日本の集団的自衛権の解禁が論じられるなかで、24日にワシントンで開かれた東南アジアの安全保障に関する討論会でフィリピンの気鋭の学者が「日本ももう過去にとらわれず、また中国の反対にかかわらず、アジア地域で軍事的な役割をもっと果たすべきだ」と提言しました。
ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が開いた「東南アジアでのアメリカのリーダーシップと中国の挑戦」と題する討論会で、フィリピンの名門デラサール大学のレナルト・クルス・デカストロ教授は、中国の軍拡に対応する方法として米軍の駐留の継続に加え、「日本がアメリカ、中国と並ぶパワーの支柱となるべきだ」として、そのパワーも単に経済や外交というソフト・パワーだけではなく、安全保障や軍事そのものにかかわるハード・パワーをも含む、と述べました。
デカストロ教授の発言の趣旨は以下のとおりです。
「日本はアジアでは単に経済などのソフト・パワーを超えて、軍事を中心とするハード・パワーをも発揮してほしいという期待は東南アジア諸国側に確実に存在する。マレーシアのマハティール首相が東南アジア各国の合同の軍事演習に日本が加わることを求めたのは1992年のことだ。以来、イラクやアフガニスタンの紛争でも日本が安全保障上の貢献をすることへの期待は東南アジア側に一貫してある」
「日本が軍事的な役割を果たすことを日本の過去の軍事行動に結びつけて反対する勢力があるが、日本の過去の戦争はすでにきちんと清算されている。中国は日本の軍事貢献には反対だという主張を続けているが、中国独自の理由であり、私たち東南アジア側にとっては説得力に欠ける」
「フィリピンはアメリカの同盟国であり、日本もアメリカの同盟国だ。であれば、フィリピンと日本とが安全保障とか軍事の面で同盟国同士のような連携を保って、活動をすることも自然となる」
以上ですが、マレーシアやインドネシアの代表たちが「日本はもっと軍事的役割を」と呼びかけることは珍しくありませんが、フィリピンの代表的学者がアメリカでの国際フォーラムで日本への軍事の勧めを説くのは異例だといえます。
日本が国外で国際的な安全保障活動、軍事活動を実施するには、集団的自衛権の行使の自由が前提となるでしょう。
ここでも、いまの日本の自縄自縛は異様であり、利害をともにする他の諸国との共同作業を阻んでいるのです。
コメント
コメント一覧 (22)
このエントリーは是非、麻生総理にも見て欲しいですね。
やはりどの国も中国の軍事力拡大に脅威を感じているのでしょう。そこに軍事力を軽視しているかのようなオバマ政権が誕生したのですから、なおさら「日本よ、いい加減にしっかりしろ」ということですね。
恐らく麻生内閣が今回「ミサイル迎撃体制」をハッキリ宣言したので、少しは可能性を感じたのではないでしょうか?。
これは中国以外の東南アジアの諸国にとっては、ある意味北朝鮮を含めて、共通する深層心理でしょう。
もちろん、戦前のように日本だけが軍事大国として地域に存在することを赦そういうのではありません。米国と強固な同盟関係のもと、東南アジア諸国が中国と対等の立場でお互いに発展して行く現実的な構想です。
ちょっと歴史を顧みれば、普通のアメリカ人なら日露戦争でアメリカのお陰で帝政ロシアの植民地にならずに済んだのに、恩を忘れてその後地域の覇権を一人占めにしようとしてと、考えることでしょう。
アメリカが日本が頼りにならないのなら、中国とさらなる友好関係をと考えるのはごく自然なことです。そうなれば、日本を含めて東南アジアはどうなりますか。フィリピンの学者のいうことも、もちろん日本がアメリカと強固な同盟関係をむ結んでいるという前提があっての話です。
Philippinesの知識人に「日本がより『軍事的貢献』を考えてもいいのでは」と言われるのは、歴史的に見ても価値がある事でしょうね。ただ、この意見が“大勢”なのかどうかは…それにしても価値ある意見表明だと思います。
