ワシントンでの中国に関する動きは最近、目をみはるものがあります。

 

 アメリカの政府、議会、軍、民間の研究機関などが中国についての研究報告を出し、中国についての討論のセミナー類を連日のように開いているのです。

 

 そうしたアメリカでの中国に関する動きはほとんどが批判的な見地からだといえます。

 

 そうした動きの一端を紹介します。

 

 私が日本ビジネスプレスの連載コラム「国際激流と日本」に書いた記事の転載です。

 

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10月中旬、米国の「中国に関する議会・政府委員会」という組織が、中国の人権弾圧の詳細を指摘する報告を発表した。

 

 この組織は米国の立法府と行政府が合同で中国の社会や国民の状況を調べ、米国の対中政策の指針とすることを目的に、2001年に結成された。日本にとっても参考となる対中組織であり、今回の報告も日本の政府や国会には有益な指針となるべき内容である。

 

 この委員会は、現在、バイロン・ドーガン上院議員とサンダー・レビン下院議員とが共同委員長を務める。共に民主党の有力なベテラン議員である。オバマ政権の国務省もこの委員会に代表を送りこんでおり、調査機関、政策勧告機関としての同委員会に大きな影響力を与えている。

中国当局による人権弾圧が昨年よりも悪化

 この委員会が今回、発表したのは2010年度の年次報告だった。同報告は、まず中国当局による人権弾圧が昨年度よりも悪化したことを強調し、特に民主活動家や法律家への迫害が増したと述べている。

 

 そして同報告は合計5600人以上の政治犯の詳しい情報をデータベースで公表し、その即時釈放を訴えていた。

 

 迫害や弾圧の内容について同報告は、「政治的投獄の新傾向」として、共産党の一党独裁に批判的な言動を取るノーベル平和賞受賞の劉暁波氏のような作家や、民主活動家、弁護士などの法律家の拘束が大幅に増加したことを強調している。

 

           (ノーベル平和賞を受ける劉暁波氏。いまも獄中にある)

 

 その上で同報告は、劉氏の他にエイズ対策活動家の胡佳氏、人権弁護士の高智晟氏、ウイグル人の言論人ガイラット・ニヤズ氏、チベット人の環境保護活動家カルマ・サムドゥップ氏らの名前を政治犯の代表として挙げ、全政治犯の解放を求めていた。

 

 米国の議会と政府は、足並みを揃えてこの報告書で中国への非難と要求を表明した。中国内部の人権状況を他国があれこれ述べることに対し、中国側からは「内政干渉」だとする反発が当然起きるだろう。

 

 だが、「人権」は国際的に重みを持つ普遍的な価値観なのである。世界のどの国でも、政府当局が人間の基本的な権利を守ることは鉄則だ。国連の人権宣言はその象徴でもある。

 

 だから、日本でも当然、中国の人権弾圧に関心を向け、批判を述べるという姿勢があってしかるべきだろう。

 

 ところが日本では行政、立法、いずれを見ても、中国の人権弾圧の状況を調べ、論じるというメカニズムは存在しない。日本が世界に向かって人間の基本的な権利や自由の重要性を説くのならば、米国のこの委員会の活動を学ぶべきだと言えよう。

(つづく) 
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