憲法改正についての考察です。
【産経志塾】杏林大学名誉教授・田久保忠衛氏 国際情勢に応じ憲法改正を
2010年12月20日 産経新聞 東京朝刊
中国問題を見るときに、顕微鏡で見ては分からない。世界の中で中国がどのような位置にあるのか、その中で日本はどう対応せねばならないか、大局観を持って事実を見ていかねばならない。また、個人レベルの問題と国家レベルの問題は別であるということ、外交と軍事はコインの裏表であって軍事力の裏付けのある外交は強い、ということを押さえておく必要がある。
沖縄が日本に返還される前のことだが、米国のニクソン大統領は軍事力を使わずにソ連の首を絞めるため、中国と手を組むことを考えた。そこで関係改善に向けて中国にいくつもサインを送ったが、「沖縄の核抜き返還」もそうで、あれは中国への最大のプレゼントだった。
中国は一貫して軍事力を増強し、人工衛星を撃ち落とすまでになってきた。それはなぜかと事実を見ていくと、中国では経済が発展して生活水準が上がっているものの、貧富の差も広がっており、不満がたまっている。また、汚職も広がっていてどうにもならない。共産党政権を維持するためには今後も国民の生活水準を上げていかねばならず、そのための資源は外国から持ってこなければならない。中国が外へ出ていくのはそうした背景からで、決して中華思想があるからなどという問題ではない。
中国はインド洋で、インドを取り囲むように港湾整備を続けており、「真珠の首飾り」といわれる。中印の間には国境紛争もあり、対中国でこのところ、米印両国が接近している。かつて米国とは敵同士だったベトナムでさえ、数年前から米国に接近している。
尖閣諸島をめぐる問題と北方領土問題に共通して言えることは、日本は力を持っていないから外交にならない、ということだ。日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」とあるが、周りの国を勝手に「平和を愛する国」と規定している。そんなことが通用するだろうか。国は国際情勢の変化に対応して、憲法を何度でも改正する必要がある。
「政治・経済・軍事」をカメラの三脚に例えると、日本は経済はまだ一流、政治は三流だとして、軍事については、「軍隊」がない。現在の自衛隊を規定しているのは警察法体系だ。これでは普通の国の軍隊になれない。国際貢献はできない。三本足の一本がどうにもならなくなっており、これをどうにかせねばならない。
◇
【Q&A】
Q 日本の政治をどう変えていけばよいのか
A 安倍晋三元首相が「戦後レジームからの脱却」を唱えたが、それに唱和する人が民主党の有志も含め一本にまとまり、新しい体制をつくるべきだ。私は前途を悲観してはいない。
Q 日本に核は必要か。私はなくてよいと思うが
A 「核がないほうがよい」というのは正しいと思うが、核と核の谷間で日本が国家として萎縮するのはまずい。少なくとも日本は「核を持たない」という宣言はしてはいけない。いざというときは持つ、という姿勢を見せないと。
Q 一人っ子政策をとる中国は、少子高齢化でどうなっていくのか
A 相当深刻な問題になっていく。5~10年後に経済成長にブレーキがかかるというのは定説になっており、中国は恐ろしいところに近づきつつある。これはロシアも同じだ。
【塾生コメント】
▼会社員、三松純子さん(30)「本当に知りたいことを聞くことができ、勉強になった。日本の政治について前途を悲観していない、という発言が印象に残った。日本が強くあってほしいという思いは、東アジア地域の平和にもつながると思った」
▼日本大学2年、金澤直哉さん(19)「尖閣諸島の問題や中国問題の背後にある、歴史的な経緯や地理的な問題、戦略的な問題などを分かりやすく、かつ深く聴けた。また、大局観を持って大きな視点で、陰謀説に惑わされず事実を重視することを学んだ」
▼聖徳大学3年、神田涼子さん(21)「中国との関係でいろいろ問題が起きているが、中国と日本の2国だけを見ていては背景や本当の意味での問題が見えてこないことを学べた。日本は中国の顔色をうかがいながらでは、公平な外交はできないと思う」
◇
【プロフィル】田久保忠衛
たくぼ・ただえ 昭和8年2月4日、千葉県生まれ、77歳。早稲田大学卒業後、時事通信社に入社。海外で特派員、支局長などを歴任した後、外信部長や解説委員を経て、59年から杏林大学社会科学部で教鞭(きょうべん)を執り、平成4年から同学部長。現在は同大名誉教授、正論メンバー。第12回正論大賞受賞。日本の外交評論の第一人者。
沖縄が日本に返還される前のことだが、米国のニクソン大統領は軍事力を使わずにソ連の首を絞めるため、中国と手を組むことを考えた。そこで関係改善に向けて中国にいくつもサインを送ったが、「沖縄の核抜き返還」もそうで、あれは中国への最大のプレゼントだった。
中国は一貫して軍事力を増強し、人工衛星を撃ち落とすまでになってきた。それはなぜかと事実を見ていくと、中国では経済が発展して生活水準が上がっているものの、貧富の差も広がっており、不満がたまっている。また、汚職も広がっていてどうにもならない。共産党政権を維持するためには今後も国民の生活水準を上げていかねばならず、そのための資源は外国から持ってこなければならない。中国が外へ出ていくのはそうした背景からで、決して中華思想があるからなどという問題ではない。
