国会でのNHK平成22年度予算審議というのをテレビでみて、驚きました。

 

 民主党議員のNHKの活動目的についての質問に答えて、NHKの福地茂雄会長が「世界平和の理想の実現と人類の幸福の実現」と述べたのです。

 

 この回答を中心とする質疑応答ではもっぱらNHKの活動の基本目標として語られたのは「世界の平和」と「人類の幸福」だけでした。 「日本」という言葉はそのやりとりで一回も出ませんでした。

 

 日本国民が強制的に払わされる視聴料で運営される日本の公共放送がその活動の基本目標に関して日本を語らないのです。NHKはいつから国際平和機関になったのでしょうか。

 

 日本国民からの公費で運営される事実上の国有メディアであれば、その施主たる日本国民への奉仕をまず最優先させるのが当然でしょう。日本国民のために客観的で正確な情報を報じ、物事の考え方としては日本国民という基点からの多様な見解を流すことが責務のはずです。

 

 であるのに「日本の平和」「日本国民の幸福」よりも「世界の平和」「人類の幸福」が先だというのは、日本の公共放送としては倒錯です。なにか気持ちが悪くなる発想を感じさせます。日本は従属的な立場でしかないという考えを思わせるからです。

 

 しかも「世界の平和」という場合の「平和」というのはなんでしょうか。単に戦争のない状態を平和と呼ぶのでしょうが、その[平和」には条件が必要です。

 

 植民地統治下の平和でもいいのでしょうか。

 一党独裁で個人の自由が抑圧される平和でもいいのでしょうか。

 貧富の差が固定されている社会構造での平和でもいいのでしょうか。

 民主主義が否定される平和でもいいのでしょうか。

 奴隷の平和でもいいのでしょうか。

 

 平和というのは、その質が規定されなければ、人間集団のあり方としては意味がありません。「世界の平和」という標語には、その標語を叫ぶ側の価値観や理念が感じられません。

 

 戦争は悪だ、戦争はいけない、と叫ぶだけの平和論はあまりに無責任です。ナチスの悪を滅ぼした戦争は悪なのでしょうか。日本の軍国主義を倒した戦争も悪だったということになると、日本の戦前の国体や政策のあり方が善ということになりますね。

 

 NHKにはぜひ、日本をもっと真面目に考え、「平和」とか「幸福」という一見、深遠や有意義に響きながらも、その言葉単独では現実の国際社会でほとんど意味のない「NHK用語」の乱用はどうぞ、やめてください、というところです。