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アメリカ議会でもこの小沢氏主導の民主党の政策に懸念を述べる人たちは少なくない。

 

 ただし同盟相手国とはいえ外国の政治問題だから、アメリカの議員たちが自分の名を出して、論評することはまずない。

 

 珍しい例としては下院外交委員会のアジア太平洋問題小委員会の委員長エニ・ファレオマベガ議員(民主党)が公聴会の場で述べた言葉がある。

 

 六月二十五日に開かれた日本についての公聴会での冒頭発言だった。

 

 「日本の民主党の選挙公約となる政策草案には在日米軍の地位協定の全面的な見直しや海上自衛隊のインド洋からの撤退というような日米両国間に摩擦を生みそうな項目が含まれています」

 

 ごく控えめな表現ではあるが、小沢氏が先頭に立った「インド洋からの海上自衛隊撤退」という新政策が日米間に摩擦を引き起こす展望を明確に語っていたのだ。

 

 同公聴会に証人として登場した著名な学者ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授も、小沢氏の個人名こそあげなかったが、小沢氏の主導する民主党が政権を取った場合の「政治不安定」や「対外政策の再編」の可能性を指摘して、この種の摩擦が「日米同盟の終わりの始まり」を招くという見解があることを指摘していた。

 

 下院外交委員会の民主党側政策スタッフも「小沢氏はけっきょくは日米同盟を縮小し、アメリカとの距離を広げようとしているようだが、議会のいまの中国への関心の高まりを考えると、日本側のそうした動きはアメリカ議会にとっての日本や日米同盟の意味を軽くする可能性が高いと思います」と語った。

 

 日米政策関連の研究員として最近、日本に在住した経験もある同スタッフは次のようにも語った。

 

 「いまのアメリカ議会は中国への関心にくらべ日本への関心はほとんどない状態です。他方、中国は七月二十七、八両日のワシントンでの米中戦略経済対話に王岐山副首相を先頭に百五十人もの大政府代表団を送り込んできて、アメリカ議会の中国への興味をあおりたてました。そんなときに日本の民主党が小沢氏の主導でインド洋での自衛隊の活動停止の宣言や、普天間基地の移転問題の再交渉要求などをすれば、実質とシンボルの両面で日米関係に大きな痛手を与えることになり、アメリカ議員の多くの関心をさらに中国へと向けさせます」

 

 アメリカの連邦議会のメンバーたちにとっても小沢氏主導の民主党の「日米同盟での日本のより対等な役割」の主張は、同盟からの離反として受け取られかねないというのだ。

 

 そしてそのプロセスでは最近、米中G2などという言葉で特徴づけられる中国の役割拡大が加速させることにもなるだろう、というのである。

(つづく)

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