バラク・オバマ氏は1月20日、アメリカの第44代の大統領に就任します。
そのオバマ氏の実像虚像について雑誌『正論』に書いた論文の紹介を続けます。
======
報道上のこの種の自粛が次期大統領の喫煙癖に留まるぐらいならば笑ってもすませるが、そのタブーや禁忌の対象がオバマ氏の人脈や政治家としての軌跡までを含むとなると、深刻である。
オバマ氏はアメリカの一般の基準でならどうみても過激派とみなされる人物や団体ときわめて緊密な関係にあった。
だが大手メディアが正面から詳細に報道することはなかった。
ふつうなら選挙期間中には候補者の背景や周辺については徹底した調査報道が展開されるのだ。
一九七〇年代のアメリカでは「ウェザーマン」という極左テロ組織が猛威をふるった。
都市ゲリラ戦による革命を唱えたこの組織は国防総省や連邦裁判所、主要銀行などを爆破しようとした。
死傷者も多数、出した。
その首謀者がビル、エアーズ、バーナディン・ドーンという夫婦だった。
この夫婦は指名手配を受けて逃亡した。
その間、捜査側の証拠入手の方法に不備があったことが判明して、出頭して裁判を受けても、短い刑期ですんだ。
服役後はシカゴ地区に住んで、社会復帰を果たした。
オバマ氏はそのエアーズ氏と一九九〇年代から親交を結んでいたのだ。
当初は「単なる近所の知己」と評していたが、やがてオバマ氏は大学教授となったエアーズ氏から政治活動の助言や支援を得ていたこともわかった。
オバマ氏がミシェル夫人とともに黒人過激派のキリスト教牧師ジェレマイア・ライト師から二十年間も信仰上の指導を受けていたことも判明した。
ライト牧師は「アメリカ政府がエイズをつくり出した」とか「ブッシュ大統領は9・11同時テロを事前に知っていた」「アメリカに呪いあれ!」などと絶叫する過激派活動家だった。
オバマ氏がシカゴでの地域社会活動を通じて、「共同社会組織即時改革協会」(ACORN)という民主党系左派の活動団体に密着していたことも、共和党側から懸念の対象とされた。
この組織は黒人など少数民族や低所得層の住宅融資や福祉拡大に努める一方、民主党候補支援のための有権者登録活動を展開してきた。
今回もオバマ支持を鮮明にして全米で合計百三十万人の有権者登録に成功したと発表していた。
ところがこのACORNが全米各州で有権者登録の不正事件を起こしていたことが発覚したのだ。
選挙戦後半にペンシルベニア州でACORNが登録を申請させた有権者二十五万のうち六万近くが手続きの不備や不正を理由に却下されるなど、各地での不正が明るみに出た。
オバマ氏自身はかつてACORNの顧問弁護士を務めていた事実も判明したのだった。
オバマ氏のこうした影の人脈や組織脈は大手メディアによってはごくさらりとしか報じられないのである。
ここで念のために書くが大手メディアとはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、ニューズウィーク、タイムなどの紙誌、テレビではCBS,NBC,ABC、CNNなどである。
こうした大手メディアだけから情報を得ていると、オバマ氏の本来の超リベラル志向もなかなかわからない。
しかし同氏の当選後の既成勢力へのすり寄り、リベラル離れのようにみえる新しい動きも、かつてのオバマ氏の左傾スタンスを知っていれば、単なる戦術の作戦か、それとも基本の思考の転換なのか、実態を透かしてみることができるだろう。
(つづく)
======
コメント
コメント一覧 (5)
オバマ次期大統領、クリントン次期国務長官については、過激リベラルの疑念はずっと続くと思います。
アメリカ大統領は自国のことだけでなく、世界に責任ある立場となる訳ですから本当に懸念されます。
クリントン氏も日米同盟を重視するという発言があったようですが、噂される中国との関係、在米中国人からの不正献金など闇の部分が多いですね。
日本としては、現状日米同盟しかありませんが、同盟の質を高めるには集団的自衛権の確保が喫緊の重要事項ですし、ある程度独り立ちできる体制へと転換していく必要があります。
今後もオバマ政権の人事、発言、政策をお知らせ下さい。
左翼バイアス傾向のマスコミからは事実は伝わりません。
僕も以前、英語の勉強の為に、ニューズウィークは長い間、講読していましたが、僕の考えはそれに誘導されていった訳だが、これではアメリカの一般的な知識層には誘導された世論が形成されてしまいますね、だから大手メディアはインターネットに進出して、今度はインターネットで世論を誘導するという事かな?
>こうした大手メディアだけから情報を得ていると、オバマ氏の本来の超リベラル志向もなかなかわからない。
インターネットの世界も、短絡的に加熱する傾向があるから、冷静にオバマ氏の本質を見極める事は難しいかな?
オバマ氏については日本のマスコミの多くが、ただただ礼賛で、ご指摘のように「影」の部分がほとんど報道されません。
その点を意識して、光と影の両方を伝える客観報道を続けたいと思っています。
アメリカの大手紙では、ウォールストリート・ジャーナルがまともだと思います。日本でもアジア版はホテルその他の売店で売ってますね。コラム欄、社説欄が参考になります。
ネットでも少額の代金を払えば、読めます。
そういう映画は知りませんでした。
でも趣旨はよくわかるつもりです。