西原正氏の注目すべき論文です。
日本ではもっともと中国の核兵器への懸念が語られるべきです。
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■【正論】平和安全保障研究所理事長・西原正 中国の核恫喝と拡大抑止の不備
◆核の先制不使用は名目だけ
中国人民解放軍の内部文書で、核保有国(米国を想定)との戦争で危機的状況に置かれて有効な防衛策がない場合、核先制使用を検討するという立場をとっていることが判明した、と報道された。
中国はこれまで、胡錦濤国家主席をはじめ、「中国はいかなる状況下でも核先制使用はしない」と公言してきた。報道通りなら、実情は全く異なることにな り、中国がこれまで、「非核国には核攻撃は絶対にしない」と言ってきた立場も信用できなくなる。おそらく中国は、日本が非核国であっても米国の核の傘に 入っていることを理由に、有事には日本を非核国として認めないのではないか。
加えて北朝鮮も先制使用を否定したことはない。先制使用する国だと想定しておくべきである。
このように東アジアの核環境は日本にとって一層、厳しくなっていることに注目すべきである。にもかかわらず、昨年12月に策定された新しい防衛大綱は、核問題をどう位置付けるのかという点には明確な方針を示さなかった。
新しい防衛大綱によれば、日本の核政策は、(1)非核三原則を堅持する(2)核軍縮・不拡散のために積極的に取り組む(3)米国の拡大抑止能力を支持す る(4)弾道ミサイル防衛などによる努力を進める-という4本柱から成っている。これは全体的には妥当な政策に見えるが、実際はそうではない。
◆米の核抑止力弱めるな
たとえば、非核三原則(核を作らない、持たない、持ち込ませない)の3番目の原則は、岡田克也外相当時の密約解明作業で、「持ち込ませない」とは「陸上 の配備は認めないが領海、領空の通過、立ち寄りは認める」という従来の「密約」を暴きながら、「今後はこれも認めない」となった。そのことで、米国の核に 関する行動のオプションを狭めてしまった。
そうした中で、今回の大綱は「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していく」としてい る。非核三原則を以前より厳しいものにしておいて、米国の拡大抑止の「信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していく」とはどういうことをするのか との疑問を抱かざるを得ない。米国に対し、一方で非核三原則を厳守せよと言い、他方では日本を核の脅威から守れと求めているからである。
さらに、米国の核抑止力に依存するのであれば、核保有国に囲まれた日本としては、米国による核の先制使用の原則を支持することが、「核抑止の信頼性の維 持・強化のために米国と緊密に協力していく」方策である。岡田外相はしかし、米国は核の先制使用を断念すべきだとする立場を取って、米国や外務省を困らせ た。核先制不使用の立場は核抑止力を弱めるだけである。菅直人政権は早急に、米国の核先制使用方針に対する支持を明確に表明すべきである。
大綱はまた、米国の拡大抑止に関して、「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止」という表現を用いている。米国の抑止力には、核以外の、通常兵力による抑止もあり得るという理解である。
事実、米国は冷戦末期ごろから、核攻撃への報復として通常兵器を用いる利点を論じていた。精密誘導可能な通常兵器は精密に攻撃目標を狙うことで、核兵器 のような大量破壊の衝撃を避けながら、同じ目的を達成できるとしていた。それにより、核兵器の非道徳性も避けられるとする。核兵器は実際には、「使用でき ない兵器」であるのに対し、通常兵器は使用し得る兵器である。北大西洋条約機構(NATO)の最近の防衛政策も、「核と通常能力の適切な混合に基づく抑止 は全体的戦略の中核をなす」としている。
通常抑止力の導入により、敵の核攻撃に対する米国の抑止力の信頼性は高まったといっていい。
◆脅威にさらされる米艦船
だが、もっと大きな問題は、西太平洋において中国が米軍事力への接近拒否能力を持った場合、米国は日本や韓国に対して効果的な拡大抑止を保持できるだろう かという点である。中国は中距離弾道ミサイル(DF21)を改造した対艦弾道ミサイル(ASBM)を間もなく完成させ配備するといわれている。これが実戦 配備されると、中国沿岸から約2000キロの距離内にある米艦船は脅威にさらされてしまうという。
西太平洋で米空母など米軍が自由に行動できなくなれば、日米同盟の機能が怪しくなる。そして、その軍事的空白を突いて、中国は日本に対し核による恫喝 (どうかつ)ができるようになる。そうなれば、日本は予想以上に早い時期に米国の拡大抑止に依存することができなくなる事態が生じるかもしれない。
大綱の予想を超えた米中軍事バランスの変化が生じるとなると、日本国内でも一方で独自核保有論が台頭し、他方では対中友好強化論(媚中(びちゅう)論) が勢力を持ってくるであろう。現在の日米同盟深化の議論は、こうした事態を克服するものでなければならない。(にしはら まさし)
コメント
コメント一覧 (18)
全くその通りだ!
