私の書いた『オバマ大統領と日本沈没』の書評が3月22日の産経新聞朝刊読書欄に出ました。

 

 評者は外交評論家の田久保忠衛氏です。

 

 紹介させていただきます。

 

 

 

【朝刊 読書】


【書評】『オバマ大統領と日本沈没』古森義久著


オバマ大統領と日本沈没

 

 

 

 

 

 ■安心できぬ今後の日米関係

 

 ヒラリー・クリントン米国務長官は2日間の日本滞在中にいたるところで同盟の重要性を強調し、麻生太郎首相には「バラク・オバマ大統領との会談」というビッグプレゼントを持参した。

 

 日米首脳会談は日米同盟の重要性を改めて世界に向けて発信した。

 

 日米関係はこれで一安心だ-と考えている日本人に冷水を浴びせたのが本書である。

 

 著者は先(ま)ずオバマ大統領の政治家としての資質は認めたうえで、出自、少年時代の宗教教育、過激派とのつながり、超リベラル志向の「影の部分」4つを紹介している。

 

 出自がどうであろうと、少年時代の宗教や若いころの思想が偏っていようと、それは自由である。

 

 が、一国の最高指導者の背景は透明にしておかなければならない。

 

 民主党に偏向した米国のジャーナリズムを下敷きにした解説の多い日本の報道界は「影の部分」をほとんど取り上げなかった。

 

 いわゆるリベラル派に身を置いてきたオバマ大統領はロバート・ゲーツ国防長官の留任、クリントン国務長官、ティモシー・ガイトナー財務長官らの閣僚人事で、いかにもリベラルから中道に舵(かじ)を切ったかのように見受ける。

 

 しかし、本書はこうした俗論にメスを入れ、大統領就任直後に公表したグアンタナモ収容所の閉鎖、妊娠中絶を勧める国際団体への資金提供、国民皆医療保険政策などに存在するリベラル性あるいは「大きな政府」による「社会主義的変革」を鋭く衝(つ)いた。

 

 オバマ政権の対日政策がどうなるかは、この政権の対中政策と重大なかかわり合いを持つ。

 

 米中両国の関係は経済面では緊密性を増していくが、民主党のリベラル派がとくに目を光らせている人権、国防省を中心とした中国の軍事的強大化への警戒などの障害もあり、直線的には進まないだろうというのが著者の見通しだ。

 

 巻末の日本の針路5つの提言の心棒は、日米同盟を基礎としながら、日本は「普通の国路線」を歩め、であろう。

 

 日米関係も従来の惰性に浸ったような日本の姿勢では不可、とする指摘に目を覚まされる思いだ。

(ビジネス社・1680円)

 

 評・田久保忠衛(外交評論家)