中東の激変がアメリカの中国を視る目を変えています。

 

 ごく簡単に言ってしまえば、エジプトのムバラク政権が民主的ではないのでその打倒の叫びに同調するとオバマ政権が宣言するならば、もっと非民主的な中国の共産党独裁政権の打倒を叫ばなくてよいのか、という疑問だといえます。リビアについても同様でしょう。

http://img.news.goo.ne.jp/picture/reuters/JAPAN-196651-reuters_view.jpg?640x0                        (リビアでのカダフィ政権打倒を叫ぶデモ)

 

 

    [ワシントン=古森義久〕

 

中東の民主化の激動が米国の中国への姿勢に微妙だが重要な変化を生み始めた。オバマ政権が中東で民主主義の拡大に支援を表明するたびに、では非民主主義の中国はどうかという疑問が政権内外から提起され、その疑問が同政権に中国の政治的抑圧への注視を改めて強める効果をもたらすようになったためだ。

 

中東での激動が米国の対中関係に与える意味を改めて明確に説いたのは大手研究機関AEIの中国専門のダン・ブルーメンソール研究員(元国防総省中国部長)で、23日に「中東情勢に対して中国が示した態度は中国が国際的な指導権を発揮できないことを証明した」という趣旨の論文を発表した。

 

同論文は中国当局が中東での民主化の拡大の自国への余波を恐れて、国内での情報統制やデモ抑圧を強め、中東情勢に対しては沈黙を保っている状態を「国際的リーダーシップの発揮どころか、万里の長城の陰に隠れてしまった」と評した。同論文は米側に対してG2論に代表されるような中国国際的リーダー論を撤回することを求める一方、共産党独裁の中国でも中東のような民主化の抗議が本格化する可能性をも想定することを提案した。

 

大手紙のウォールストリート・ジャーナルも22日の「北京とアラブの反乱」と題する社説で、経済成長が目覚しく、経済の自由は認められていたものの政治の自由がなかったバーレーンでの反政府運動の燃え上がり現象を中国にも適用し、「経済発展はやがては政治権力独占の失陥につながる」という中国系米人学者ミンシン・ペイ氏の言葉を紹介して、中国の現政治体制への危機を警告した。

 

オバマ政権を正面から批判することの多い共和党保守派ではさらに明確に「米国の盟友だったエジプトのムバラク大統領に民主主義的ではないという理由で即時辞任を求めるならば、なぜ中国の独裁政権の辞任を求めないのだ」(ラジオ政治評論で有名なラッシュ・リムボウ氏)というどぎつい意見も頻繁に表明されるようになった。

 

大手紙ニューヨーク・タイムズも最近の社説で「リビアのカダフィ政権はヘリコプターのガンシップで自国民を殺し始めたが、こういう自国民の大量殺害をいったん始めた政権は中国以外は必ずそう遠くない時期に倒れていった」と述べ、中国当局の天安門事件での自国民主活動家の殺害に言及した。

 

こうした論調はみな米国側がこのところやや視線をそらすようになっていた中国の非民主主義的な共産主義政権の本質を改めて正面から再認識することを求めているに等しく、こんごオバマ政権の対中策にもその再認識が反映される見通しを示すともいえる。