中国はインド洋で、インドを取り囲むように港湾整備を続けており、「真珠の首飾り」といわれる。中印の間には国境紛争もあり、対中国でこのところ、米印両国が接近している。かつて米国とは敵同士だったベトナムでさえ、数年前から米国に接近している。
尖閣諸島をめぐる問題と北方領土問題に共通して言えることは、日本は力を持っていないから外交にならない、ということだ。日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」とあるが、周りの国を勝手に「平和を愛する国」と規定している。そんなことが通用するだろうか。国は国際情勢の変化に対応して、憲法を何度でも改正する必要がある。
「政治・経済・軍事」をカメラの三脚に例えると、日本は経済はまだ一流、政治は三流だとして、軍事については、「軍隊」がない。現在の自衛隊を規定しているのは警察法体系だ。これでは普通の国の軍隊になれない。国際貢献はできない。三本足の一本がどうにもならなくなっており、これをどうにかせねばならない。
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【Q&A】
Q 日本の政治をどう変えていけばよいのか
A 安倍晋三元首相が「戦後レジームからの脱却」を唱えたが、それに唱和する人が民主党の有志も含め一本にまとまり、新しい体制をつくるべきだ。私は前途を悲観してはいない。
Q 日本に核は必要か。私はなくてよいと思うが
A 「核がないほうがよい」というのは正しいと思うが、核と核の谷間で日本が国家として萎縮するのはまずい。少なくとも日本は「核を持たない」という宣言はしてはいけない。いざというときは持つ、という姿勢を見せないと。
Q 一人っ子政策をとる中国は、少子高齢化でどうなっていくのか
A 相当深刻な問題になっていく。5~10年後に経済成長にブレーキがかかるというのは定説になっており、中国は恐ろしいところに近づきつつある。これはロシアも同じだ。
【塾生コメント】
▼会社員、三松純子さん(30)「本当に知りたいことを聞くことができ、勉強になった。日本の政治について前途を悲観していない、という発言が印象に残った。日本が強くあってほしいという思いは、東アジア地域の平和にもつながると思った」
▼日本大学2年、金澤直哉さん(19)「尖閣諸島の問題や中国問題の背後にある、歴史的な経緯や地理的な問題、戦略的な問題などを分かりやすく、かつ深く聴けた。また、大局観を持って大きな視点で、陰謀説に惑わされず事実を重視することを学んだ」
▼聖徳大学3年、神田涼子さん(21)「中国との関係でいろいろ問題が起きているが、中国と日本の2国だけを見ていては背景や本当の意味での問題が見えてこないことを学べた。日本は中国の顔色をうかがいながらでは、公平な外交はできないと思う」
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【プロフィル】田久保忠衛
たくぼ・ただえ 昭和8年2月4日、千葉県生まれ、77歳。早稲田大学卒業後、時事通信社に入社。海外で特派員、支局長などを歴任した後、外信部長や解説委員を経て、59年から杏林大学社会科学部で教鞭(きょうべん)を執り、平成4年から同学部長。現在は同大名誉教授、正論メンバー。第12回正論大賞受賞。日本の外交評論の第一人者。
コメント
コメント一覧 (12)
ただ、経済的な視点などは別の人間が入って、多様な角度から検証するようなことがあるとより分かりやすいかと思います。
経済は時々刻々変わりゆくもので、それなりに精通した人間じゃないと、見通すことが難しいと感じるからです。
その意味において、人口動態(一人っ子政策で超高齢化社会)のみで読み解くことが難しいと感じるからです。
それにくわえて、中国を専門に研究している人が入ると更に違った面から話がうかがえるのではないかと思います。
石平氏などが入ると更に面白くなるのではないでしょうか。
>尖閣諸島をめぐる問題と北方領土問題に共通して言えることは、日本は力を持っていないから外交にならない、ということだ。
*全くその通りだと思いますよ、戦後の北方領土の返還交渉の歴史を良く観て御覧なさいよ、明日にも返還されるかと思えば、そうではない。
ロシアの手玉に取られているに過ぎない。
もっとも、既成事実としてロシアが日本の領土である北方領土を占拠して堂々としているのは、ロシアの巨大な軍事力に自信がある事は明白なのだが、
日本国民も政治家も、それから目線をはずして、話すのだが、
日本が目線を話しているのを、ロシアは、しっかと、見詰めているのだ。
>日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」とあるが、周りの国を勝手に「平和を愛する国」と規定している。そんなことが通用するだろうか。
*全くその通りだ、よ。 世界には通用しないのだ。
好い加減に、気付いてほしいよ、中国に、これが通用するかね?
