ニューヨークでの日中首脳会談で鳩山由紀夫首相が明らかに熱を込めて提案した「東アジア共同体」構想に中国の胡錦濤国家主席はなにも述べなかったことが報じられました。

 

この点は注目すべきでしょう。

会談を前に握手する鳩山首相(左)と胡錦濤・中国国家主席=21日、米ニューヨーク市内のホテル(代表撮影)

 

 

北京での中国政府代表たちも鳩山首相の東アジア共同体構想には誰もがノーコメントを通しているようです。

 

いまのままではせっかくの鳩山大構想も日本側だけの片思いに留まった感じです。

 

この構想が最初は中国が打ち上げ、プッシュしてきた経緯はすでに広く知られています。中国の提案した「東亜共同体」が東アジアからアメリカを排除しようという意図を含んでいたこともさまざまな例証から明らかでした。

 

しかしそれから時間が過ぎています。

 

いまの中国政府は東アジア共同体の推進への熱意を減らしたような感じでもあります。スタンスの微妙な変化も感じさせられます。その一つは中国政府の代表が東アジア共同体なる存在にアメリカを含めてもよいという趣旨を最近、発言するようになったことです。

 

東アジアの共同体なる組織に太平洋の彼方のアメリカが加わるとなると、東アジアという地域の独自性が失われ、もう東アジア共同体は東アジアではなく、アジア・太平洋共同体のようになってきます。

 

そこですぐ連想されるのは現存するアジア太平洋経済協力会議(APEC)です。共同体と経済協力機構の差こそ大きいですが、

東アジア共同体にアメリカを加えた組織となると、いまのAPECがきわめてそれに近い存在として浮かびあがります。

 

しかしアメリカを含めたアジアの「共同体」というのでは、地理的な概念、鳩山さんの好きのような空間という概念から考えると、出発点の基軸だった「東アジア」はもうどこかへ吹き飛んでしまいます。

 

東アジア共同体という構想を中国がアジアからのアメリカ排除の道具にしようと意図するこの基本が変わってしまったという証拠もありません。ただなにかが変わりつつあるという印象なのです。

従来の政策が少しも変わっていないならば、胡錦涛主席は鳩山首相の東アジア共同体創設提案にただちにイエスを表明したことでしょう。

 

さあ、胡錦涛主席はじめ中国の政府の代表たちはいまなぜ日本の首相が正面から提唱した「東アジア共同体」構想に沈黙を保つのか。

 

ひょっとしてアメリカを刺激したくないからかもしれません。

 

あるいは中国はアメリカと二国でアジアや太平洋を仕切っていくG2方式を優先させたいのかもしれません。

 

あるいは人や物や金が自由に国境を越えて動くなどという「共同体」を東アジアに創設することの夢想、幻想がわかってしまったのかもしれません。

 

とにかくこの中国の沈黙には注視したいと思います。