大震災後の日本はどうなるのか。

 

 アメリカでもこの点への関心は真剣です。

 

 最も一般的なレベルでも、日本車の購入が難しくなったという話が広まっています。

 

 アメリカ議会が「日本の将来」と題する公聴会を開きました。

 

 その模様について私が書いた記事を紹介します。

 

 日本の将来について論じていたら、いつのまにか中国の話になってしまったという、笑うに笑えない公聴会でした。

 

 もとの記事は本日の産経新聞朝刊の一面に出ています。

 

【朝刊 1面】


【あめりかノート】ワシントン駐在編集特別委員・古森義久 中国の巨大な影


 

 米国議会での「日本の将来」についての論議で中国がここまで話題になるとは思わなかった。
 だがちょっと考えれば、意外であって意外ではないのだろう。

 下院外交委員会のアジア太平洋小委員会が5月24日に開いた公聴会だった。

 

 表題どおり東日本大震災以後の日本の将来を、米国にとってどんな意味があるかという観点から論じる集いである。

 

 共和党が多数を制した今会期の下院では初めて、大震災以降も初めての日本だけに焦点をしぼった公聴会だった。

 

 藤崎一郎駐米大使も参考人の形で発言した。

 

 日本大使初の議会証言となった。

 

 議員や証人たちが繰り返し述べたのが「震災の被害で日本が弱くなると、中国がますます勢いを増し、米国にとって好ましくない形でアジアでの影響力を強めるのではないか」という懸念だった。

 

 小委員長のドナルド・マンズロ議員(共和党)が後半で議論を総括するように述べた言葉は直線的だった。

 

 「米国は中国が非情な独裁の勢力拡大を続けるのを防ぐためにも日本の支援には全力を尽くすべきだ。米国は中国とは価値観の核心を異にし、民主主義の日本は東アジアでの米国にとっての明かりなのだ」

 

 マイク・ケリー議員(同)も中国への鋭い言葉を放った。

 

 「いま現在、中国の攻勢的な活動で威圧を受ける地域で米国は日本という同盟国に依存しなければならない」

 

 両議員の発言は、証人の元国務次官補代理のランディ・シュライバー氏が日本は大震災の被害で内向きとなり、日米同盟から中国寄りへと漂流する危険もある、と指摘したことへの対応だった。

 

 同氏は、中国の尖閣諸島などでの強引な主権拡大の動きやレアアースの一方的な輸出停止宣言、日本を敵視する北朝鮮への支援などを理由にあげて、中国は日本の信頼できるパートナーにはまずなれないと証言していた。

 

 シュライバー氏も共和党系だが、民主党系の証人のマンスフィールド・センター所長、ゴードン・フレーク氏も、中国の最近の横暴な態度が日本と韓国とを接近させ、さらに米国傾斜を深くさせた、と述べた。

 

 中国が北朝鮮の韓国側への砲撃や哨戒艦撃沈を非難せず、尖閣や南シナ海で一方的な言動をとってきたことがその要因だと指摘していた。

 

 元国家安全保障会議アジア上級部長、マイケル・グリーン氏も「中国のレアアース問題などで日本の実業界も警戒を高め、インドやベトナムへの投資転換を真剣に考え始めた」と証言し、中国への批判的議論に加わった。

 

 マンズロ議員がさらに、イリノイ州の自分の選挙区には製造工場が2千以上あるが、中国のレアアース禁輸や知的所有権侵害はそれらの工場に重大な被害を与えていると非難するに至り、公聴会の主題が日本かどうかも不明になったほどだった。

 

 共和党側議員やシュライバー氏はオバマ政権について「日本を軽視して中国との折衝をあまりに重視しすぎる」とも批判した。

 

 また、すべての議員と証人がいま米国が推す環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に日本が加わるか否かを日本の将来の基本軌道として注視している点も明白だった。

 

 だが全体としてこの公聴会で一貫して顕著だったのは、日米関係の背後に広がる中国の巨大な影だった。

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      (マンズロ委員長)