アメリカ議会下院公聴会でトヨタの豊田章男社長が2月24日、証言をしました。午後2時すぎから午後5時ごろまで、3時間たっぷり、でした。

 

豊田社長は冒頭の声明を英語で読み上げた後、日本人の女性通訳を通して、日本語で議員たちからの質問や批判に答えました。        

 

 

豊田社長の横に座った北米トヨタ社長の稲葉良見氏は英語で議員たちの質問に応じていました。

 

豊田、稲葉両氏の証言の総括評価をすれば、私の感想は「みじめだった」ということになりましょうか。

 

日本人として、残念だった、という実感です。

 

なぜそうなのかは、山のような報道が日本の各種メディアを通じて流れるので、まあそちらをみてください。

 

ここでは豊田証言の持つ意味について、他の記者が指摘していないことを書いた私の記事を紹介します。

 

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   豊田証言の潜在的危機 日米安保への影響はらむ


 

 【ワシントン=古森義久】トヨタ自動車の豊田章男社長の米国議会での証言は自動車問題が日米関係を揺さぶり、対立を生む一方、逆に両国のきずなを強めるという屈折した歴史のハイライトとなる。
 だが今回の展開は「米国民の生命への危険」が前面に押し出されただけでなく、米国政治の複雑な要因もからみ、豊田証言への米国民の反響いかんでは、日米関係の安全保障など他の領域にも影響を及ぼしかねない潜在危機をもはらんでいるといえる。

 ◆犠牲者家族も証人

 

 一連のトヨタ公聴会の開催を求めた議会側は、トヨタ車に「突然の加速」を生む欠陥があるとの疑惑を追及するという技術的な取り組みに焦点をしぼる姿勢をみせた。

 

 そのために欠陥のため事故の犠牲になったと主張する家族らをも証人とし、米国民の生命への危険をトヨタの責任とする前提が23日の下院公聴会をすでに激しい攻撃基調にした。

 

 しかも米側の議会やメディアでは、トヨタ自動車の当初の対応を「くさいものにフタ」とか「トップが責任逃れ」とまで非難する声が多かった。

 

 日本の企業体質や法律制度までをも米国と批判的に比較して、文化論、社会論の形で日本全体にネガティブな光を当てる議論も少なくない。

 

 トヨタは豊田社長が証言でも強調するように米国で自社製品の販売を50年、生産を25年続けてきた。

 

 その製品は一般米国民に愛好され、米国内十数カ所の工場は20万人近くの雇用を生み、巨大な販売網が全土に確立された。

 

 乗用車の販売台数で全米1位という実績はトヨタがどれほど米国社会に同化したかを明示していた。

 

 ◆数カ月で悪役に

 

 しかしこんな実績のトヨタのイメージもほんの数カ月の出来事でがらりと変わり、悪役として議会の追及の的とされてしまった。

 

 その理由はやはり、実際に起きたトヨタ車の事故の特異な状況とトヨタ側の当初の反応の鈍さとみるのが適切だろう。

 

 その非難が豊田社長自身の証言への強い要求という形をとったのは、米国社会でのトヨタの存在の巨大さのためでもあろう。

 

 自分たちの生活にこれほど入り込んだ企業の最高指導者に直接、問いたいという次元の要求だといえる。

 

 だがトヨタ非難の広がりの速度や規模には他の要因がからむことも否定できない。

 

 現にオバマ政権非難の急先鋒(せんぽう)となる全米トップのラジオ政治評論家、ラッシュ・リムボウ氏は「オバマ政権は自己の政策不振の糊塗(こと)や事実上、国有化したGM(ゼネラル・モーターズ)の支援のためにトヨタたたきをあおったのだ」と連日のように述べている。

 

 米国の自動車企業を抱え、労働組合と密接な中西部、北部の民主党議員たちがトヨタ糾弾の主力となり、トヨタの工場を抱える南部などの共和党議員たちがトヨタ擁護に回るという構図も、今回の事態の政治側面を示している。

 

 だが米側にこうした歩調の乱れがあっても、豊田証言が象徴する日米間の自動車問題が内蔵するマグマは強大である。

 

 日本車問題が米国の経済だけでなく政治や安保にまで大きな余波をぶつけた実例は過去の日米関係でも顕著だった。

 

 日米間の従来のきずなにほころびがみられる現在、このトヨタ問題がどのような展開をみせるか、予断はできないのである。

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