アメリカでは日本への懸念や関心がさらに高まっています。

 

官民から寄せられる支援はものすごい勢いです。

日米両国間のきずなの強さを改めえて感じさせられます。

 

ワシントンでは日本の大被災の意味について考察する試みも多々、始まっています。

 

そのうちのひとつをお伝えします。

 

「日本の悲劇」と題された討論会ではありましたが、内容は日本人への賞賛と激励が主体でした。ただし菅首相の指導力欠如がはっきりと指摘された点は印象に残りました。

 

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  日本の悲劇

 

〔ワシントン=古森義久〕

 米国の大手研究機関AEI(アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート)は23日、東日本大震災がこんご日本の社会や政治にどんな影響をもたらすかを論じる討論会を開いた。「日本の悲劇=危機から分岐点へ?」と題するこの集いでは米側専門家たちが日本国民の抑制された対応を礼賛する一方、菅直人首相が指導力を発揮できていないという考察を表明した。

 

 同討論会ではAEI日本研究部長で日本政治の専門家のマイケル・オースリン氏が「日本国民がこの歴史的な災禍に冷静や抑制を保って対応したことは米国側ではイデオロギー面でまったく異なるリベラル派のニューヨーク・タイムズから保守派のFOXテレビの評論家グレン・ベック氏まで一様に感嘆させた」と述べるとともに、「日本人がこの種の状況で米国でのように略奪や暴動を起こさず相互に助け合うことは全世界でも少ない独特の国民性であり、社会の強固さだ」とも強調した。

 

 オースリン部長はこの種の危機への対処には国家指導者が国民の団結をさらに強めることが好ましいと述べ、「しかし菅直人首相はその役割を果たしておらず、枝野幸男幹事長に代行させているようだ」とも語った。

 

同部長はさらに「大震災直前には菅首相は違法献金問題で辞任寸前に追い込まれ、政治的麻痺の状態にあったのだから危機でもリーダーシップを発揮できないのが自然かもしれない」と述べた。

 

 日本の対外姿勢について同部長は「国内の復興のために当面は内向きになるのは当然で外交や安保、対外援助などの面で消極的となり、米国との関係でも普天間問題などは棚上げにする見通しが強い」とも語った。

 

 一方、日本の文化や社会を専門とするジョージタウン大学のケビン・ドーク教授は「日本国民が自制や自己犠牲の姿勢でこの大災害に対応した様子は広い意味での日本の文化を痛感させた。日本の文化や伝統も米軍の占領政策などによりかなり変えられたのではないかと思いがちだったが、文化の核の部分は決して変わらないのだと今回、思わされた」と述べた。

 

 同教授はまた「近年の日本は若者のわがままや引きこもり、無気力など後ろ向きの傾向が表面に出ていたが、今回の日本全体の災害への対応で積極かつ強固な精神や相互の団結が示され、伝統的な文化の不変ぶりやその本来の文化による新しい目的意識を持つ新日本の登場さえを予測させる」とも論評した。