ラシャワー元駐日大使のインタビュー記録の紹介をさらに続けます。

 

 今回の部分では驚くことに、ライシャワー氏は日本がアメリカの核兵器を国内に配備させることを考えるべきだという提案をしています。彼なりの慎重で婉曲な表現ではあります。

 

 私はライシャワー氏の発言のこの部分を新聞でも雑誌でもあえてハイライトを浴びせて報じることはいませんでした。やはりあまりにも過激で大胆な提案だと感じたからでしょう。しかしいま彼の発言を再読してみると、日米同盟の枠内での核抑止政策という観点からみると、きわめて理にかなった提案として映ります。

 

 ライシャワー氏はこの提案に「 日本がもしアメリカの核のカサを受け入れるならば」という前提をつけています。当然ながら日本はその安全保障政策の根幹の一つとして「米国の核抑止」を受け入れるどころか、それに依存することを宣言しています。

 

 ライシャワー氏は1981年という早い時期にここまで考えていたという事実には改めて新鮮な驚嘆を覚えます。

 

 では以下がその記録の続きです。

 

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 古森 しかしライシャワー教授、日本政府がこの問題をもうはっきりと明るみに出す時期が来たのだと、いまあえてあなた自身が提言するところまでいってもよいと思いますか。

 ライシャワー そうしてもよいですね。

 もし日本政府がそういう時期が来たと考えるならば、明るみに出すのは結構なことです。

 しかし外部からこの種のことを法的に変えようというようなことは、試みない方がよい。

 日本国民がそうした認識を持つにいたった時にこそ、そういう時期が来たことになるのです。

 そしてあなたも言うように、日本がもしアメリカの核のカサを受け入れるのなら、そういうことを明るみに出すというにとどまらず、もっと先へ進むべきでしょう。

 たとえばこの核のカサの基盤の一部を、日本国内に置く、というようなことです。

 そうしても、核のカサの基盤の一部が日本国内にない時にくらべて、日本にとっての危険がより増すというようなことはありません。

 なぜならそれは核のカサの主要な根源とはならないからです。

 核のカサが常に置かれている主要な場所は、アメリカの西部とか海洋なのです。

 その他の場所は、いわば末端の支えでしかありません。

 古森 ただ日本に核兵器が置かれた場合、それは象徴的な意味を持つことになります。

 ライシャワー だれもそんな(日本に置かれるような)基地など攻撃しようとはしません。

 もし核戦争を始めるならば、核戦力の中枢部で始めるでしょう。

 古森 そうですね。

 しかしライシャワー教授、日本政府はなお今日にいたるまで、核兵器積載のアメリカ艦艇の日本領海通過でさえ、日米間の事前協議の対象になる、という立場を公式にとっています。

 それに対してアメリカ側はそうした艦艇と、そこに積載されている兵器とは区別不可能、という立場をとっています。艦艇に積んだ兵器の種類はいちいち認定しない、というわけです。

 ライシャワー われわれは核兵器がどこにあるかは、決して明らかにしません。

 古森 だったら核兵器を積んでいても、それは事前協議の対象とはなりえないわけです。

 ライシャワー 事前協議の対象とはなりえません。

 なぜならそんなことをすれば核兵器が船上にあることを、一般の人々に告げることになってしまうからです。

 アメリカはそんなことは決して言いません。

 これはとくにはっきりさせておくべきことです。

(つづく)

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ライシャワー夫妻

 

 

インタビューの舞台となったレイシャワー邸

File:Edwin O. Reischauer Memorial House (Kodansha) - Belmont, MA.JPG