金正日総書記の後継は誰なのか。
 
もっぱらの予測は三男の金ジョンウン(当初は正雲と表記された)だということですが、そうはならないとの見解がワシントンで北朝鮮出身の気鋭の研究者により表明されました。
 
とにかく権力の移譲自体がスムーズにはいかないだろうという予測なのです。
 
そのことを記事にしました。
 
北の世襲に時間の壁? 亡命の研究者「集団指導も」
2009年10月29日 産経新聞 東京朝刊 国際面


 

 【ワシントン=古森義久】北朝鮮の朝鮮労働党中枢で外貨の獲得にあたり、韓国に亡命後、現在は米国の民間研究機関「北朝鮮人権委員会」の研究員を務める金光進氏が27日、「金正日以後」と題する報告書を発表し、北朝鮮の権力移譲が円滑に進まない可能性がますます高まっているとする予測を明らかにした。

 金光進氏は報告書の発表とともに、ブルッキングス研究所でのセミナーで講演し、金正日総書記の病気の突然性や北朝鮮の国家体制の弱さのために、後継者との情報がある三男の金ジョンウン氏への権力移行が円滑に進む保証は全くないことを強調した。

 報告書によると、ジョンウン氏への世襲でも、
 
(1)金総書記による決定の確認
 
(2)金一族関係者(総書記の妹の金敬姫氏や夫の張成沢朝鮮労働党行政部長)による受け入れの確認
 
(3)後継者の段階的な訓練のための昇進人事の実施
 
(4)国民一般の広範な認知-
 
 などの手続きが不可欠とされ、後継者のトップポストへの就任には時間がかかる。
 
 このため、権力移譲には世襲以外の体制も必要とされ、暫定政権や集団指導体制が浮上することもありうるという。 

 報告書は、権力が時間をかけてジョンウン氏に世襲されるという方針が打ち出される場合でも、
 
 (1)世襲以外の後継として「摂政」の形で張氏が権力代行を務める
 
 (2)金総書記が張氏への暫定的な権力移譲にも難色を示した場合、集団的指導体制が誕生する
 
 (3)非世襲の後継政権でも恒久になる場合がありうる
 
 -などというシナリオを打ち出している。

 “金総書記後”に権力がどのように継承されても、これまでのような金正日氏個人の絶対独裁制を保つことはきわめて難しい-との予測を報告書はしており、締め付けがいくらかは緩和されて人権弾圧や政治犯の拘留も弱まる見通しがあると分析している。

 なお、報告書は金書記の長男の金正男氏を世襲の候補者リストには加えていないが、もし中国が全面支援して推せば、正男氏の権力取得もありうるとしている。
 
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   張成沢氏