アメリカはオバマ新政権の下で中国にどう対応していくのか。

 

 ところで、オバマ政権の社会主義志向」について別のサイトに詳しい報告を書きました。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/95/

 

 

 

 アメリカの対中政策やその結果としての米中関係のうねりが日本にとっても重大な意味を持つことは言を俟たない。

 アメリカのそうした最新の中国への認識や態度を知るのにきわめて価値の高い報告がこのほど公表された。

 

 アメリカ議会の超党派政策諮問機関の「米中経済安保調査委員会」の二〇〇八年度の年次報告である。

 

 アメリカの中国研究は官民ともに日本よりはずっと幅広く、奥行き深く、しかも鋭い切り込みで活発に進められている。

 

 そうした中国研究に取り組む多数の組織のなかでも、この米中経済安保調査委員会は最も広範に、最も深層へと踏み込む機関だといえよう。

 

 二〇〇一年に発足した同委員会は「米中両国間の経済関係がアメリカの国家安全保障に及ぼす影響を調査する」ことを活動の主目的とする。

 

 そのためには中国側の経済だけでなく政治、外交、軍事、そして金融やエネルギー政策まで実に広い領域に光をあて、それぞれの動きがアメリカの安全保障にどんな意味を持つかを探究する。

 

 その結果を議会や政府に政策勧告として通告する

 同委員会は連邦議会の民主、共和両党の有力議員から推薦された中国に関する専門家計十二人の委員によって構成される。

 

 その委員たちが中国に出かけてみずから調査にあたるほか、政府の国防総省、財務省、中央情報局(CIA)、国務省などの諸関連機関からの情報を得る。

 

 さらに個別の具体的テーマにしぼって公聴会を開き、そのテーマの専門家たちを証人として呼び、報告を聞く。

 

 資料の提出を求める。

 

 二〇〇八年度報告の基礎となる調査活動としては委員会は中国本土だけでなく香港、台湾、そして韓国や日本までも訪れて相手側の官民の関係者たちと面談した。

 

 公聴会はこの一年近くに合計九回を開き、そのうち一回は中国からの海産物輸入の現場となるルイジアナ州での開催だった。

 

 残り八回はワシントンの連邦議会が舞台である。

 

 これら公聴会に出席した証人は合計九十二人にのぼった。

 

 もともと中国や米中関係の専門家である委員たちがさらに個別の分野の専門家を証人として招いて報告を聞くという仕組みなのだ。

 

 この調査委員会の最大の特徴の一つは、その取り組みに民主、共和両党の思考や見解が含まれる超党派性だといえる。

 

 十二人の委員は六人が民主党、残り六人が共和党の各議員による任命なのだ。

 

 現在の委員長を務める中国軍事問題の専門家ラリー・ウォーツェル氏は共和党デニス・ハスタード前下院議長の推薦、副委員長のキャロライン・バーソロミュー氏は中国の人権や通商の専門家で民主党の現下院議長のナンシー・ペロシ議員によって任命された。

 

この二委員だけをみても、推薦側の議員はそれぞれ保守とリベラルの本流というコントラストであり、委員会全体としての幅広さを明示している。

 

だから政権がブッシュからオバマへと変わっても、議会の民主党側が議席を増しても、この委員会自体の強力な役割は変わらないといえる。

 

 さて年次報告の内容を紹介しよう。

 

この報告は二〇〇八年の同委員会の調査や研究、分析、そして提言の総括である。

 

同委員会はこの公表分の報告書とは別に政府諸機関や上下両院議員向けに秘密の報告書を提出した。

 

 同年次報告は内容全体のなかでの主要な調査結果として以下の諸点をあげていた。

 

 ▽中国の人民元の対ドル交換レートは中国当局の操作により不当に低く抑えられている。

 

▽中国当局は政治や経済の利益を追求する手段として主権国家資産ファンド(SWF)を使うようになった。

 

 ▽中国は高度技術製品の取引や開発を従来の規範に違反する形で進めている。

 

 ▽中国の海産食品の対米輸出にはアメリカ国民の健康への脅威が存在する。

 

▽中国の活発な動きが世界のエネルギー供給を激変させ始めた。中国の炭酸ガス排出も急増してきた。

 

 ▽中国はなお問題のある大量破壊兵器の拡散に関与している。

 

 ▽中国は種々の新たな手段で外交的影響力を強化している。

 

 ▽中国の韓国、日本、台湾との関係のうねりはアメリカにも大きな意味を持つ。

 

 ▽中国のアメリカのコンピューター・システム侵入や宇宙への動きは脅威となってきた。

 

 ▽中国の国内でのニュース・メディアやインターネットの規制は国際的な懸念を生んでいる。

 

 ▽中国の刑務所労働による製品のアメリカへの輸出がなお問題となっている。

 

 以上が柱である。

 

 報告はその全体の「序」では二〇〇八年が鄧小平氏による改革開放の開始から三十年にあたることを指摘していた。

 

 鄧氏が求めたシステムは「中国的特徴の資本主義」とか「市場社会主義」と評されてきたことを強調する。

 

その上で基本認識として次のように述べていた。

 

 「中国の経済自由化への道がやがては自由市場経済の資本主義、さらには民主主義にまで通じるだろうという西側の期待はまったく打ち砕かれてしまった。この報告が詳述するように、中国当局はまったく異なる道を選んだのだ。その長期の経済成長の疾走は政治改革への足がかりではなく、むしろ逆に中国共産党の永続統治の正当化に利用されてしまった」

 

 「二〇〇八年夏の北京五輪は中国の金メダルの大量獲得こそ実現させたが、その一方、世界の視線を中国の急速な経済成長の環境問題への悪影響や自由な言論、自由な思考、自由な報道への政府当局による無慈悲な抑圧へと向けさせることとなった」

 

 この報告全体が特徴づける中国のいまのあり方は、このへんの記述によって浮き彫りにされるといえるだろう。

 

 きわめて批判的、警戒的な対中認識なのである。

 

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