朝日新聞が虚偽を報じる「ライシャワー核持ち込み」発言について、その最初の報道にあたった当事者側として、新たな記事を紹介します。
私はちょうどいま産経新聞で「体験的日米同盟考」という連載を始めており、2月22日掲載のその第2回もライシャワー氏の例の発言を取り上げました。そこではライシャワー氏にインタビューした当事者として、まず毎日新聞が発言の全容を詳しく報道し、
朝日新聞を含む他のメディアはその報道を知って、ライシャワー氏に取材し、同氏が共同の記者会見を開いて、当初の発言を繰り返し、確認したという「真実」の経緯を改めて述べています。
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【安保改定から半世紀 体験的日米同盟考】(2)「ライシャワー発言」への反応
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ライシャワー発言による核持ち込み問題をめぐり野党の追及を受けてむっつり顔の鈴木善幸首相(左)と園田直外相=参院連合審査 |
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「日米間に了解はあった」と記者会見で認めるライシャワー元駐日米大使(UPIサン) |
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■日本は「外交フィクション」にした
エドウィン・ライシャワー元駐日米国大使が日本政府の非核三原則の虚構を明かす発言を報じた後の私はカーネギー国際平和財団の研究員の立場に戻った。毎日新聞の同僚や先輩たちが「ライシャワー発言」報道を続けるのをニューヨークやワシントンからみつめることとなった。
ライシャワー氏はその後、日本のメディアとの会見で私に述べたこととまったく同じ内容の「虚構のメカニズム」を明らかにしていた。
だから同氏の発言は単なるスクープ報道という域を超えて、「元大使による暴露」として定着し、国会での論議の対象ともなった。
おなじみの陰謀説もすぐ登場した。
米側でのこの種の劇的な事態の展開に対して日本側で必ず出てくる「真相はこうなのだ」という即席の断定である。
京都の竹林の豪邸に座した日本の文化人が「ブッシュがフセイン政権を攻撃したのはひとえにイラクの石油を狙ったからです」と水晶玉のご託宣を告げるような症候群は1981年初夏にももう存在した。
最初に出たのは「ライシャワー氏はレーガン政権と共謀し、日本の核アレルギーをなくし、米国主導の軍拡に同調させるためにこの発言をしたのだ」という説だった。
この説に従えば、私は米国の策謀にうまく利用された無知な記者となる。
しかし現実にはレーガン政権はライシャワー氏にも私たちの報道にも怒っていた。
それまでの接触では笑顔を絶やさなかった国防総省の日本担当の係官はたじろがされるほど険しい語気で私に告げたものだった。
「この報道で私たちがどれほど損害をこうむったことか。せっかく軌道に乗りかけた日米防衛協力が大幅に後退です。できることなら、あなたをペンタゴン出入り禁止にしたいところです」
時の国務長官アレグザンダー・ヘイグ氏がライシャワー氏を守秘義務違反で刑事訴追することを検討しているという米側の報道も流れた。
そもそも民主党リベラルのライシャワー氏と共和党保守のレーガン政権との共謀ということは考えられなかった。
そのうえに同氏自身、インタビューで私がなにを質問するか、なにも知らなかったのだ。
米国政府は公式にはライシャワー発言の真偽については「ノーコメント」を通した。
日本政府の立場や日米安保関係の保持を考えれば、ほかに対応の方法はなかったのだろう。
ライシャワー氏の身近にいた元の弟子や部下たちには私を非難する向きもあった。
ハーバード大学での弟子のエズラ・ボーゲル同大教授や大使時代の補佐官だったジョージ・パッカード氏(後に国際大学学長)は引退したばかりで、くつろいだライシャワー氏を私が巧妙に誘導し、問題発言をさせたとして批判を表明しているという話を聞いた。