東京オリンピックの最中、中国は原子爆弾の初実権の花火を打ち上げて、日本のオリンピックに、けちを付けたのだが、日本国中、東京オリンピックで湧き上がっていたから、大して気にも留めなかったが。
>核保有国(米国を想定)との戦争で危機的状況に置かれて有効な防衛策がない場合、核先制使用を検討するという立場をとっていることが判明した、
これが、拒否権を持った平和国を自称する中国という国連常任理事国のする事だろうか? これでは、中国は平和国家とは云えないね~。
>新しい防衛大綱は、核問題をどう位置付けるのかという点には明確な方針を示さなかった。
これは、現実的防衛戦略としては拙いな~!
>米国は冷戦末期ごろから、核攻撃への報復として通常兵器を用いる利点を論じていた。
日本も、核を持たないのなら、
「新型爆弾兵器」を開発して「核攻撃」の脅威からの「対処法」を考えて、行動せよ!
>日本国内でも一方で独自核保有論が台頭し、他方では対中友好強化論(媚中(びちゅう)論) が勢力を持ってくるであろう。
中国の属国に成る事だけは、何とかして回避してほしいものだ!!!
1。自国で核保有をするか。国民が反対するか。
2。アメリカの核保有による抑止力に頼る事を明確にすべき。ハッキリしていると思われるが何故政治家にはわからないのか。中国、北朝鮮を怒らせないため、相手の事を考えてでは通じない。韓国はそれをハッキリ打ち出している。国民は大きな国に住んで平和だったから絶対に何も起こらないと考えている。その内に第二の被爆国になる。
>非核三原則(核を作らない、持たない、持ち込ませない)の3番目の原則は、岡田克也外相当時の密約解明作業で、「持ち込ませない」とは「陸上 の配備は認めないが領海、領空の通過、立ち寄りは認める」という従来の「密約」を暴きながら、「今後はこれも認めない」となった。そのことで、米国の核に 関する行動のオプションを狭めてしまった。
この時、岡田、民主党、アサヒ始め「中国の僕たるべし」勢力は、
このことが政権交代の成果だ、と何だか勝ち誇っていましたが、
暗愚でない人には、この政権はタダの暗愚である、
ということの証明でしかありませんでした。
日米同盟を危機に晒し、
そのことで日本を危機に晒し、
その恥知らずな汚らしい尻拭いを一行政機関に負わせ、
日本の名誉を唯一守った有能な公務員を犯罪者に仕立て上げた。
しかしまあ、それでいて、権力にはしがみつき、
やっぱり前政権のやり方に戻すから、
私は権力にはしがみつくが、
だけど協力しなければ歴史への反逆だ、なんて。
こんなの、天性のサギ師ホラ師でなければいえないセリフですね。
まともな神経を持つ人なら腹切るとか、首くくってますよ、ホントに。
ウランやプルトニゥユムといった放射能をもったものを(知識がなくてすみません)熱源とする爆弾でしょうか?
それならば、非核三原則はそのままにして触れずに、水素を爆発させる水爆で武装するというのは・・・?
または、日本の技術で反物質を精製保存して、反物質爆弾を開発するというのは・・・・?(どこかの国では、研究しているかもしれませんが)
非核三原則に触れないように、新しい兵器を開発して中国と朝鮮に備えましょう。
福井晴敏の小説『オペレーション・ローズダスト』に登場する〈TPEXーplus〉のような兵器を現実に開発すべきです。日本の技術力なら核を超える事も不可能では無いでしょうが、いかんせん実験する場所が無いですね…。
中国だけでなく核保有国は(表明しないだけで)同じ検討をするでしょう。
核兵器を保有しない国でも他に反撃手段があれば撃ちますよ。
敵に攻められて反撃を躊躇うのは日本だけです。
>日本国内でも一方で独自核保有論が台頭し、他方では対中友好強化論(媚中(びちゅう)論) が勢力を持ってくるであろう。
中国が日本を屈服させ属国化するのに核兵器も恫喝も必要としません。
日本企業の中国への依存度を高め。
日本の企業や不動産を買いあさり。
日本に大量の中国人を送りこむ。
自民党や元自民政党が政権を執っても、これらは増えることはあっても減ることはないでしょう。
自由経済論者や経済産業界こそが最大の対中友好強化論(媚中(びちゅう)論)勢力なのだから。
日本の軍事的抑止力を強化すると同時に脱中国・中国排斥を実行しなければ、日本は中国の脅威から逃れられません。
しかし脱中国・中国排斥を主張する政治家や知識人をあまりみたことがない。
この英国から見てほぼ地球の反対側にあるようなアルゼンチン近海の領土に対して、サッチャー政権はすぐに領土奪回の決意をし、それに対し野党の労働党も即座に賛同し、確か戦時内閣(War Cabinet)が結成されたと思います。領土問題に関しては一歩も譲歩しないというコンセンサスが与野党の政党間にも、また国民の間にも出来ていたということです。
