマ批判を引用するなら、せめてもう少し信頼度が高いものを使われてはいかがでしょう。
Obama Nationの内容は、ほぼすべてがを欠いているとの指摘が出版と同時に各方面から出されているうえ、著者のCosi氏はこれまで、
「ブッシュ大統領はカナダ、メキシコを統合してNorth American Unionを作ろうとしている」「石油は無尽蔵にある資源」等々の意見を発表し、
マケイン氏が党内宗教原理主義派の強い反発を受けていた今年3月には、
「アルカーイダの関連団体がマケインを支持」
http://wnd.com/index.php?pageId=57678
ということを書くなど、共和党内でもまったく信頼を置かれていない人物であること、本の版元はチェイニー副大統領の元補佐官であること、それにも関わらずお嫌いなNew York Timesのベストセラーで初登場1位になったことなどは、古森さんなら百も承知でいらっしゃいますよね。
彼や、Rush Limbaughのような、知性や情報源を欠くアジテーター的人物を賞賛し、産経新聞上で記事に書くことは、産経新聞や古森さん自身の声価を下げることにしかつながらないとともに、アメリカの状況をまったく知らない方が多いと見受けられる本ブログの読者をミスリードしかねないのではないでしょうか。
ご参考までに、産経のサイトに掲載されていた、Obama Nationに関する客観的と思われる批評記事をリンクしておきます。
オバマの大統領は絶対に阻止せねばならない…「オバマ国家-左翼政治と自己カルト」
http://sankei.jp.msn.com/world/america/081004/amr0810041025008-n2.htm
ご丁寧なコメントをありがとうございます。
しかしあなたが客観的だとして提示される情報が実は主観的でもありえます。
リムボウを知性や情報源に欠くアジテーターと決め付けるのは、リベラル派のプロパガンダと同じですね。一度、じっくり彼の放送を聞かれたら、いかがでしょう。
そもそも「攻撃を記事にしたいとのご心中」と、私の心理分析を一方的になさっての書き出しでは、これまたきわめて主観的なコメントとして、受け止めさせていただきました。
袋叩きにされるのは、オバマ候補ではなく、オバマ候補の「フセイン」といミドルネームを口にした側ですよ。
オバマ候補は北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除することを「適切な前進」として賛同していますね。
日本側でもこの点をもっと重視して、受け止めるべきだと思いませんか。
ブラッドリー効果についてのお知らせ、ありがとうございます。
アメリカではかなり広範に伝えられ、論じられている現象ですが、今回はどうなるか、とくに注視されていますね。