だが当のライシャワー氏が一貫して「古森記者のインタビューは公正だった」と述べてくれたことが救いだった。
しかし日本の政府はライシャワー発言をみごとに否定した。
時の鈴木善幸首相や園田直外相は「米軍の核兵器搭載艦の寄港や領海通過は日米の事前協議の対象となるが、米側からの協議の申し入れはないから、核の『持ち込み』(寄港・通過)はない」という趣旨を繰り返した。
官房長官だった宮沢喜一氏にいたっては「ライシャワー氏は一市民であり、もう高齢だから」とまで語っていた。
だが米国のメディアは一様にライシャワー発言が真実を明かしたという立場で報道していた。
主要新聞は私たちの報道を事実として扱い、日本政府の対応を「外交上のフィクション」と断じていた。
なかでも印象に残ったのは『アジア・ウィーク』というニュース週刊誌の特集記事の冒頭だった。
日本側の態度を『戦艦大和ノ最期』の著者の吉田満氏が別の自書『戦中派の死生観』で述べた次のような言葉の引用で批判していたのだ。
「第二次大戦に近づく日本に最も欠けていたのは、現実を直視し、自国をもっと幅広い視野でみる能力、そしてそうした方法で政策を作るという勇気だった」
戦後の日本も同じだというのだ。
この言葉は29年後のいま日米同盟を考えるにあたっても、なおずしりと重く迫ってくるようである。(ワシントン 古森義久)
[etoki]ライシャワー発言による核持ち込み問題をめぐり野党の追及を受けてむっつり顔の鈴木善幸首相(左)と園田直外相=参院連合審査[etoki]
[etoki]「日米間に了解はあった」と記者会見で認めるライシャワー元駐日米大使(UPIサン)[etoki]
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コメント
コメント一覧 (12)
真実を陰謀として、一笑する汚いやり方は、何と言うか、これが左翼の文化人や評論家の陰謀なのです。
>米側でのこの種の劇的な事態の展開に対して日本側で必ず出てくる「真相はこうなのだ」という即席の断定である。
左翼は、アメリカが嫌いだから、どうしても直ぐ、左翼のマスコミは条件反射的に記事を書いて読者を誘導洗脳するのだ。 日本の左翼のマスコミは病気ですね、これはいくら言っても言い過ぎでは無いと思う。
事実はひとつ、我が国が共産化されず自由で民主的な国家であり続けられた、その事がすべてです。その恩恵にすべての日本人(日本語なら日本人はみんなとならなくてはなりませんが)は与っています。日本的な英知というべきでしょう。
>しかし現実にはレーガン政権はライシャワー氏にも私たちの報道にも怒っていた。
>それまでの接触では笑顔を絶やさなかった国防総省の日本担当の係官はたじろがされるほど険しい語気で私に告げたものだった。
実際に古森さんは「好ましからざる外国人」として強制退去させられることもなく、国防総省に出入りを禁止されたわけでもなかったのでしょう。
これが自由で民主的な社会の当然の姿です。むしろ最近の我が国の方が怪しくなってきています。
日米関係における陰謀説の研究というのは、おもしろいテーマです。
左翼がそこにどうからむか、これまた興味ある研究対象ですね。
そうなんですね。
中国と異なり、アメリカでは外国人記者をその報道内容のために国外追放するなんていうことはないのです。
これだけでも日米中が正三角形ではないことがわかりますね。
戦後の日本も同じだというのだ。
>
本当に、この表現の通りですね。非核三原則だけでなく、武器三原則もそうですし、先日の北沢防衛大臣の在日参政権でも「民団幹部を知っているから大丈夫」発言も然りです。 麻生氏じゃないですが、民主党では「原則」を「幻想」と読み間違える議員ばかりなんでしょうか。 こう云う連中は、政権交代で「オレオレ詐欺」もやったが、支那、朝鮮から「オレオレ詐欺」をやられても簡単にかかってしまう類なんですね。 残念なのは、国民もその幻想にかかってババを引いてしまった事です。
