SAPIOに載った古森論文の紹介の続き(2)です。

 

ブッシュ政権が北朝鮮を「テロ支援国家」の指定から解除したことについてのリポートです。

 

この部分ではオバマ陣営がこの解除を支持しており、こんご日米同盟への不吉な影を投射しているといえそうなことを報告しています。

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しかしブッシュ政権による今回の措置が民主党オバマ候補の賛同を得ている点は、きわめて重要である。

 

オバマ候補は北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除することを「適切な対応」だと歓迎した。

 

「北朝鮮が堅固な査察の受け入れを拒んだ場合は制裁を再稼動させるべきだ」と述べてはいるが、オバマ候補の言明は基本として、ブッシュ政権の国務省主導の宥和路線に認知や激励を与えている。そこには日本の拉致問題解決への影響についての言及は一言もない。

 

こうした姿勢はオバマ氏がかねてから北朝鮮の核問題の交渉には「なんの前提条件もつけずに金正日総書記と一対一で会談する」と述べている方針とも合致する。

 

要するに相手がいかに非道で無法な言動をとっていても、とにかく対等な相手として話し合い、交渉をするというソフト路線なのだ。

 

この路線はいまのブッシュ政権のコンドリーザ・ライス国務長官、クリス・ヒルズ国務次官補の妥協路線にも似ている。

 

北朝鮮を「悪の枢軸」と断じ、強固な対応を唱えた第一期のブッシュ政権の姿勢とはあまりにかけ離れてしまった。

 

北朝鮮とのいまの交渉の主役を演じるヒルズ次官補は実はオバマ陣営とも密接な接触がある。

 

これはアメリカのこんごの対北朝鮮政策を読むうえでも、非常に重要な点である。

 

朝鮮半島問題に詳しい共和党議会筋は次のようなことを明かした。

 

「北朝鮮の核問題への対応では国務省の宥和路線の主役のクリス・ヒルズ次官補は二つのルートで民主党筋、そしてオバマ陣営とつながっている。第一は副大統領候補ジョセフ・バイデン上院議員の外交問題補佐官フランク・ジャヌージ氏、第二はクリントン政権で国連大使などを務めたリチャード・ホルブルック氏だ。ジャヌージ、ホルブルック両氏とも年来、中国や北朝鮮に対しては軟弱な姿勢をとり、『話し合えば問題は解決できる』という基本思考を保ってきたといえる。その思考には同盟国の日本の国民が北朝鮮に拉致されたままの状態を核問題と同様に重視して、日本の立場に配慮するという要素はまったくないといえる」

 

ジャヌージ氏もホルブルック氏もいまはオバマ陣営の外交政策顧問である。

 

とくにジャヌージ氏は同陣営のアジア政策立案の枢要な立場にある。

 

ホルブルック氏はかねてから独自の北朝鮮とのきずなを持つとされる。

 

オバマ陣営がこうした立場の外交専門家の言を採用していれば、今回のブッシュ政権の北朝鮮テロ支援国家の指定解除にも当然、賛成ということになる。

 

つまりはブッシュ政権を代表して北朝鮮と交渉するはずのヒルズ国務次官補にとってはこうした民主党側勢力がきわめて強力な支援役なのだ。

 

この動きはもしオバマ政権が誕生した場合を想定すると、日本にとっては非常に不吉な影を広げる。

 

(つづく)

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