ただ、“PaxJaponica”を求めているというよりは“中華思想”に対する不信感なのでしょうね。「中国に比べれば日本の方が友人として相応しい」と思ってくれている事は素直に喜びます。
少し前に下記のエントリをあげたのですが、パネリストはマイケル・グリーンと朝日の加藤洋一でしたがその中でも、マイケルが東南アジア諸国は日本に我々が知る以上に期待していると言っていました。
http://parkmount.iza.ne.jp/blog/entry/985269/
フィリピンは戦争中戦場になったことで反日的気分が強いと思っていましたが、井上和彦氏の著作などで特攻隊の犠牲的精神を高く評価していることなどから日本への好感情も多いとのことでした。
また、わずかバシー海峡を挟んで北に位置する台湾との発展の差を慨嘆して、どうして日本の支配地にならなかったのかという恨み節をきいたこともありました。
実際台湾とフィリピンでは、むしろフィリピンの方がスペイン、アメリカと早くから欧米の支配を受けていたのに比べて、台湾は清からは化外の地とされ、朝鮮とともに世界で最後に残された秘境でありました。
それが今では台湾はほぼ先進国に並ぶ位置に発展し、民主化の進展も著しいという逆転ぶりですね。
戦後のパックス・アメリカーナは自己主義的傲慢さと金融欲望主義などの弊害もありましたが、自由と民主主義の拡散、それは個人の人権を尊重するという普遍的な価値を基準においていたため、大いなる幸いであったことは間違いではありません。
逆に、中華やロシアのような専制独裁の人権弾圧国家が世界の指導的立場にあったなら、世界は暗く悲惨で、歴史は300年ほど後退していたことでしょう。
現在においても、中国は統治機構、精神状況は専制独裁の中華思想のままですから、明らかに危険であるのです。
翻ってわが国は、元々神道、仏教融合の「山川草木悉く仏性あり」の平等思想、共生思想を精神基盤にしている上、戦前の極端な国家社会主義、国粋主義という弊害もなくなり、国際社会のなかでも最も愚直で誠実で謙虚で、相手を尊重し、約束を守る国になったと思っています。世界は日本と付き合うといいことが多いと言うことが段々分かるようになってきたとと思います。
ただ日本は外国語をあまり必要としない国ですので、海外向けの発信が苦手なので正しく理解されないことが多いだけなのですね。
私もこの発言を聞いて、日本はここまで頼りにされているのか、と驚きました。日本側内部のほうが時代遅れの思考のようですね。
この発言はアジアというと、中国と朝鮮半島しかみない日本の認識が間違っていることの例証だと思います。
マスコミの論調といえば、世界一の発行部数を誇る読売新聞も、この種の日本の安全保障については産経とあまり変わらないですよ。ときには産経よりも強いときがあります。
靖国問題など、ヘンなときもありますけどね。
ん~。。。南沙諸島の油田問題に関与してほしいのかもしれませんね。中国の空母ができたらゴリ押し体質はさらにロコツになるでしょう。まあ、日本のほうが、強欲中国よりはるかにマシではあります。日本も尖閣問題があって、同病相憐れむのふうもありますw。
ヨーロッパの植民地のダメぶりと比べるて、韓国、台湾の発展ぶりを見れば、日本の植民地は植民地に非ず。NHKが描く「台湾支配」とはまるで違ったものだったという証左です。
フィリピンの気鋭の学者が「日本が軍事的な役割を果たすことを日本の過去の軍事行動に結びつけて反対する勢力があるが、日本の過去の戦争はすでにきちんと清算されている。中国は日本の軍事貢献には反対だという主張を続けているが、中国独自の理由であり、私たち東南アジア側にとっては説得力に欠ける」と述べたそうでありますが、私にしてみればその内容は至極もっともな話です。ではありますが、日本人ではなくフィリピン人からの発言というところに価値があります。
中国の長期に渡る軍事力増強の現実に脅威を感じる東南アジア諸国があるのですから、日本はしっかりした国防論議をし、これらの国々との連携をも考慮すべきでしょう!
