北朝鮮の無法行為に対し、中国が六カ国協議の緊急開催を呼びかけました。

 

 しかし中国のそんな呼びかけにアメリカも日本も簡単に応じるわけにはいきません。当事国の中国の日ごろの言動が責任ある大国のそれとは思えないことがまず理由にあげられます。さらには無法の限りの軍事挑発を繰り返し、韓国側に死傷者を出す北朝鮮の行動に六カ国協議という既成の国際フォーラムでの対処はその無法を認知してしまうような印象がつきまとうことも理由です。

 

 中国は本当に国際責任や国際秩序に協調しようというのか。

いやいや決してそうではなく、中国の現実の行動はむしろ逆にすでにできあがった国際秩序を壊し、国際責任には背を向けるとしか思えない実例が多いのです。

 

 その中国の実像についておもしろい論文を紹介します。

 

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【朝刊 1面】


【明日へのフォーカス】論説副委員長・高畑昭男 世界覇権を狙い始めた中国


 

 今年もあと1カ月余になった。21世紀の最初の10年が終わる。日本にとって、次の10年はどんな世界が待っているのか。それを考える上で、最も重要な要素は日米中の相互関係のあり方だろう。

 

 「米中関係が21世紀のかたちをつくる。それは世界のどの2国間関係にも劣らぬ重要なものになる」。昨年7月、こう語ったのはオバマ米大統領だ。

 

 ワシントンで行われた初の米中戦略・経済対話の開幕演説で、中国側を持ち上げた言葉だった。

 

 だが1年4カ月後の今、オバマ氏は当時と正反対の文脈で「21世紀のかたちをつくる関係」に頭を悩ませているのではないか。この1年余、世界秩序を形成する大国間関係の中でも、米中ほど大きく変動した関係はほかに見当たらないからだ。

 

 オバマ氏が先の演説で中国に「責任ある大国」の対応を求めたのは、(1)世界経済(人民元問題)(2)気候変動とエネルギー(米中は世界最大の温暖化ガ ス排出国)(3)世界の安全(北朝鮮やイランの核)(4)地球規模の課題(テロ、国際犯罪、ダルフール紛争など)の4分野だった。

 

 当時、米国では「米中が協調すれば世界の難問に対処できる」という「G2(米中2極)」協調体制への期待が一部に高まっていたことも背景にあったのだろう。

 

 しかし、ものの半年とたたないうちに、どの分野でも中国が「責任ある大国」とは程遠いことが明白となった。だからこそ、米政府は対中政策の本質的な転換に踏み切らざるを得なくなったに違いない。

 

 地球温暖化問題では米中協力を拒み、核実験や韓国哨戒艦撃沈事件などで北朝鮮をかばい続ける。南シナ海を「核心的利益」と宣言し、尖閣諸島問題の関連でレアアース(希土類)問題を起こすに至って、米国の対中認識は「不信」の黄信号から、「警戒」の赤信号に変わった。

 

 中国の姿勢が今回の韓国・延坪(ヨンピョン)島砲撃にもつながったとする見方も多い。最近では、日本の新幹線技術を転用して中東・南米などに自国製品として売り込もうとした知的財産権侵害問題も報じられている。

 

 近着の米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」は2011年以後の世界を予想する特集を組んでいるが、中でもエリザベス・エコノミー氏の「ゲーム・チェン ジャー」(ルール改変者)と題する論文は興味深い。

 

 さまざまな実例を挙げて、今や中国は国際社会の規範やルールを力ずくで自国に有利に書き換えようとしつ つあり、「責任ある利害共有者などという概念は忘れたほうがよい」と厳しく指摘している。

 

 米欧や日本などが築いてきた国際規範を守らず、自らのルールを世界に押しつけるというのは、世界覇権をめざす動きにほかならない。誰かがとがめなけれ ば、来年以降も中国は軍事・安全保障はもちろん、海洋権益、資源・環境、金融、知財権などの分野で、さらに大胆な行動に出てくるかもしれない。

 

 そのとき、米国や日本などの同盟国が問われるのは、中国の横暴をいかに封じるかという意味での対中関係を再構築することだ。それが「21世紀のかたち」に直結する。

 

 オバマ政権は「多極化世界よりもマルチ・パートナー世界」を掲げるが、多国間枠組みで秩序破壊を封じ込めていくにしても、中核となるのは信頼できる同盟関係だ。日本にもそうした認識と明確な戦略が必要といえる。

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