いま世界柔道選手権大会がオランダで開かれ、熱戦が展開されています。
 
柔道がいかに国際的な存在となったか、改めての立証でしょう。
 
そんな柔道と国際交流について、ワシントンでの一例を紹介します。
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【外信コラム】ポトマック通信 別れの夏
2009年08月27日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 日ごろ通う「ジョージタウン大学・ワシントン柔道クラブ」からまた一群の熱心なメンバーが去っていった。
 
 夏にはつきものの人の去来である。
 
 今回、別れを告げたのはフランス人のシトボン一家だった。

 母親のナオミさんはフランス政府からワシントン地区の国立衛生研究所(NIH)に派遣されてきた小児科医で、次男の9歳のダニエル君と三男の7歳のノエ君を連れて毎週、クラブに通ってきた。
 
 3人ともフランスですでに柔道の手ほどきを受けていて、クラブでは最初から熱心な乱取り練習をするようになった。

 とくにノエ君は素質があり、左構えから大外刈り、大内刈りと、思い切った技をかけてくる。
 
 私も何度も練習をしたが、小さい体でも、本気でこちらを投げようと必死で挑んでくる様子にいつも好感が持てた。
 
 首都地区の少年大会でも毎回、3、4人を投げる好成績を残していた。

 そんな一家がフランスに帰ることになった。
 
 なにしろこの1年余、週に3回も顔を合わせ、体をぶつけ合っていた相手たちだから、おたがいになじみも深い。
 
 夏の一夜、練習が終わった後の道場でナオミさんが持参して手製のケーキ類を広げ、送別デザート・パーティーとなった。

 ナオミさんが「この1年以上、この柔道クラブは友情や訓練や憩いの場として私たち家族の生活の特別な一部となっていました」と感謝と惜別の言葉を述べると、送り出す側もみな寂しそうな表情だった。(古森義久)
 
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