「九条の会」などの主張を読みますと、ここで護憲を叫ぶ日本人が「一番日本人を信じていない!」ことに気づき愕然とします。
Dpal451さんがおっしゃるように、「中華やロシアのような専制独裁の人権弾圧国家」が核兵器を持ち、世界の指導的立場にいる事には黙視し、「国際社会のなかでも最も愚直で誠実で謙虚で、相手を尊重し、約束を守る国になった」日本の、核保有はおろか「集団的自衛権の行使」にさえ躊躇している様は、国家自体が正常な思考力を失っているとしか思えません。
国連至上主義も九条の会と同一で、本質を見ずに理想論に傾倒します。今更「性善説」を唱えるには、ごまかしようのない歴史を人類は刻んでいるというのに…。
はじめまして、こんばんは。
以前、フィリピンのアロヨ大統領が当時の安倍首相に、防衛庁の省昇格に賛意を表明したことがあったことを思い出します。大統領は省昇格を、日本における民主主義の成熟と文民統制への自信の表れだと賞賛し、今後日本が国際的な安全保障に関与する可能性も期待していたと思います。
今回のように、日本に対する安全保障分野への期待感は、フィリピン政界・言論界において、もはや小さな声ではないということでしょうか。近い将来の日本は、島国国家・海洋国家というアイデンティティをなお一層自覚して、フィリピンをはじめとする東南アジア諸国と安全保障分野の連携を強めていく必要性があると感じさせられます。
初めまして。
フィリピンのアロヨ大統領が防衛庁の省昇格に賛意を表明していたのですか。
そういえば、そういう記憶があります。
日本人の多くよりもフィリピンの人のほうが日本人を信頼している、という皮肉な状況ですね。
だって日本の一部では「防衛庁を防衛省にすると、日本はまた軍国主義になる」なんて述べていたんですからね。
朝日新聞は表現に差異はあれ、そういう趣旨を一貫して述べて、防衛省の登場には反対の論陣をはっていました。
なにがなんでも九条厳守、日本が滅びても九条は守ろう、なんていう主張としか思えない人たち、日本国よりも国連なるものの判断を優先させよと説く小沢一郎ふうの人たち、以前ならその主張には「日米安保破棄」というスローガンがくっついていましたね。
でも日米安保への正面からの反対は政党では共産党だけとなりました。
この変化をもって、楽観論の一材料にすることができるのでは、と、ときには思います。
フィリピンを含め東南アジア諸国側の日本への軍事面での期待には、もちろん先方のぎらぎらした国益があるのでしょうが、この学者がさらりと「日本の過去の戦争行動はもうきちんと清算がすんでいる」と述べるのと聞くと、
東南アジア側の一般的な歴史観としても、そうなのかな、と思わされました。
中国と朝鮮半島だけがアジアではない、という教訓の好例だとも思いました。
このフィリピンの学者は「東南アジアには全般に中国への懸念や恐怖のような受け止め方があるが、それを明確に表明する人はきわめて少ないのだ」とも述べていました。
民主主義か否かという点も大きいと思います。
コメントの以下の部分、きわめて適切で正確な指摘だと感じました。
<戦後のパックス・アメリカーナは自己主義的傲慢さと金融欲望主義などの弊害もありましたが、自由と民主主義の拡散、それは個人の人権を尊重するという普遍的な価値を基準においていたため、大いなる幸いであったことは間違いではありません。>
ただしその正確さが客観的、歴史的に証明できるその指摘がいまの日本では
すんなりと述べられないという側面もあるようですね。
ご指摘の「報道管制」のために、日本国民の多くが知らないままでいる事実としては以下の諸点がまず思い当たります。
①台湾の住民の多くが「日本の統治はよかった」という感想をごく率直に述べているという事実
②インドの知識人には、「日本の戦争がインドを含むアジア諸国の欧米植民地支配からの独立を早めた」と堂々と述べている事実
③東南アジアの各地には「日本軍は悪いことはしなかった」と述べている人たちが多数、存在する事実
④東南アジアには日本が軍事的にもっと強くなって欲しいと願う識者や政府要人が多数、存在する事実
以上のうち今回のエントリーは④にあたるわけです。
日本が軍資強化しようとも「カラスの勝手でしょう」と言う
意見も興味深いですが、次の意見も興味深いです'`,、( ´∀`) '`,、
>勿論、土下座好きな僕は、戦争になったら、すぐ逃げる。逃げられないなら、殺されても、先に投降致します。
流石は華人ですなあ'`,、( ´∀`) '`,、
「上に政策あれば下に対策有り」
とはよく言ったものでこれほど中央政権を信用していない
民族もありません。尤もそれが悪いとは言いませんが。
世界に、特に亜細亜全般に「同胞」が存在するわけですから
そういった意見もむべなるかなと'`,、( ´∀`) '`,、
そういえばタイのタクシン元首相も「同胞」でしょうし。
どうせ困るのは共産党と人民解放軍の連中だけだしと。
逃げる所の無い日本人はそれが出来ません。
× 日本が軍資強化
○ 日本が軍事強化
似たようなものですが(^◇^;)
> parkmount さん
>
>ご指摘の「報道管制」のために、日本国民の多くが知らないままでいる事実としては以下の諸点がまず思い当たります。
>
>①台湾の住民の多くが「日本の統治はよかった」という感想をごく率直に述べているという事実
>
>②インドの知識人には、「日本の戦争がインドを含むアジア諸国の欧米植民地支配からの独立を早めた」と堂々と述べている事実
>
>③東南アジアの各地には「日本軍は悪いことはしなかった」と述べている人たちが多数、存在する事実
>
>④東南アジアには日本が軍事的にもっと強くなって欲しいと願う識者や政府要人が多数、存在する事実
>
>以上のうち今回のエントリーは④にあたるわけです。
マイケル・グリーンのアンケート調査でも軍事的とは特定していませんが日本に「より大きな役割」を期待する東南アジア諸国が予想以上に多かったと述べていました。