>国は国際情勢の変化に対応して、憲法を何度でも改正する必要がある。
*そうです、どんどん、何度でも、日本国家が良くなれば
日本国民の「生活向上」となるのだから、国民に異存は、あるまい。
「改むに憚ることなし」、と云うではないか。
憲法第9条改正は勿論の事、具体的にどう憲法を改正すべき
かが保守派の論点となるでしょうね。護憲は論外ですから。
コミュニストの残党は打倒しなければなりません。
>
>日本国民も政治家も、それから目線をはずして、話すのだが、
>日本が目線を話しているのを、ロシアは、しっかと、見詰めているのだ。
>
*それで思い出したのだが、
幕末に、ロシアと交渉した幕臣の川路聖謨の
気迫と胆力と礼儀正しさと、論理に
ロシアの高官は、感服して、
「一目も二目も置いた」、という事だ。
平和、平和と言いつつ、自国を守るつもりのない民族は滅びるものです。最近の例としては、平和な仏教国だったチベットです。
私はマッカーサーが何故このような証言をしたのか、実は現在まで疑問を持ち続けていました。
今日平成22年12月26日の産経オピニオン面の湯浅裕特別記者による「歴史に消えた参謀(43)」を読んで氷解しました。
マッカーサーは昭和26(1951)年6月の北朝鮮による南への侵攻を当初「単なる武力偵察」ではないかと、当時来日していた講話問題特使のジョン・フォスター・ダレスに語っていたそうです。
その後の北朝鮮をはじめソ連や中共の徹底抗戦振りに、おそらくマッカーサーは日清戦争以降の日本の戦いが、欧米諸国のアジア侵略とは性格を異にした自衛のための戦争であったと、そこはさすが骨の髄からの軍人であった彼には理解できたのでしょう。
憲法改正ではなくて、ハーグ陸戦協定違反の「日本国憲法」を破棄し、明治憲法を復活して、明治憲法の非民主的な基本的人権の制限条文を修正するべきです。
もちろん、議論の過程で、占領下に誕生?した「日本国憲法」が、国際法違反であると言うことを徹底して論議しなければならないことは当然です。そうすることによって、国民多数の憲法に対する意識は高まることでしょう。
その論議の中から方向性は見えてくるはずです。
憲法改正の件、田久保氏が仰せの通りです。
安倍政権時、国民投票法が可決され、本年5月に施行されましたが、あいかわらず「グズでのろまな政権」は、自らのサボタージュにより憲法審査会を開会せず、国会において違憲状態を放置しています。
周辺諸国を含めた安全保障について中共・北鮮・韓国・日本を比較すると、日本だけ徴兵制度がありません。
徴兵制度を採らなくとも憲法には、国防を国民の義務として定めるべきでしょう。
当然、教育も同様に「自分の国は自分で守る」という世界常識を教えるべきです。
経済に関する件、田久保氏とは違憲が異なります。
「日本は経済はまだ一流」とのことですが、正確に記せば「日本はグローバル企業はまだ一流」ではないでしょうか。
来春の新卒者採用では、パナソニック(旧松下電器)は1300名余りの採用を予定していますが、この内1100名程度(約8割)は、外国人採用を予定してします。海外調達も、現在、4割のところ6割へ引き上げるそうです。
ユニクロ・ローソン・楽天なども50%の外国人の採用を予定しています。
菅直人がいくら「雇用!雇用!雇用!」と叫んでも、乗数効果の低い子ども手当などをバラまくばかりで貯蓄だけが膨らみ、国内経済が活性化せず需要があがらない状況では、国内採用は減るばかりです。
一方、財政(平成23年度予算+税制改正)に目を向ければ、俗に言う「埋蔵金」をほとんど使い果たし財源を枯渇させ、平成24年度には同様の予算も組める見込みもない有様です。
解散総選挙を行うならば、平成23年度予算審議前に行うべきところ、大手メディアもこの危機感の認識がないため、グダグダと小沢問題で直近の政局ばかり報じております。
出るのは、ため息ばかりです...
現政権への失望やため息ではなく、叱声に変えて、広い範囲と拡大してください。
中国の経済の把握に関して、従来の日本側の経済専門家たちには正しい分析や予測をしてきた実績がほとんどありません。むしろ間違いのご託宣が多かったようです。
中国の専門家は中国の経済のマクロ的評価がうとく、経済の専門家は中国の特殊性を理解できず、という感じですね。
日本はロシアにすっかりその気にさせられたわけですね。
ロシアには最初からそんな気はまるでないのに。
日本の憲法の出発点を徹底して、議論しよう。
ご指摘のとおりです。
九条を大切に守って、永世中立国になって世界平和に貢献しましょう、って。
九条大好きの方々にも、早く目を覚まして欲しいですねぇ。