徳岡孝夫氏といえば、毎日新聞出身の記者であり、コラムニストであり、作家でもあります。私が毎日新聞記者として長年、仰ぎみてきた鬼才の大先輩でもあります。
その徳岡氏の優れた著作活動の一つに「紳士と淑女」という覆面コラムがありました。文藝春秋刊行のオピニオン誌『諸君!』の巻頭に毎月、もう30年も掲載されたコラムです。ただし『諸君!』
は今年、休刊となりました。
その「紳士と淑女」コラムの集大成が今月、文藝春秋から新書として出版されました。『完本 紳士と淑女』というタイトルです。
その「まえがき」にいま日本を動かす小沢一郎氏に関する興味ある記述があるので、紹介しましょう。なおこの書は元のコラム同様、敬称は略です。
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「(前略)民主党の全党員から絶対君主のように崇拝されていた小沢一郎が、秘書の不用意なミスを検察に見咎められ、連れていかれた。小沢の口からは『検察の横暴だ』『日本は警察国家か』という怒りのセリフが出かかったようだが、さすがに思いとどまり、そのかわり『秘書の犯罪』については一言も弁明せず、やがては検察に仕返しできる日の到来を待っている」
「これだけでも書く者にとっては立派なネタだ。しかも話はそこで終わらない。民主党の有志は、無罪なのに十七年も放り込まれた『足利事件』の『元犯人』を招いて、聞き取りを始めた。察するに天下を取ったあかつきには、小沢の秘書を大冤罪事件の被害者にして、検察を締め上げたいのではなかろうか?(後略)」
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まだまだおもしろい記述は続きます。
コメント
コメント一覧 (12)
ご紹介感謝です。早速書店にいって買い求めます。
きっと読むと、いまのご時世では、元気が出ますよ。
彼岸の中日のお墓参りですか。
いいですね。
確かに面白さにおいては評価に値しますが、文章を落ち着いて読むと面白いだけかもしれませんね。
読まなくても「面白いだけ」と分かっちゃうあなたの能力はすごいですね。
>鈴木 茂 さん
>
>読まなくても「面白いだけ」と分かっちゃうあなたの能力はすごいですね。
もちろん、提示された部分だけの話です。
おそらく、政治の本質に迫るであろう次回が楽しみです。
徳岡孝夫氏が新聞や雑誌にお書きになった論考を集めた『「戦争屋」の見た平和日本』(文藝春秋刊 1991.08.15第一刷)を読みますと、古森様が折に触れ、徳岡氏の背中を眺めながら記者人生を歩んでこられたことが、なんとなく理解できる気が致します。
『・・日本のジャーナリズムの世界には料理人や盛りつけ係や配膳人は掃いて捨てるほどいるが、荒海に出て魚を獲る漁師は実に少ない。乏しい水揚げを包丁さばきでごまかし、大衆の嗜好に合う整形手術を施したうえで提供する。それはテレビも同じで、私はニュースキャスターなど有害無益なものだと思っている。現地で取材した記者が書いた原稿をアナウンサーが読み、視聴者(新聞の場合は読者)が判断を下せばよい。それが出来ないほど大衆はバカではない。・・・』
あとがきから引用しました。
ご紹介の新刊も、ぜひ一読したいと思います。
徳岡さんの以前の書の紹介、ありがとうございました。
彼はいま闘病中です。
諸君の廃刊が決まってからどこかのコラムで徳岡さんだと書いているのを読んで、「民主主義を疑え」をさっそく注文しました。
古森さんが仰ぎ見るほどのお方でしたか。
あの舌鋒の鋭さからさもありなんです。
正直時々力量不足で理解不能でしたが、
「完本」あらためて読んでみます。
ちなみに徳岡氏は英語で文章を書くことでも傑出した能力を持っています。
ニューヨーク・タイムズにおもしろコラム記事を5,6回、連続で載せたこともあるくらいです。
93年頃、「諸君」を店頭で見つけ、我が意を得たような気になったのが巻頭の「紳士と淑女」でした。以来海外赴任してもずっと愛読し続けていたのが、なぜか「紳士と淑女」を除き、取り上げる記事や内容がおかしな方向に変化しているなと思ったのが2006年頃かと思います。数年前からとうとう購入するのをやめていたら今年廃刊になってしまいました。
一説によると文藝春秋社の権力構造が変わって半藤一利の支配下になってしまい、「諸君」編集長も挿げ替えられ、芯があった「諸君」が骨抜きになり、廃刊させられてしまったとのこと。
「紳士と淑女」早速購入しました。かの真のオピニオン誌であった「諸君」を廃刊に追い込んだ文春の出版社としての残された良心か罪の呵責かは知りませんが、いずれにしろ纏まって新書になったことは本当に喜ばしい限りです。
「諸君!」のここ3,4年の内容の変化、そしてその会社のトップの政治志向の変化、ご指摘の諸点は私の認識の範囲内でもあります。