オバマ次期アメリカ大統領について書いた雑誌論文の紹介を続けます。
なお先日のエントリーで提起した中国の国家ファンドの問題点についは以下のサイトに書きました。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/89/
とにかくオバマ氏は大統領選挙にみごとな勝利を飾った。
民主主義における選挙という国民の審判の結果は尊重されねばならない。
アメリカ国民の多数派は明らかにオバマ新大統領の下での「変革」や「希望」という政治路線を選び、信を託したのである。
しかしなおオバマ氏をあえて支持はしなかった層には、オバマ新政権の統治に対し、「不安だ」「怖い」「心配だ」という否定的な反応も広範に存在する。
マケイン氏に票を投じた約五千七百万人のアメリカ国民の間に広がるそうした不安や懸念を無視することはできない。
そのような不安の原因はオバマ氏が政治家としてあまりに未知であるという部分と、オバマ氏が過去に示してきた特異な軌跡という部分の両方に帰せられるようだ。
そもそもバラク・フセイン・オバマとはどんな人物なのか。
政治リーダーとしてはどんな思想を信奉し、どのような政策を実践しようというのか。
このへんの部分を真剣に考えると、オバマという人物には思わず身のすくむほど未知の領域が多いことにすぐ気がつく。
影の部分が多いことをも認識させられる。
アメリカの主要報道機関である大手の新聞やテレビが今回の大統領選挙では極端なほど民主党に有利な報道を展開し、とくにオバマ候補への支持を一貫して基調としてきた。
たとえば、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロスアンジェルス・タイムズという大手新聞、そしてCBS,NBC,ABCの三大テレビネットワーク、さらにはCNNテレビは、単に社説や評論のコメントでオバマ候補に有利な点を強調し、マケイン候補には不利な材料を大きく伝えてきた。
それだけでなく、本来なら中立で客観的なはずのニュース報道でも民主党側への傾斜を顕著にみせた。
その傾斜は明らかに「偏向」と呼べる次元だった。
だからオバマ氏に関する否定的な情報は大手メディアではなかなか報じられなかった。
報道されても、ごく小さな扱いが多かった。
大きく、詳しく報じられなければ、一般国民は知らないままとなる。
結果としてオバマ氏に関する報道では同氏のプラスで前向きの側面だけがことさら拡大されることが多かった。
大統領選挙のキャンペーンでマイナスとなりうるオバマ氏の側面はわきに押しのけられるという場合が多かった。
つまり影の領域に埋められ、隠されるというケースである。
暗渠という表現も適切だろう。禁忌とかタブーと呼んでもよい。
たとえば、オバマ氏「フセイン」というミドルネームはイスラム教やイラクの独裁者のサダム・フセインを連想させるから、表に出してはならない、という過剰なまでの自粛がその実例だったといえる。
(つづく)
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コメント
コメント一覧 (8)
アメリカ歴代大統領は当初はみな未知数というのはそのとおりですが、オバマ氏はとくに国政レベルでの活動が無に等しく、未知度が高い、ということでしょうか。
その一方、閣僚や補佐官の任命ぶりをみると、「変革」どころか第三次クリントン政権のようです。未知ではなく既知の人材に依存しています。
とにかくもう少し様子をみたいところです。
クリントン政権は1993年1月に発足し、最初の統治がミス続きとなり、
その反動として94年の中間選挙では上下両院や知事選で共和党保守派に大勝利を許しました。ギンギリッチ氏が率いた「保守革命」でした。
逆に2005年に第二期目の政権をスタートさせたブッシュ大統領は翌年11月の中間選挙で議会の共和党大敗北という目にあっています。
振り子が左右に振れるのも、民主主義の健全性なのでしょうか。
あまりひどく振れると、他が迷惑しますね。
きちんと拝読しましたよ。
なるほど、なるほど、という感じです。
これからのオバマ・ウォッチが私も楽しみです。
オバマ候補の”逆人種差別”が明らかになった。
黒人投票者のなんと99%がオバマ候補に投票している。
オバマ・マケインの票差850万票の大半は黒人の投票動向による可能性がある。
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今回の大統領選は記録的な投票率となると予測されていたが、そうはならなかった。投票率は62%。前回の大統領選とほぼ同じ数字だった。民主党支持の投票者数は確かに増えたが、その分共和党支持の投票者数が減ったため、全体の投票率が伸び悩んだ。
では、どのような人たちがオバマに票を投じたのだろうか。投票者の内訳は以下の通りである。
【無党派】 勝敗のカギを握ると言われた無党派層は、結局真っ二つに割れ、どちらの陣営にも有利に働かなかった。ぴったり50%がオバマに、50%がマケインに投票している。
【年齢別】 事前の予想に反して、若年層(18~29歳)の支持率は伸びず、前回の選挙と同率という結果になった。特筆すべきは、30歳から64歳の層での支持者数拡大だ。前回の選挙に比べ10%増えている。
【性別】 男性の50%、女性の56%が民主党に投票したが、この割合は前回の選挙とあまり変わらない。
【学歴別】 大学院卒以上の学歴の層で、民主党に投票した人が前回に比べ11%増えている。大卒・大学中退層でも民主党支持者数が7~8%伸びている。
【人種別】 黒人票の99%は民主党に投じられた。黒人は、歴史的に民主党支持の傾向が強いが、この圧倒的な数字は史上最高である。白人票の44%が民主党に投じられたが、この数字は前回とほぼ同じだ。
つまりオバマを支持したのは中高年、高学歴者、そして黒人たちだ。変化を強く求めているのは、この層だと言える。
詳しい情報をありがとうございました。
こういう数字からいろいろなことがみえてきますね。