鳩山政権の「事業仕分け」という名の予算削りには論議が集中しています。

 

 その手法の乱暴さへの反対も高まっています。

 

 とくに科学技術関連の予算への大ざっぱな抹殺には深刻な懸念が表明されています。

 

 アメリカで長年、医療関連の研究にかかわってきた日本人学者からもその懸念が述べられました。

 

 私の知人でもある越谷直弘氏です。越谷氏がすでに文科省の中川副大臣らに送った請願文の内容を以下に紹介します。

 

 

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文部科学省担当副大臣 中川正春様・政務官 後藤斎様

 前略
 米国 B・ロックフェラー脳神経科学研究所で准教授を務めて
 おります越谷直弘と申します。

 

 このたび日本の行政刷新会議の「事業仕分け」作業についてのニュースに心を痛め、以下の意見を寄せさせていただくこととしました。


 科学研究の大幅な抑制は、1年で、その直後に留まらず将来に対して計り知れない悪影響あると考えられます。

 

 土木や福祉など他の公共事業とは全く性質を異にする点であり、是非周知させて頂ければと思います。

 

 先生方には当然なことと思いますので、以下、事情の不明な方々へという文体にさせて頂きます。

 科学は研究室に於ける文化であり、一年一年の重複によるたゆまぬ 継承が必要で、一旦絶えれば復旧は困難です。

 

 しかもそれは、学生や若手が非営利の研究キャリアを諦めただけで途絶えてしまう性質の、非常に脆弱な文化であることを、ここで強調させて頂きます。


 そして1年度、フェローシップなどの募集をやめるだけで、その年 は勿論、それに続いていた後輩たちも、非営利研究キャリアを諦めてしまうでしょう。

 

 本質的な、新分野を拓くような科学は、営利団 体では無理ですが、それこそが日本の科学の裾野を保っているのです。

 

 若手のサポートを断てば、あっというまでしょう。

 また、スーパーコンピュータに代表される先端科学技術は「世界一 でなくていい」といった性質のものではなく、アポロ計画がランド マーク事業として多くの周辺科学の絶大な向上を促したのと同様、全体を引っ張る効果にこそ最も文化的、産業的価値があるのです。


 また日本の現在のレベルは世界に一目置かれていますが、このような事業を取りやめたら、全体の科学レベルも低く、ひいては先進度 も低く見られることになるでしょう。

 

 国際的観点では、例えば日本から財政援助を受け、国連の分担金も3%しか払っていない中国 は、有人宇宙ロケットを飛ばし、現在日本を上回るスーパーコンピュータを誇っています。

こちらアメリカではオバマ大統領が景気刺激策として、科学研究に大幅な予 算を注入したばかりです。

 

 国立保健研究所 NIH は、大学研究 のグラントも出している関係上、近年2兆円強の予算が付いていますが、1500億円の注入がありました。

 

 日本の逆行は甚だしい限 りです。

 

 公共事業として、現在と将来の日本への投資という点が看過されているのではないでしょうか。

 土木や福祉の削減とは異なり、一時の抑制が長期の悪影響、もしかしたら百年単位の坂道を転がるきっかけとなる危険性は、強調してし過ぎることがありません。

 取り急いでの乱文をご容赦ください。


 国民への周知と、科学研究の御支持を何卒お願い申し上げます。

                                草々
                          2009年11月23日

                            越谷直弘拝