モラロジー研究所所報11月号に掲載された古森義久の講演録の紹介を続けます。あと1回分で完結します。

 

今回の分は平和を守る具体的な方法について、国際的にはどんな概念や政策が確立されているのか、などを論じました。

 

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「抑止」と「均衡」が

平和を守る

 

 平和を守るために今の国際社会で一般的に採用されている概念は、「抑止」、そして「均衡」ということです。

 戦争が始まるとき、その国はいったい何を考えてこれを決めるのでしょうか。

 

 戦争そのものが好き」という国家はまずありえません。

 

 戦争自体が大好きという人間集団が現代社会に存在しないのは自明だともいえましょう。

 

 ですから、現実に起きる武力衝突は、例えば相手の国との間で領土紛争があってどうしても話し合いがつかず、このまま放っておくと自分たちの領土が奪われてしまうという場合に、最後の手段として戦う、というのが実情でしょう。

 経済的な利害関係についても、話し合いで何とか解決しようというのが今の国際社会の常識ですが、話し合えば話し合うほど対立点が鮮明になって、対立が険しくなっていくということが実際にはあります。

 

 自国にとっての死活的な経済利益を守るためには、もう武力でその利益を死守する以外に方法がない、という場合もあるでしょう。そんなときに戦争という最後の手段に走る国家や政府もあるわけです。

 

 そういう国家や政府、さらには国民は、自国民の血を流しても、国際社会から非難されても、戦争をすることによって守らねばならない対象があると判断することになります。

 

 つまり戦争によって保たれる資産や得られる利益の方が戦争によって失われる資産や損害よりも大きいと判断したときに、軍事力を行使するという決断をしていくのでしょう。

 軍事力は、実際に使わなくても、これを見せることによって相手を威嚇し、屈服させるという効用もあります。

 

 つまり戦争を防ぎ、平和を保つ方法として、今の国際社会では、多くの国は戦争をしかけてくるかも知れない他の国家に対し、戦争をすることによって想定されるマイナスを大きく見せているのです。

 

 もしこちらに軍事攻撃をかければ、そちらも甚大な被害を受けるぞという見通しを確実にしておくのです。

 

 そして実際に攻撃をかけた国に対して深刻な打撃を加えられるだけの能力を保っておきます。

 

「もし攻めてくれば、あなた方が勝つかもしれないけれども、あなた方も非常に大きなマイナスを負いますよ」という意思を示しておくのです。

 

「いやあなた側が敗北するかもしれない」というメッセージをこちらの軍事態勢とともに明示するのです。

 

 そうすれば、戦争を考えた側はその自国側の損失、マイナスが非常に大きいという見通しを得れば、戦争はしない、ということになります。

 

 この効果が「抑止」です。

 

 例えば日米安全保障体制のもとでは、アメリカを相手にして戦う覚悟がなければ日本を攻撃できません。

 

 横須賀や沖縄、佐世保などに米軍がいれば、アメリカは自動的に巻き込まれて日本を守る形で戦うことになりますから、これが抑止になっているのです。

 日米同盟の抑止の効果だということになります。

 

(つづく)

 

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