オバマ次期アメリカ大統領についての雑誌論文の紹介を続けます。

 

なおオバマ政権下での日米関係がどうなるか、レポートを別のサイトに書きました。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/90/

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第三の影はオバマ氏の本来の超リベラル志向である。 

 

歴代大統領のなかでもオバマ氏ほど政治経験の少ない人物は珍しいが、国政レベルではわずか三年余の上院議員歴だけのなかでも「上院議員百人のうちでも最もリベラル」と判定されていた。

 

この場合のリベラルとは、「大きな政府」策に基づき、民間への政府の介入や規制を増すことを主唱し、経済面での自由競争や福祉面での自助努力を抑えようという思考だといえる。

 

対外面では軍事を軽視し、対話や協議を優先させ、同盟関係よりも多国間関係を重視する。

 

上院議員としてのオバマ氏はイラク介入に激しく反対し、イラクからの米軍の早期撤退や戦費の大幅削減を唱えていた。

 

労働組合に支援されているから「アメリカ労働者の雇用」を極端に重視し、一連の自由貿易協定に難色を示した。

 

北米自由貿易協定(NAFTA)に反対を表明しながら、カナダの政府には「本音ではないから心配するな」とひそかに告げていた事実が一部メディアにもれて、あわてて否定するという一幕もあった。

 

他方、オバマ氏は外国に生産施設を移すために対外投資を増やすアメリカ企業には特別の課税をするという上院法案にも共同提案者となっていた。

 

要するにオバマ上院議員は保護貿易主義へ明白に傾斜し、労働組合への配慮から外国投資まで抑制するという過激リベラル志向をいやというほど、みせてきたのだ。

 

健康保険に関してもオバマ上院議員はアメリカ国民の多数派がなお「社会主義的」だとして否定的な政府による国民皆保険への賛同を唱えてきた。

 

その一方、大企業への批判的な傾向からキャピタル・ゲイン税や法人税の引き上げを奨励してきた。

 

「富や所得の再配分」というのもオバマ議員の好みのスローガンだった。

 

税制では高所得層への税金の率を思い切って高くして、多額の課税をし、政府としてはその分の税収入増を低所得層に減税や福祉という形で「再配分」するという仕組みだった。

 

本番の選挙戦でもオバマ候補は「年収二十五万ドル以上の高所得者を除いては国民全員のうちの九五%に対し減税を実施する」と言明した。

 

高所得層は所得が多いというだけで悪者扱いをして、その富を収奪し、貧困層へ再配分するという発想である。

 

共和党側からはこれに対して「社会主義的税制」という非難がすぐに飛び出した。

 

さらにはアメリカ国民の四〇%近くが最低課税対象額の所得を得ておらず、その結果として所得税を納めていない事実が判明し、共和党側からはこのオバマ大減税案への不信がぶつけられた。

 

オバマ氏はこの減税については選挙キャンペーン中に減税対象から外す高所得者層の所得水準として当初の年収二十五万ドルから二十万ドル、十五万ドルと、どんどん引き下げる言明を重ねて、真意がどこにあるか、国民の多くを戸惑わせた。

 

(つづく)

 

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