日本の非核三原則の虚構をあばいたライシャワー元駐日大使が私とのインタビューで明らかにした核持ち込みをめぐる「密約」や「ウソ」について語った記録の最終回です。
なお核廃絶の実現のために考えねばならない核抑止の現実について以下のサイトに詳しい報告を書きました。 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090818/174625/ 原爆投下に対する日米の態度の違いなどについては、以下のサイトにコラム記事を書きました。広島市は原爆投下の非は日本側にあるという自虐の態度をとるな、とインドのパル判事が批判したという歴史的な事実にも触れています。
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古森 前にもあなたが言ったように、「イントロダクション」というのは、アメリカ側の解釈するところでは、核兵器を日本の領土である陸上に持ち込むことのみを意味するわけですね。
ライシャワー 恒常的な意味で陸に揚げる、という意味です。そうです。核兵器を陸に置くということです。
陸上に揚げて、それになにかの措置をほどこすことです。
古森 それにいたらない段階は、いかなる場合でも・・・・・・。
ライシャワー そう、それは「イントロダクション」にはなりません。
古森 そしてそれは合意の中には入らないということですね。
ライシャワー そうです。
合意の中には入りません。
アメリカ側では、そういった意味に理解されたことは一度もない、ということがまったくの明確なのです。
古森 で、その一方、日本は独自に歩を進めて、野党が主張しているような線に沿うように前進してしまった。
日米間の合意ができた後に、そういう日本側の動きがあったから、そのあとではもう手遅れとなってしまった、というようなわけでしょうか。
ライシャワー そうです。
日本政府は「日本が寄港などを認めるのは当然ではないか、どうしていけないのか。アメリカはそうした行動をとらなければならないのだ」と堂々と正面から言わないで、問題を避けようとしました。
そうはっきり言明するだけの気構えが全然なかったのです。
日本政府は「われわれはアメリカを信頼している」と述べて、すべての責任、すべての非難をアメリカ側に押しつけた方が、ずっと安易だと考えたのです。
古森 しかし、いまとなってはもうそれをどうすることもできないわけですね。
日本政府がなにか行動をとらない限りは・・・・・・。
ライシャワー ええ、もし問題がまた表面化したならば、その時は日本政府は「ソ連の艦艇が核兵器を積んで日本の各海峡を往来しているのだから、アメリカの艦艇も当然、同様にすべきだ。アメリカの艦艇は日本の港に立ち寄らねばならない」とはっきり述べるべき時期です。
古森 技術的にいって、アメリカの艦艇が日本に来る前にだけ核兵器を取りはずすという方途は、まったくないわけですね。
ライシャワー アメリカは核武装潜水艦(戦略ミサイル潜水艦や攻撃型原子力潜水艦)を日本に寄港させたことはありません。
もっとも手続き上は、寄港させてもまったくかまわない、と私は思うのですが。
アメリカは原子力推進の潜水艦を寄港させてきただけです。
でもこの原子力潜水艦というのは、核武装潜水艦とは全然異なるものです。
アメリカは常に、核武装潜水艦を日本に寄港させないようにしてきました。
古森 それが公式の・・・・・・。
ライシャワー そうです。
なぜなら核武装潜水艦が何であるかは、だれもが知っていますからね。
それは核兵器以外の何物でもないわけです。
しかし、そうした核武装潜水艦の場合でも、それが日本の港に入ってくることは正当だと思います。
古森 アメリカの核武装潜水艦は、現実に日本の港には寄港はしていない、というわけですね。
ライシャワー 核武装潜水艦は、現実に日本の港に寄港したことはまったくありません。
寄港しているのは原子力潜水艦のみです。
古森 教授がいま言っているのは、日本の公式な・・・・・・日本政府の公式な路線のことなのでしょうか。それとも現実の話をしているのですか。
ライシャワー この場合は現実について話しているのです。
というのは、核武装潜水艦というのは、核兵器そのものであるということがあまりに歴然としているからです。
航空母艦はいろいろなことを意味しえます。
核兵器を意味することにもなります。
が、同時にその他の通常兵器でもあるわけです。
古森 だからアメリカ側は、核武装潜水艦を日本に寄港させないよう、これまで気を配ってきた、というわけですね。
ライシャワー そう、アメリカは日本側のセンシティビティ(神経過敏さ)などを理解していたからです。
けれどもこの核武装潜水艦でさえも、本来は寄港、通過を認められるべきだ、と私は言いたいのです。
古森 それでは、いわゆる「灰色の領域」というのは、航空母艦だけなのですか。
ライシャワー 航空母艦と巡洋艦です。
古森 ああ、そうですか。
巡洋艦の中には核兵器を装備しているものもあるわけですね。
ライシャワー ええ、巡洋艦はこれまで寄港しており、その中の一部は核兵器を装備しているのです。
