中国の国家ファンドの暗躍をアメリカが警戒しているという話を産経新聞のコラムで書きました。

 

 

【あめりかノート】古森義久 中国ファンド 新たな脅威

 

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 米国での中国研究は官民とも日本より広く深く、鋭利にみえる。

 

 米中両国間の経済関係が米国の国家安全保障に与える影響を調査し、議会と政府に政策勧告をすることを任務とする同委員会が2008年度の年次報告をつい数日前に公表した。

 

 そのなかでとくに強い警告を発したのが中国の主権国家資産(ソブリン・ウェルス)ファンド(SWF)だった。

 

 「中国の国家機構そのものが一般の金融機関を装い、米国の国家安全保障を侵す動きに出ることに重大な懸念を抱いています」

 

 同調査委員会のラリー・ウォーツェル委員長は強調していた。

 

 中国のSWFというのは、米国からみれば国際金融の場に新たに登場してきた危険なモンスターのような存在である。

 

 日本にも当然ながらその手は伸びている。

 

 金融の危機が国家や国民のあり方を根幹から動かす現実をだれもが皮膚で感じる今日このごろだから、国際金融の規範を破る中国の策動には米国の専門家でなくても、警戒を覚えさせられるだろう。

 

 SWFというのは、政府の資金を使う国営の投資ファンドやその機関のことである。

 

 実は中国が初めてではなく、クウェートやノルウェー、ブルネイ、ロシアなど20ほどの国家が以前から機能させてきた。

 

 どの国も石油のような特定産品の輸出で得た政府資金を投資に回すだけだった。

 

 だから日本では、SWFは「政府系ファンド」というのがほぼ定訳となった。

 

 だが、昨年9月に発足した中国投資有限責任公司(CIC)はSWFのなかでも特殊だった。

 

 米国の同調査委員会の報告によると、CICは、中国共産党と一体の国家最高権力機関である国務院に直結する。

 

 2兆ドルを超える世界最大の保有外貨を投資に自由に使い、純粋な金融上の目的よりも政治や安保など中国の国家対外戦略を促進するのだという。

 

 となると、「政府系ファンド」という表現も核心を突かなくなる。

 

 同報告は、中国のもう一つの陰のSWFとして、国家外為管理局(SAFE)の存在を指摘した。

 

 この組織は外貨を管理する国家機関そのもので、CICを動かし、ときには競合しながら巨額の対外投資を実行する。

 

 同報告は、この組織が利益を目指す金融の原理ではなく、政治や外交上の目的で資金を出した実例としてコスタリカをあげていた。

 

 中国のSAFEは今年1月、コスタリカの政府債合計3億ドルを通常より低い金利で購入する措置をとったが、その代償としてコスタリカ政府が60年以上も保ってきた台湾との外交関係を断絶するという秘密の合意があったという。

 

 つまり中国は国家資金による「金融」を外交目的に使ったのだ。

 

 この種の国家ファンドはそもそも民間資金とはまるで異なる原理で動くから市場機能をゆがめてしまう。

 

 そのうえに金融市場が開かれた米国では金融機関から軍事、ハイテクなどの大企業にまでもこの種の中国の「政治資金」が流れこみ、組織が内部から侵食されかねない。

 

 まさに米国の国家安全保障が脅かされるというわけだ。

 

 日本にとっても、対策を講じるべき新たな金融脅威といえるだろう。

 

(ワシントン駐在編集特別委員)

 

 

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