講道館発行の雑誌『柔道』9月号に私が書いた記事の紹介をさらに続けます。

 

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ワシントン柔道クラブのもう一つの大きな特徴はアメリカ以外の諸国出身の輝ける戦歴を持つ選手たちが会員となっていることである。

 

なにしろ政治の中心だから政治がらみでアメリカに移住してきた人たちがこの地区には多い。

 

移民、難民あるいは亡命者としてこの国にやってきて、アメリカの国籍や永住権を取得した人が首都周辺には多数いる。

 

ワシントン柔道クラブでも会員全体の三分の一ほどはそうした外国出身の選手たちである。

 

 ペルーで全国選手権を取ったことのある三兄弟、ルーマニア代表として欧州選手権三位となった選手、アルジェリアの全国選手権保持者、ギリシャ出身の欧州選手権準優勝者、モンゴルのオリンピック代表選手、アゼルバイジャンの全国級選手、ウクライナでつい最近、全国選手権に出たという青年、そしてイタリアの女子の中量級チャンピオンなど、みなそれぞれの国の柔道で傑出していた人たちがアメリカに居ついて、このクラブで柔道を続けているのだ。

 

 この種類の選手たちはいまもなかなか強く、ときにはアメリカでの大会で上位に入賞する。

 

 外国出身でアメリカにきて初めてこのクラブで柔道を学んだという人たちもいる。

 

 韓国系の青年たち五、六人がまとまって通ってくるし、ベトナム系の若者たちもいる。

 

永住ではない外国人たちも参加してくる。

 

フランスやコンゴの外交官たちはいずれも在ワシントンの自国大使館勤務である。

 

首都郊外には国立衛生研究所(NIH)という医学の基礎研究では世界最大の規模を誇る施設があり、各国からの若手の医師や医学研究者が集まっているが、そのなかにも元柔道選手がいて、ワシントン柔道クラブに通ってくる。

 

 代表的なのは全フランスでも上位にランクされたセディッキ・ナジールという選手で、本職は胃に宿るピロリ菌の専門研究者だという。

 

 このようにワシントン柔道クラブではアメリカ人に関しては社会の広範な職業分野からの参加がきわだつ一方、諸外国出身の選手だった男女も実に多数が顔をそろえるのである。

 

 これほど多様多彩な人間が集まってくるのも超大国の首都だからかもしれない。

 

 と同時に後述するように、このクラブの声価が最近、アメリカ柔道界でとみにあがっていることも理由だろう。

 

(つづく)

 

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