<このあたりは最も明確な形での“証言”だが、ライシャワー氏の語調にはとくに気負いも、ためらいも感じられない。それまでの日本の歴史を語ったような、ごく自然なトーンで質問に答え、話を進めていくのである>
古森 そうですか。
それでは(こうした日米間のくい違い、虚構をなくすためには)日本政府は声明をあらためて出すか、あるいはアメリカとの間に新しい合意をつくろうと試みることもできるのではないのでしょうか。
ライシャワー そうですね。
しかし、それよりも「イントロダクション」が何を意味するかということをふまえて、「モチコミ」が何を意味しているのかをまず説明すべきでしょう。
古森 それは私には・・・・・・。
ライシャワー もしアメリカが核兵器を貯蔵する基地とか、核兵器を発射するための基地を日本国内につくりたいというなら、話は違ってきます。
その場合には日米間でまず(事前)協議をしなければなりません。
そういうことはしないことをアメリカは条約によって同意しているのです。
古森 荒っぽい言い方をするならば、主権国家の政府が公式にウソをついているように、私にはみえます。
ここでいう政府とはもちろん日本政府のことですが、「核兵器を装備した船の通過でさえ、日米間の事前協議の対象となる」と主張しているのは、ウソになるのではないでしょうか。
そうした主張は、その通過や寄港に関する合意のアメリカ側の解釈とはまったくくい違っているわけですから、なんらかの措置がとられるべき点だと私は思うのですが。
ライシャワー もし日本政府が国民にそう述べているのなら、それはウソをついていることになりますね。
はい。
古森 念のためにもう一度質問しますが、この「イントロダクション」というのは、核兵器の寄港や通過は含んでいないわけですね。
そしてそのことは初めから一貫してそうなっていた、ということですね。
ライシャワー アメリカ側の解釈では、最初からずっと一貫してそうでした。
古森 これまでのどこかの時点で、アメリカがみずから進んで、そういった点の実態を明らかにする言明ができなかったものなのでしょうか。
ライシャワー ええ、でも問題はやはり日本国民にどう対応するか、なのです。
そうした物事を日本国民に説明するという点では、アメリカは日本政府よりもずっと弱い立場にあるわけです。
私が駐日大使をしている時でも、そういうことを試みる気には、とてもなれませんでした。
(終わり)
コメント
コメント一覧 (8)
前エントリーに関連して、民主党が集会で日の丸を刻んで党旗を作ったというのは、驚きましたね。実際支持者の日教組は国旗への憎悪を持っているようですのでさもありなんとも思いますが、ここまで意識が劣化してるいると亡国の党と呼ぶべきかもしれません。
日本の政党が日本を嫌ったり、憎んだりという本性を持っているというのは信じがたいことですが、それがまさに戦後の風景と言えばその通りなのでしょうか。
政治家というものはまず日本を愛し、なんとかよくしようと思う人でないといけません。日本を悪かれと願い、外国に売る者だけは排除しなければ、国として成り立たないでしょう。
今回の選挙は、なんとか反日、売国議員だけは当選させないという覚悟を持つことが第一と思います。自民にも反日議員がいますし、民主党にも一部愛国議員がいます。
ですから、各地の選挙区では候補者が愛国者か反日かを候補者に確認することが大切です。
さて、核のイントロダクションについては、反日独裁国家の北核保有、中国の軍事増強の脅威にさらされた今だからこそ、議論を深める時期でしょう。
そして、田母神氏のような安全保障の専門家が各地で多数の聴衆を集めて、国民を啓発してくれています。マスコミは伝えませんが、ネットではその内容も流布しています。
シュレジンジャー氏の言っておられることは正しいです。
北朝鮮だって、アメリカが核兵器を打ち込んでくることを恐れたのではなくて、恐れたのは米韓軍による普通の攻撃でしょう。それを防ぐには核兵器しかないと思ったと推測します。
ついでに言うとそういうことだとしたら、北朝鮮が核開発をやめることは決してないと思います。代替わりしたら別ですが。
私自身が、まるで、横にすわっているかのようです。
”ライシャワー氏の語調にはとくに気負いも、ためらいも感じられない。”
と古森さんが注釈をつけられていますが、これだけの内容を淡々と語られ
続ければ並の神経では、発する言葉を見失ってしまうことでしょう。
それを受け止めるだけでなく、受け返されていることに敬服します。
やはり、武道の経験というのは、言論にも通じるのでしょう。
日本の国会にも、武士道精神に裏打ちされた、洗練された会話力があればなぁ。。
と、自省をこめつつ、そう思いました。
民主党を支援するなかに日章旗を憎む勢力が有力な支柱として存在することは周知の事実ですね。
北朝鮮の「代替わり」による基本的な変化を期待したいですね。
重大な話をややリラックスしたような感じで進められたのも、ライシャワー邸の5月の緑とか、夫妻のゆったりした応対なで、環境のせいも大きかったと思います。おほめの言葉はありがとうございます。
衆愚政治の今日、日本政府はこの件に触れるな、というのも一理ありますね。
でも「衆愚」ではない時期はいつくるのか、ですね。