ブッシュ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」指定から外したことについては、これまでにもこの場で論じてきました。

 

アメリカ側の動きに関して重要な点の一つは、ブッシュ政権の今回の措置に対して、共和党が反対、民主党が賛成という倒錯の構図です。

 

民主党側ではバラク・オバマ大統領候補もこの指定解除を「適切な対応」と評して、歓迎しました。共和党のジョン・マケイン候補は反対を表明しました。

 

このへんのアメリカ側の複雑な反応については以下のサイトで詳しく報告しました。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/86/ 

 

 

しかし民主党側の北朝鮮問題に対する態度をさらによくみると、オバマ候補の言明が示唆するよりもずっと宥和的、ソフトであることがわかります。

 

その民主党側の政策を知る手がかりとしては、民主党系の二人の専門家がつい3日前に発表した政策論文が有益です。K・A・ナムクン、レオン・シガル両氏は連名で10月19日のワシントン・タイムズに「新しい進路を設定する」という題の論文を発表しました。両氏はいずれも民主党支持で、朝鮮半島や東アジア安保問題を専門とする学者として民主党議員の外交顧問などを務めてきました。

 

この論文は以下のような書き出しでした。

「プルトニウム計画の無能力化を再開し、プルトニウム生産の検証を認め、その代償にテロ支援国家の指定の解除を得るという北朝鮮の同意は、歓迎すべきニュースである」

 

そして同論文は驚くべきことに、アメリカが北朝鮮を正常な国にし、国際社会にも参加させるために、とにかく国交を樹立し、経済援助をも与える「包括的な新関係の確立」を試みるべきだと主張しています。米朝間の「相互の信頼」を築くことが大切だともいうのです。

 

同論文はそのプロセスには他の諸国との協力も必要だとして、中国、韓国、国連の名をあげますが、日本に関しては日本人拉致はもちろんのこと日本自体に対する言及もゼロでした。

 

同論文の要旨は次のようでした。

 

(1)北朝鮮はアメリカから敵対的な態度をとられているために核兵器を保有したいのであり、アメリカがその態度を捨てれば、北側も核兵器開発計画を放棄するだろう。

 

(2)アメリカは北朝鮮に核兵器を放棄させるために韓国や中国を含めて朝鮮半島の平和条約を結ぶ。

 

(3)アメリカは北朝鮮が核兵器施設の破棄や検証を受け入れ、拡散停止の検証や国連との人権問題協議を受け入れることを条件に北朝鮮との国交を樹立する。

 

(4)アメリカは北朝鮮の核放棄などを条件に経済、金融、外交などの面での援助を与え、国際社会の正常な一員になるよう奨励する。

 

(5)アメリカはその過程で北朝鮮が発電所や原子炉を新たに建設することへの支援を実施する。

 

要するに北朝鮮の善意を信じ、アメリカ側がまず国交樹立をも含む北朝鮮の望む友好措置を次々にとる、という骨子なのです。

 

さて、こうした宥和政策が日本にとって、とくに日本の拉致問題の解決にとって、どんな影響を及ぼすか、答えは明白のように思えます。