いやはや、朝日新聞がこれほど露骨なゴマカシをするとは、驚きでした。

 

 日本の非核三原則の虚構を暴いたエドウィン・ライシャワー元駐日アメリカ大使の発言について、いまになって実に悪質で、手のこんだ虚偽の報道をしているのです。

 

 この「ライシャワー発言」報道の当事者として抗議をしたいと思います。

 

 朝日新聞2月17日朝刊に「インタビュー 日米同盟の見方」という長い記事が載りました。ニューヨーク駐在の朝日新聞の山中季広記者がライシャワー大使の補佐官だったジョージ・パッカード氏にインタビューした記事です。パッカード氏の近著『ライシャワー氏の昭和史』の内容に沿った記事でもあります。

 

 パッカード氏は最近、『ライシャワーの昭和史』という書を刊行しました。ちなみに私もパッカード氏とは長年、知己があり、今回の書の執筆の最終段階で同氏にランチに招かれて、「ライシャワー発言」の取材などについていろいろ質問されました。

 

 パッカード氏の著書にも明記されているように、ライシャワー氏は1981年5月9日、当時、毎日新聞記者だった私のインタビューでの質疑応答で、私の質問に答えて、「日本政府の『核持ち込ませず』という宣言にもかかわらず、米軍艦艇は核兵器搭載のまま日本の領海を通過し、日本の港に寄港してきた」と明かし、「日米政府間には『持ち込み(イントロダクション)』という言葉の解釈の違いをそのままにする秘密の合意があった」と述べました。

 

 日米密約の暴露であり、非核三原則の虚構の公表でした。毎日新聞はこの「ライシャワー核持ち込み発言」を81年5月18日朝刊で大々的に報道しました。この報道はスクープとなり、その年の日本新聞協会のニュース部門賞を受けました。

 

 当時、毎日新聞のこの報道を受けた日本の他のメディアはさっそくライシャワー氏にその件での取材を申し込み、同氏はそれを受けてアメリカでの5月18日にハーバード大学で記者会見を開きました。そしてその会見の場で、私に語ったこと、つまり毎日新聞の当初の報道と同じことを繰り返しました。つまり核持ち込みの虚構を確認したのです。

 

 ところが今回の朝日新聞の報道はこのライシャワー氏が古森とのインタビューで虚構を暴露した事実や、毎日新聞がその暴露を大々的に報道した事実、さらにはその毎日の報道を受けてこそライシャワー氏が記者会見を開いた事実など、すべて無視しているのです。無視というより、故意の隠蔽というほうが正確です。

 

 そしてこの朝日新聞の報道はライシャワー氏が日本の各メディアとの共同記者会見の場で、初めて核持ち込みの虚構を暴露した、と報じているのです。これはどうみても虚偽、虚構の報道です。

 

 朝日新聞のこの記事には手のこんだデザインの年表まで付いていますが、そのなかで「81年 ライシャワー氏『核密約』を暴露する記者会見」と記しています。同氏はこの会見では「暴露」はしていません。毎日新聞報道の「確認」をしただけなのです。

 

 朝日の今回の記事は本文ではパッカード氏への記者の質問として「81年に(ライシャワー氏は)会見で密約を公表した。なぜでしょう」とはっきり書いています。共同の記者会見で初めてライシャワー氏が密約を公表したとする「歴史の書き変え」、つまり虚偽記述です。

 

 同じ記事によると、この質問に対し、パッカード氏は「会見は私が設定しました」と答えています。明らかに毎日新聞報道を受けての共同記者会見のことを指しています。ちなみに私のライシャワー氏のインタビューの設定はすべて二人の間だけの連絡ですませ、他の誰も介入はしていませんでした。

 

 今回の朝日新聞の報道はライシャワー氏が毎日新聞記者だった私とのインタビューで暴露をした事実を抹殺し、その事実が共同記者会見で初めて明かされたとしているのです。虚報、捏造、デマなどと呼ばれても仕方ないでしょう。

 

 朝日新聞はまずライシャワー発言がどうなされたか、歴史的な事実関係を勝手に削除しています。日本新聞協会賞というのがその歴史的な事実関係の証拠の一つです。だから朝日新聞として毎日新聞の報道の実績を無視どころか抹殺したことになります。

 

 そのうえの今回の朝日報道の悪質さは、この記事の主題であるパッカード氏の著書『ライシャワーの昭和史』の記述自体をも歪曲、改竄していることにもあります。この書はライシャワー発言が当時、毎日新聞の記者だった古森義久によって引き出されたことを具体的、かつ詳しく書いているのです。

 

 同書に以下のような記述があります。

 

「ライシャワー自身の信義が広く問題視されることになる事件がもう一つあった。1981年5月初め、毎日新聞記者の古森義久が、米日同盟についての一連の報道のために、ハーバードでライシャワーにインタビューした(以下略)」

 

「古森が、核兵器の日本への『イントロダクション』(日本語でいう『持ち込み』)に関連して、ライシャワーの安保条約についての理解をあらためて質問すると、ライシャワーは、核兵器を積載した艦艇の日本の港への寄港は『イントロダクション』に当たらない、とはっきり答えた。さらに、この点については1960年に日本政府と口頭での了解があった、63年4月、大平外相とこの了解事項を再確認した、と述べた」

 

「古森が引き出したライシャワー発言(1981年5月18日の毎日新聞記事)は東京でセンセーションを巻き起こした」

 

「そのとき私(パッカード氏)はライシャワーと行動をともにしており、5月18日、ハーバード・イェンチン研究所でこの件について日本の記者に対する記者会見を手伝っていた」

 

 

 パッカード氏の著書は上記以上に詳しく古森記者と毎日新聞によるライシャワー発言報道の経緯を説明しています。

 

 同書の記述から5月18日の記者会見が毎日新聞の報道があったからこそ開かれ、その会見ではライシャワー氏は私に語ったことを繰り返したという事実も明白にされています。

 

 ですから朝日新聞の山中季広記者は同書での古森によるインタビューの詳しい事実関係を知りながら、そのすべてを抹殺して、ライシャワー氏が共同記者会見で初めて暴露をしたとする捏造を書いたことになります。

 

 朝日新聞はそもそもライシャワー氏の発言を支持し、日本政府の虚構やウソを非難しています。虚偽はよくない、というわけです。ところがその当事者自身が平然と、こんな虚偽の報道をするとは、責任者のコメントをいただきたいところです。

 

 それほどまでに古森がこのライシャワー発言を引き出したことを認めたくないのでしょうか。