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連立政権という不安

 

 

 日本の民主党の多国間主義重視ともいえる傾向が、日米同盟に複雑な影を投げるという予測を述べた専門家もいた。

 

 ワシントンの大手研究機関の戦略国際研究センター(CSIS)の研究員で、日本の政治や安保を専門に研究するニック・セーチェーニ氏である。

 

 「民主党は、全体に東アジア共同体とか国連とか、多国間主義が好きだという印象があります。明確にそれを表明しないまでも、

幹部たちの発言にその傾向がにじんでいます。多国間主義は、日米同盟という二国間の安全保障のきずなと衝突しかねないようにもみえます」

 

 「しかし、その両立も可能ではあるでしょう。アメリカ側でも現オバマ政権は前ブッシュ政権にくらべれば、国際機関を重視する傾向があります。しかし、日本の民主党が賛成する東アジア共同体はアメリカを排することになりそうだという点で、日米関係に摩擦を生む危険性があります。アメリカはあくまで太平洋国家としてアジアに関与していくというのは、共和、民主両党のコンセンサスですから」

 

 セーチェーニ氏は、三十代の新進の学者として、CSISの日本研究部門でマイケル・グリーン氏を補佐する次席役を務めている。

 

 グリーン氏はもちろん、前ブッシュ政権で国家安全保障会議のアジア上級部長などを務めた日米安保問題のベテランである。

 

 セーチェーニ氏は、懸念の対象となりうることとして、さらに二点をあげた。

 

 「一つは周知の事実ではありますが、日本の政権交代の場合、アメリカと異なって、いわゆる『政権引き継ぎ』の時間がほとんどないことです」

 

 「もし民主党が勝てば、代表の鳩山由紀夫氏はわずか数日内に新閣僚を決め、基本の政策の大枠も固めねばならない。外交や安全保障という領域ではきわめて難しい作業です。その短い引き継ぎのあいだに、継続性が求められる対外政策、対米政策に支障が起きないだろうかという懸念があります」

 

 「第二は、民主党がもしかするとほかの政党との連立政権を組まねばならなくなる可能性です。その連立の相手が、安全保障などで旧態依然の政策を掲げてきた政党だとすると、新政権の対米政策にはまた新たな屈折した要因が加わってしまいかねません」

 

 セーチェーニ氏が想定しているのは明らかに、民主党が社民党と連立を組む可能性だろう。

 

 社民党が安保や防衛で日米同盟に対して硬直した姿勢をとってきたことは、米側にも知られているのだ。

 

 セーチェーニ氏はさらに、民主党新政権への全体的な懸念を述べた。

 

 「鳩山氏個人はきわめて現実的、実利的な政治家だと思います。しかし民主党のアメリカへの姿勢となると、『より対等』とか『ノーといえる日本』というたんに強気な面が目立ちます。なにしろ党内にあまりに多様な意見を持つ、あまりに多様なメンバーが混在しているために、政党として対外的にどのような政策を実行することになるのか、まったくわからない点はやはり不安です」

 

 このへんの未知への「不安」や「懸念」がアメリカの識者や当局者の認識の共通項だといえそうである。

 

(終わり)