サッチャー政権はフォークランド諸島奪回への作戦を開始しますが、先ず同盟国たる米国の当時のレーガン政権に援助の根回しをし、軍事作戦での直接・間接の援助(これにはアルゼンチン周辺国への説得も含まれる)を得た上で、綿密な作戦により約3ヶ月にわたる軍事衝突を終え、領土を奪回しました。
このフォークランド戦争では、英国軍兵士が確か30名近く戦死したように覚えています。(民間人の死者は無し)英国王室のアンドリュー王子(エリザベス女王の次男になります)も英空軍ヘリコプターのパイロットとして参戦し、ここに正に英国王室の領土を命がけで守るという精神が具現されています。
仮に尖閣諸島で中国軍との軍事衝突が発生した場合、どこまで人命の犠牲を払う覚悟を、政府が持っているか、しいては国民が覚悟できているかが問われると思います。
日米安保条約に関して、よく同盟国のアメリカに間違っていることは間違っているとして、日本は距離を置かねばならないと言った風な論調をよく見受けますが、同盟関係というものは、互いに困っている時にともかく助け合うという原則に立っているのが本来でしょう。
今英国で以前のイラク戦争への参戦の可否をめぐって、トニー・ブレアー元首相が喚問されています。米国はこれまで、ある程度自国の利益を犠牲にしても、第二次世界大戦では英国を助けましたし、近年でもフォークランド紛争の時に英国を援助しくれたので、イラク戦争のときも大儀がないから参加しないとは当然言えなかったでしょうし、こういったところに同盟関係の本質があると思われます。
日本の皇室の方々がイギリスの王子のように国のために軍人として戦うかどうか。考え込みますね。
核兵器の「核」の定義もやがて変わるでしょうね。
>nichieidoumei さん
>
>日本の皇室の方々がイギリスの王子のように国のために軍人として戦うかどうか。考え込みますね。
英国は第二次世界大戦のナチスドイツに対するヨーロッパの勢力の中心であったことから、周りのヨーロッパ諸国も英国王室が軍に関わることに違和感がないし、英国を含め成熟した民主主義国家の集まりですので軍国主義とかと非難することがないと思われます。
日本はこの前の戦争の経緯から、周りの中国、韓国が軍国主義だと非難するので到底無理でしょうし、今後も皇室は絶対に軍事には関与されるべきでないと考えます。
中国は阿片戦争やら、香港の植民地化やらで英国初め米国を含むアングロ・サクソン系には劣等感を抱いている(今日でも)と思われ、その反動で同種の日本人に一時的に国土を侵略されたことをより一層屈辱と感じ、強い反感を抱いているのかも知れません。(特に中国の軍人は)
>>核保有国(米国を想定)との戦争で危機的状況に置かれて有効な防衛策がない場合、核先制使用を検討するという立場をとっていることが判明した
>
>中国だけでなく核保有国は(表明しないだけで)同じ検討をするでしょう。
>核兵器を保有しない国でも他に反撃手段があれば撃ちますよ。
>敵に攻められて反撃を躊躇うのは日本だけです。
>
>>日本国内でも一方で独自核保有論が台頭し、他方では対中友好強化論(媚中(びちゅう)論) が勢力を持ってくるであろう。
>
>中国が日本を屈服させ属国化するのに核兵器も恫喝も必要としません。
>日本企業の中国への依存度を高め。
>日本の企業や不動産を買いあさり。
>日本に大量の中国人を送りこむ。
>自民党や元自民政党が政権を執っても、これらは増えることはあっても減ることはないでしょう。
>自由経済論者や経済産業界こそが最大の対中友好強化論(媚中(びちゅう)論)勢力なのだから。
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全く同意します。
C。第2次菅政権は今の所尖閣諸島問題があった後右寄りとなってアメリカの抑止力を再認識したようだ。そんな気がする。
核施設の不祥事ーチェノビイルのような事がテロリストによって引き起こされる可能性もある。
でもこれを戦争に使うのは無理。こんなゆっくりした攻撃では現代には通用しない。
核戦争ーアメリカ、ロシア、恐らく中国の間で核戦争を始めたら数時間で世界が壊滅的なダメジをこうむる。地球の終わり。
WAR HEAD. 最高13000飛行距離。実験回数1054回
ロシア:最高30,000(1985) 現在12000個(2010)。 飛行距離11,000km。 実験回数715回。
フランス−300
中国−240
イギリス−225
その他のインド、パキスタン、は100以下。