先にこのブログで紹介した書『サイゴンの火焔樹』の書評が6月28日付の産経新聞朝刊に掲載されました。

 

書評を書いたのは古森義久です。

以下に載せます。

 

その後に自分の本の紹介もさせていただきました。

もう古い本ですが。

 

【朝刊 読書】


記事情報開始【書評】『サイゴンの火焔樹』牧久著


サイゴンの火焔樹―もうひとつのベトナム戦争

 

 ■ベトナム戦争の暗部を照射

 ベトナム戦争は終結から30余年が過ぎてもなお熱っぽく語られる。

 

 目前の国際情勢を考えるうえで深遠な教訓となる不変の歴史的意義を持つからだろう。

 

 本書はそのベトナム戦争の本質を戦乱とその後に続いた革命のまっただ中での著者自身の体験を論拠にきわめて正確に描き出している。

 

 ベトナム戦争は1975年4月30日、当時の南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)を北ベトナム軍が制圧して終わった。

 

 著者の牧久氏は日本経済新聞の特派員としてサイゴン陥落前後の8カ月間、この歴史的な激動を報道した。

 

 本書はその報道を再現しながらの迫真のノンフィクションだが、筆者は戦争の本質を冷徹に論考する一方、そこで翻弄(ほんろう)された人間たちに温かい視線を向ける。

 

 日本にはベトナム戦争を単に「アメリカの侵略にベトナム人民が団結して戦いを挑み、勝利して民族の和解と祖国の解放を果たした」とみなす向きも多い。

 

 この解釈ではサイゴン陥落時からその後、20年にもわたり、解放されたはずの祖国から南ベトナム住民の10分の1にも及ぶ200万以上が国外へ脱出した現実はどうにも説明できない。

 

 だが本書はベトナム戦争のその暗部に直截な光を当てる。

 

 この戦争が民族独立闘争だけでなく共産主義革命であった事実や、主義を異にするベトナム人同士の戦いだった事実をいやというほど提示する。

 

 闘争の主役だったはずの南ベトナムの革命勢力が勝利後に圧殺された事実や、旧政権側に生きた市民たちが新社会では排され、削(そ)がれていった事実をも具体的な事例を重ねて告げていく。

 

 その結果、ベトナム戦争全体の実像が立体的に姿を現す。

 

 著者はこの歴史解明の作業を自分自身のサイゴンでの報道活動に協力したためにスパイ容疑をかけられ、迫害された元ベトナム人助手兼通訳の苦難や、民族独立に尽くしながら裏切られた元日本兵とそのベトナム人妻の失意を自責の念をこめて伝えることでも期せずして果たしている。

 

 ベトナム戦争を理解するためには必読の書である。(ウェッジ・2520円)

 評・古森義久(ワシントン駐在編集特別委員)

 

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 ベトナム戦争についてはついでに私が以前に出した書も紹介しておきます。

 

 この書は講談社ノンフィクション賞(前身は講談社出版文化賞のノンフィクション部門賞)を受賞しました。

 

 

 

 

ベトナム報道1300日―ある社会の終焉 (講談社文庫)

 

 
 
 ベトナム戦争に関する、最も感銘深く優れたルポルタージュ。, 2005/4/27
By カスタマー
 

 著者・古森義久氏は、毎日新聞ベトナム特派員として3年間、ベトナム戦争末期のベトナムに滞在した。

 

 それは日本人特派員として最長の滞在記録であった。

 

 その間精力的に取材を続け、多くの記者が国外脱出する中でも残留し、1975年4月30日の南ベトナム首都サイゴンの陥落を現地で見届けた。

 

 本書はその克明な記録である。


 ベトナム戦争とは何だったのかを伝えているのみではない。

 

 報道とは何か、1つの国が崩壊するとはどういうことか、戦争や国家崩壊の中でそこに生きる人々の姿はどのようなものだったか、余すところなく伝えている本である。