雑誌『SAPIO』11月12日号に私の論文が掲載されました。

「日米同盟をどうする」という総合タイトルのなかのいくつかの論文の一つとして、です。

ブッシュ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」指定から排したことが日米同盟にどのような影響を与えるのか、について書いています。

その内容を何回かに分けて紹介します。

 

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アメリカ政府は十月十一日、自国の国務省が作成している「テロリズム支援国家」リストからついに北朝鮮を排除する措置を公式に発表した。

 

「ついに」とあえて記すのは、ブッシュ政権が北朝鮮が核兵器開発問題に関して一定の条件さえ示せば、もう日本人拉致事件の解決への前進がなくても、テロ支援国家指定から解除するという方針を正式に示してから四カ月もの時間が経過していたからだ。

 

ブッシュ政権のこの北朝鮮テロ支援国家指定解除というのは、吟味すればするほど奇々怪々な措置であることがわかる。

 

まず本来のブッシュ政権の外交政策や安保政策を支持してきた共和党側、保守陣営側がこぞって反対するのだ。

 

その一方、ブッシュ政権の対外政策を全面的に否定してきた民主党系リベラル勢力が熱をこめて賛成するのである。

 

共和党の大統領候補ジョン・マケイン上院議員が懸念を表明して反対し、議会下院の共和党有力者イリアナ・ロスレイティネン議員が厳しく批判するのとは対照的に、ブッシュ政権の対外戦略を根底から叩いてきた民主党大統領候補のバラク・オバマ上院議員がなんとその「指定解除」に賛意を表明するのだ。

 

「指定解除」はアメリカが北朝鮮との間で成立させたという核施設の検証に関する枠組み合意に基づいている。

 

ブッシュ政権はこの合意を理由に北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除することを決めたというのだ。

 

ところがこの「検証合意」が抜け穴だらけである。検証のための査察の対象を決めるに北朝鮮の一方的な申告に依存せねばならず、北朝鮮への「信頼」が大前提となる。

 

そのうえにブッシュ政権は自ら公言した立場をもあっというまに変転させてしまった。

 

北朝鮮に対して、またまた大きな譲歩をしたのだ。

 

つい二、三週間ほど前までは、ブッシュ政権は北朝鮮に対し、核施設の査察に関する「議定書」を作成して提出することを求めていた。

 

その議定書の内容を検討して、一応の満足が得られれば、初めて「テロ支援国家」の指定を解除すると言明していたのだ。

 

ところが今回はその「議定書」の作成も提出もないまま、北朝鮮が「近い将来」その議定書を六カ国協議に提出するという言明だけで米側はテロ支援の指定を解除してしまったのだ。

 

この措置は北朝鮮側の「まず指定解除を」という要求に完全に屈して、大幅な譲歩をした結果だった。

 

しかも将来の核施設の検証、査察は「北朝鮮の申告により相互の合意に基づく」対象や手法だとされている。

 

これまた北側の単なる言葉に頼るという安易な対応である。

 

金正日総書記の言葉に頼ることがいかに虚しく、危険な結果をもたらすかはアメリカも日本も、もうさんざんに身にしみて学習してきたはずだ。

  

(つづく)

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