ところで、南朝鮮や民団との「在日参政権密約」のことを誰も口にしないのは本当に不思議でなりません。
なるほど、
いまの日本に流行るのは、政治でも報道でも、「オレオレ詐欺」ということなんですね。
>
>中国と異なり、アメリカでは外国人記者をその報道内容のために国外追放するなんていうことはないのです。
>
>これだけでも日米中が正三角形ではないことがわかりますね。
小沢人民解放軍野戦隊長の命令にだけは敬礼!の姿勢で
何の批判もなくつき従う鳩山脱税民主党からすれば、
中国のほうが近いのでしょうね。
日本とか自由とか民主主義とか人権とか平等とか、
くそ喰らえ、壊れてしまえ、
と思っていなきゃできない態度、政策です。
何も知らなかったから脱税ではない、
と稀代のアホ首相が自信満々で答えていますが、
知らないということは、これまで
自分の収入と納税に一切かかわらなかったと言うことであり、
意図的にそういう状態をつくらなければ、
いい大人が自分の収入と納税について
知らずにすむはずがありません。
脱税を目的として確信したうえでの秘書への丸投げで、
ばれたら知らなかった、で逃げ切ろうと考えていなきゃ、
ありえない反応ですね。
そうじゃなきゃ、外遊の飛行機の中で、
無税の国に行きたいなどというセリフが出てくるわけがない。
となると、現状は日本というまあ正常な国が異常な指導者たちにハイジャックされたということなのでしょうか。
でもそのハイジャックも日本国民の多数派が許容したからこそ、ということなのでしょうか。
長崎県民を恫喝したようですから異常な指導者です。
また子供手当てで釣られた国民は
子供たちの校舎補修費を事業仕分けされました。
地震多発の日本で全国にある老朽化した校舎補修は、待った無しの状況なのに子供の命、安全とを引き換えにしたのです。
政権交代は最大の景気対策とか、高速道路も無料化とか消費税4年は上げないし議論もしないなど、民主党の嘘、まやかしをサヨクメヂィア及び主要テレビのコメンテーターたち(金銭を授受してたようです)が煽りました。
嘘、本当を見抜けない愚民が多数派、これが日本人です。
あの夏、国民を信じて「考える夏にしてほしい」と言われた国思う真実の政治家がおりました。愚民は気つきもしない、それが情けないです。
>この言葉は29年後のいま日米同盟を考えるにあたっても、なおずしりと重く迫ってくるようである。
重い言葉ですね。
チャンネル桜の番組で塚本三郎氏が「私たちが中道、自民党は左、民主党は外国人の政党」といって大受けしてしてました。自民党は日本の安全保障にためにはこれが絶対必要だと言い切る勇気がなくて、その場その場を凌いで「政権維持が目的化」してしまいました。
いまの政権は「それ以上に酷い」のですから、何をかいわんやです。早くまともな政権を持ちたいと思う今日この頃です。
>となると、現状は日本というまあ正常な国が異常な指導者たちにハイジャックされたということなのでしょうか。
>
>でもそのハイジャックも日本国民の多数派が許容したからこそ、ということなのでしょうか。
異常過ぎる民主党ですね。
みな自民党にあきれて民主党に投票したわけですが、
自民党より異常、というより、
昔の自民党と社会党の穢れた部分だけを取り出して交じり合わせた
日本の政治史上類を見ない汚らしい政権ですね。
たまたま先ほど見ていた週刊誌では、
自民党時代の鳩山が、筑紫哲也のインタビューに、
自分の父親も自分も弟もみな母親に援助してもらっている、
自立はできていない、と答えているようですね。
つまり、母親から巨額の資金が出ていること、
それを政治資金に使っていること、
とっくの昔に、自分で分かっていること。
何も知らなかったなんて、
誰がそんなこと信じるんだというようなあほらしい説明をしていますが、
ようは、今は知らなかったことにしている、
ということなんですね。
貴コメントのような認識が広がれば、日本はより健全となるでしょうね。